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異世界シルクロード(Silk Lord)  作者: 秋ぎつね
第13章 雄飛篇
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第一話 再会

 ガーリア王国に早い春が来た、そんな日、首都パリュ。

「久しぶり!」

「元気そうだな!」

 アキラ・ムラタ・ド・ラマーク子爵と、ハルトヴィヒ・ド・ラグランジュ名誉男爵は固い握手を交わしていた。

 ほぼ1年ぶりの再会である。


 アキラは、恒例の王都訪問でやって来たのであった。

 初日の挨拶回りが終わって、最後に親友ハルトヴィヒの研究室を訪れたというわけだ。


「ハルト、話したいことがたくさんあるんだ」

「僕もだよ、アキラ。今日の予定は?」

「挨拶はもう終わった。あとは5時からの夕食会まで自由だ」

「今は午後3時……1時間半くらいはゆっくりできそうだね」

 ということで、ハルトヴィヒは『家』へアキラを案内する。


「今日の仕事はいいのか?」

「今日はみんな午前中で終わりだよ。北からの一行が来る日だからね」

 アキラ・ムラタ・ド・ラマーク子爵、フィルマン・アレオン・ド・ルミエ前侯爵、そしてレオナール・マレク・ド・ルミエ侯爵の一行の年一度の訪問は王城内でも特別視されているのだった。

 『異邦人エトランゼ』という存在はそれほどまでに重要なのである。


「今年は何を持ってきたんだい?」

 ハルトヴィヒは、自分がいない間のド・ラマーク領がどういうことになっているのか知りたがった。

「まずは『ゴム動力のライトプレーンの新型』かな」

「お、それは興味深いな!」

「それに『オイルフィニッシュ』用の『クルミ油』」

「ふうん?」

「それから、『餅米』だな。まだ品種が固定できないので製品だけだが、『餅』と『かき餅』ができた」

「美味しそうだな……」

「あとは恒例の絹織物とドレスだな。去年の1.3倍くらいは持ってきたぞ」

「順調に発展しているようでなによりだ」


 ……という話をしているうちに、ハルトヴィヒとリーゼロッテの『家』に到着。

 実は引っ越したばかりなのだ。

 今年完成した集合住宅で、王城の外壁の内側、内壁の外側に建てられている。

 場所は広義の王城内ということになる。

 部屋については高級マンションを想像してもらえればいい。

 そのガーリア王国版ということになる。もちろん高層建築ではなく、3階までしかないが。

 ハルトヴィヒ夫妻のような重要人物や、王城内に勤める高位の使用人(王族担当などは役なしの下級貴族よりも権力があったりする)が住んでいる。

 近所には独身の近衛騎士が住む長屋風の住居もあり、セキュリティ的にも安心である。


「ただいま。……ロッテ、アキラが来たぞ」

「いらっしゃい、アキラ! お久しぶり!」

 ハルトヴィヒを迎えに出たリーゼロッテはアキラを見て大喜びだ。

「久しぶり、リーゼ。元気そうだね」

「おかげさまでね」

「エッタは?」

「今、お昼寝中」

「そうか、残念」

「ともかく、こちらへどうぞ」

 アキラは食堂へと通され、お茶が出された。


「このあと夕食会でしょうから、喉を潤す程度にしておくわね」

「ああ、ありがとう」

「今回、ミチアさんはお留守番?」

「そうなんだ。タクミとエミーがいるからな」

「会いたかったなあ」

「またド・ラマーク領に戻ってくれば毎日会えるよ」

「ふふ、そうね」


 リーゼロッテとの話の区切りがついたところで、アキラはハルトヴィヒに向き直った。

「ハルト、『飛行機』の方はどうだい?」

 聞きたくてたまらなかった、という顔をしている。

「順調だよ。僕の他に技術者は4人いるんだけどね、全員が『練習用グライダー』で1分ほどの滑空を経験している」

「それはすごいな。事故はなかったのか?」

 アキラは、地球の歴史ではグライダーの墜落で何人もが命を落としているのを知っているがゆえの質問である。


「初期に一度あったが、機体は壊れたが操縦者は無事だった。それ以降事故はないよ」

「そうか、それはよかった。……で、どんな機体を作っているんだ?」

「まあ落ち着いてくれ。順を追って話すから」

「そ、そうだな、すまん」


 そしてハルトヴィヒは開発の話を順を追って説明していった。

「まずはハンドランチグライダーで空への興味を惹いたのか」

「ブームになってるんだよ。それから……」


「なるほど、動力飛行はUコンをベースにした3本ワイヤーの『Eコン』を開発したのか……面白そうだな」

「その後、本体設計を始めて、同時並行でグライダーを作って操縦の練習をしたというわけさ」

「効率的だな」

 そしてハルトヴィヒは爆弾発言をする。


「2日後に初の動力飛行を行う予定だよ」

「え、それって……」

「アキラが王都に滞在中に初飛行を行いたくてね」

「そうか! 是非見せてもらうぞ!!」


 ハルトヴィヒとしても、アキラには是非世界初の動力飛行を見届けてほしいと思っていたのである。


「あとは『自動車』の製作だね」

「ああ、手紙をもらったから知ってる」

「うん。『携通』にある『自動車関連』の資料を送ってくれて助かったよ」

「そっちも見せてくれよ?」

「明日にでも。期待していてくれ」

「おう」

 久しぶりに会った親友同士、話は尽きないが、容赦なく時間は過ぎていく。


「アキラ、そろそろ戻らないと」

 リーゼロッテがアキラに時間切れを告げた。

「ああ、もうそんな時間か。……それじゃあハルト、今日はここまでだ」

「うん、また明日」

 そしてアキラは自分の宿舎に戻る。

 これから面倒くさい『夕食会』である。

 『晩餐会ばんさんかい』よりは小規模であるし、堅苦しくもないのであるが、元々が庶民であるアキラは、こうした貴族的な催しが大の苦手なのである……。

 お読みいただきありがとうございます。


 次回更新は3月30日(土)10:00の予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言]  そういえば最近のニュースで子供の検診で裸になるのがうんぬんやってて理由にアトピー等が上がってたけど今って絹による治療ってしてないのかな?肌触りもだけど生体由来だから皮膚病によく汗疹とか出来…
[一言] アキラとハルトヴィヒは久しぶりの再会ですね、積もる話も沢山あるだろうから、ゆっくりと親交を深めれば良いですよ。 >「今回、ミチアさんはお留守番?」 >「そうなんだ。タクミとエミーがいるから…
[一言] >>アキラ・ムラタ・ド・ラマーク子爵と、ハルトヴィヒ・ド・ラグランジュ名誉男爵は 熱い抱擁を交わしていた。 >>初日の挨拶回りが終わって、最後に親友ハルトヴィヒの研究室を訪れたというわけ…
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