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甘え上手な彼女2  作者: Joker
肝試しと先生達
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第25話



「うーむ……」


「……?」


「いや、おかしくないか?」


 土井は学校内をうろうろしていた。

 しかしおかしい、先ほどまでクラスメイト達が居たはずの昇降口前には誰もおらず、校内にも誰も居ない。


「誰も居ないなんて……しかもさっきよりも辺りが暗いような……」


 土井は学校の窓から外を見る。

 学校の周りの民家の明かりはついているのに、人の気配が全くない。

 

「もしかして……」


「……?」


 人の気配を感じない町、そして突然消えたクラスメイト。

 その二つの現象を考え、土井は一つの答えを出す。


「集団どっきりか」


「………」


 一緒にいた少女は、土井のその考えに苦笑いをする。


「んだよ~、脅かしやがってよー。でもどうやって四十人近い人間が隠れたんだ?」


「……」


 この異常な事態に対して、そんな楽観的な考えをする土井を少女は可愛そうな人を見るような目で見る。


「ま、時間が経てばみんな出てくるか。疲れたし休憩するか……」


「……」


 土井の問いかけに、少女は首を縦に振る。

 元々居た教室に戻り、土井はとりあえず椅子に座ってスマホを見る。


「ん? おかしいな……圏外って……」


 スマホで誰かに電話をしようと思った土井だったが、スマホは何故か圏外だった。

 いつもは学校でも普通に電波は届くのに圏外はおかしかった。

 おかしい。

 流石にそう思い始めた土井は顔をしかめる。

 そんな土井を見て少女は険しい顔で何かを訴えようと近づく。

 しかし、またしても土井は……。


「おのれあいつらぁ……電波まで届かないような細工を……」


「………」


 少女は相変わらず楽観的に物事を予想する土井に、少女はまたしても苦笑いを浮かべる。

 どうあっても、オカルト的な何かに巻き込まれたという想像をしない土井に少女は頭を悩ませる。

 そんな時、教室の外に全身血だらけのゾンビのような化け物が、廊下から教室内に入ってきた。


「う……う……あ………」


「おぉ、すっげーリアルだなぁ~。中身は誰だ?」


 呑気にそんな事を言う土井。

 そんな土井とは対照的に、少女は険しい表情でそのゾンビをの前に出る。


「すっげーな、まるで本物だぜ……まぁ、本物見たことないけど」


 警戒もせず、ゾンビに近づく土井を少女は腕を掴んで止める。


「ん? どうした?」


「………!!」


 首を横に振り、ゾンビの方に行かないように必死に訴える少女。

 土井は不思議そうな顔をしながら、少女に言う。


「大丈夫だって、どうせ中身は俺のクラスメイトだから」


 そう言って土井はゾンビに近づき、ゾンビの肩に触れる。


「!!!」


 少女が慌てて土井のもとに駆け寄る。

 しかし、土井がゾンビの肩に触れた瞬間、ゾンビは目映い光を放って消えていった。


「うお! なんだ?」


「!?」


 ゾンビは土井達の前から消え、教室内は再び土井と少女だけになった。

 こんな不思議な事がおきたら、流石の土井もこの異常事態に危機感を感じるだろうと、少女は思った。

 しかし、やっぱり土井は……。


「すっげートリックだな! マジックか?」


「………」


 相変わらず、まだこの異常事態をドッキリだと思っているらしい。

 少女は土井に驚き、土井に何かを訴えようとジェスチャーを始める。


「ん? 上?」


「……!」


「あぁ、屋上か? 行くのか?」


「!!」


「まぁ、良いけど……屋上なんて行っても何も面白くなんて……」


「!!」


「わ、わかったよ……だから、その……もう少し離れてくれない?」


 少女の必死に訴えに、土井は屋上に行くことを承諾する。

 土井達の居る教室は二階、ここから屋上までとなるとなかなかに遠い。

 教室を後にし、土井と少女は再び学校内を歩き始める。

 前を歩く少女の横顔を見ながら、土井は頬を緩める。


(かわいいなぁ……)


 こんな子が校内に居たなんてと思いながら、廊下を歩き三階への階段を上がって行く。

 

「お?」


「!」


 三階への階段を上がろうとした瞬間、またしてもゾンビが三階から下りてきた。


「おぉ、今度は階段に居たのか、しかも今回は制服バージョンか! 凝ってるなぁ~」


 感心しながらゾンビを見る土井に少女は必死で何かを訴える。


「え? 何? ……あぁ、さっき見たいに触れって事?」


 少女の訴えを理解し、土井はゾンビに触れる。

 すると、またしてもゾンビは光を放って消えていった。


「またか……どんな仕掛けか後で聞こ」


「………」


 いい加減状況を理解して欲しい少女だったが、土井は相変わらずだった。

 三階にやってきた土井は再び違和感に気がつく。


「ん? ここから四階に行けなくなってるな……」


 三階から四階に行く階段は大量の椅子や机が置かれ、先に行けないようになっていた。


「ここまでやるか?」


 肝試し程度でここまでの事をするのかと思いながら、土井は少女と共に反対側の階段を目指す事にした。

 いつもより廊下が長い気がした土井。

 流石に会話がないのは気まずいので、少女に話し掛ける。


「そ、そういえば名前は?」


「………」


 少女は三階の教室に入り、黒板に名前を書き始める。


「えっと……瑞希(みずき)か?」


「……!」


 少女は首を縦に振る。


「じゃあ、み…瑞希って呼んでも良いか?」


「!」


 少女の名前を知る事が出来、土井はご機嫌だった。

 肝試しに参加して良かったと、土井はこのとき始めて思った。

 可愛い女の子と結構良い雰囲気な上に、名前まで知る事が出来た。


(今日は良い日だなぁ~)


 その後も土井と少女は話しをしながら屋上を目指す。

 何回かゾンビと会ったが、そのたびに土井がゾンビに触れるとゾンビは光を放って消えていった。

 どんなトリックなのだろうと相変わらずな疑問を浮かべながら、土井は四階への階段を昇り始めていた。


「やっぱりやり過ぎだよなぁ~、今度はこっち側の階段から二階に下れないようになってたし」


「……」


「全く、片付けが大変だろ……」


「……」


 土井の危機感の無さに瑞希はいい加減に慣れ始めた。

 普通ではないこの状況では、この方が良いのかもしれないと瑞希は思い始めていた。

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