表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界シルクロード(Silk Lord)  作者: 秋ぎつね
第14章 発見篇
385/434

第十一話 それぞれの日常

 春たけなわのド・ラマーク領。

 アキラたちが世話をしている蚕たちは皆、繭を作った。


「『春蚕はるご』は全部糸にしよう」

「わかりました」

 卵を取るのは『夏蚕なつご』にする、とアキラは言った。

 ド・ラマーク領ではほぼ毎年、そうやっているのだ。

 夏の盛りに生まれた蚕は丈夫で、病気になりにくいため、卵も健全だろうという考えからである。


「どのくらいの繭が採れそうかな?」

「は、旦那様、7トンちょっとくらいになりそうです」

「おお、そうか!」


 この量は、平成時代の群馬県における繭の生産量(年間で約18トン)に近い。

 そして群馬県は、現代日本で最も生糸の生産量が多い(もちろん繭の生産量も)県である。

 現在のド・ラマーク領は、そのレベルに到達した、ということになる。


 だが、まだ先は長い。

 日本でも、西暦2000年には1200トン以上の繭が収穫されていたのである(ピーク時には40万トン近かったという統計もある)。

 化学繊維の開発が当分見込まれないこの世界において、人気のある生地はやはりシルクである。

 これを一般大衆でも手に入れられるレベルまで持っていきたい(品質はそれなりだとしても)とアキラは考えていた。

「効率化、自動化は必須だよな……病気は絶対に避けなければならないし……でも、いつかはやり遂げてみせるぞ」


 アキラは心に誓ったのである。


*   *   *


 家族サービス。

 多忙なアキラにとって、貴重な癒やしの時間である。


「ほらエミー、これがウドだよ」

「にいに、あたちがとるの!」

「ちゃんとてぶくろをしてね」

「うん!」


 約束どおり一家揃って、裏山へピクニックを兼ねてウドを取りに来ているのだ。

 ウドの他にヨモギもあり、あとで草餅を作ろうと、アキラはせっせとヨモギを摘んでいた。

 ヨモギにはビタミンA、ビタミンC、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれているので、青物が不足していた冬を越えた身体に嬉しい野草なのだ。

 天ぷらにしても美味しく食べられるので、アキラはこちらを採取している。


 気を付けなければならないのが、よく似た毒草を摘んでしまうこと。

 トリカブトの若い芽は、ちょっと見には似ているので要注意。

 が、ヨモギには独特の香気があり、摘むたびにその香りを確認していれば大丈夫である(とはいえ初心者はベテランの指導を受けてくださいね)。


「タクミ、エミー、さあ、お昼にしましょう」

 ミチアがお弁当の用意をしながら子供たちを呼んだ。


「はぁい!」

「はい、ははうえ」

「ほう、いっぱい採れたね」

「うん! にぃにといっしょにとったー」

「そうかそうか。えらいぞ」

「んふー」


 アキラはにっこにこのエミーの頭を撫でてやるのだった。


 一方ウドは、似たようなものといえばタラの芽くらいで、そのタラの芽は木の芽なので生え方が違う(似ているのは同じウコギ科だから)。

 そしてどちらも食用なので(しかも美味しい)全く問題はない。

 なお、栽培されたウドとはかなり違う(というか別物)。

 栽培モノは土を被せて日に当てず、半分を白く作る『緑化ウド』、光をあてずに完全に白く栽培するウドである『軟化ウド』がある。

 『緑化ウド』を『山ウド』ということもあるので注意(山菜としてのウドは『野ウド』になる)。


 ド・ラマーク領でのウドの取り方は、根元に専用のコテ(小型のシャベルのようなもの)を当てて掘りとる。

 根が残っていれば、2番芽がまた伸びてくるので、根こそぎにはしない。

 急な傾斜地に多いのだが、リリアが見つけたこの群生地は緩斜面で、子供でも危なくない場所だった。


「リリア、いい場所を見つけてくれてありがとう」

「おそれいります」

 侍女のリリアもまた、ウドをたくさん採取してくれていた。


 閑話休題。

 アキラ一家は日が傾くまでのんびりとピクニック、そして山菜採りを楽しんだのであった。


*   *   *


 さて王都では、『二重反転式エンジン』を完成させたハルトヴィヒがいろいろな試験を行っていた。


「うん、これなら成功と言えるだろう!」

 地球における内燃機関では、あまり実用的ではなかった『二重反転式エンジン』。

 だが、『魔法機関』、いや『魔導機関』でなら高効率のエンジンにすることができたのだ。

「あとは、これをジュラルミンで作れば、より軽量化できるだろう」


 ベアリングやシャフトなど、大きな力が掛かる部位は靭性を加えた焼入鋼を使うが、筐体はジュラルミンで十分。

 昨日、ようやく王国産のジュラルミンのインゴットが製造され、帝国に頼り切りにならずに済むと、関係者は胸をなでおろしていたのである。


*   *   *


 機体製作も順調である。

 基本構造は『ルシエル1』と『エトワール1』をベースにし、より洗練された形状・構造を目指す。

「全金属製にしたいものだな」

「ド・ルミエ領でボーキサイトが見つかったというから、なんとかなるだろう」

「構造の見直しは必須だな」

「強度計算もな」


 任された技術者たちも一所懸命である……。


*   *   *


 そして、ド・ルミエ領もまた、活気づいている。

「王国の隆盛のために!」

「おう!」

 ボーキサイト鉱山の開発が急ピッチで進められており、アルミニウムの精錬工場も建設中(といっても大きな小屋程度だが)。

 北国は今、熱気にあふれていた。

 お読みいただきありがとうございます。


 次回更新は12月7日(土)10:00の予定です。


 20241130 修正

(誤)光をあてずに完全に白く栽培するうどを『軟化ウド』がある。

(正)、光をあてずに完全に白く栽培するウドである『軟化ウド』がある。

(誤)だが、魔法機関いや『魔導機関』でなら高効率のエンジンにすることができたのだ。

(正)だが、『魔法機関』、いや『魔導機関』でなら高効率のエンジンにすることができたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
シルクの生産量も順調に増えていってますねー ホント変な病気の蔓延だけは怖くなってきますよ
>>夏の盛りに生まれた蚕は丈夫で、病気になりにくいため、卵も健全だろうという考えからである。 まぁ、異世界なので魔力障害による突然変異も起きやすいんですけどね。 >>現在のド・ラマーク領は、そのレ…
>>7トンちょっと 仁「1トン、2トン・・・・・」 56「3トン・・・・」 明「をひ・・・」 >>効率化、自動化は必須 仁「まだまだ名前が付きそうだ」 56「自動糸紡ぎ機に自動織機か・・・・」 春「…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ