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異世界シルクロード(Silk Lord)  作者: 秋ぎつね
第12章 飛翔篇
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第二十七話 春待月

 なろうの仕様が変わったため、慣れていないのでうっかり金曜夜に一度投稿してしまいました……

 書き溜めがないので一旦削除し、予約投稿に切り替えています。

 ご迷惑をおかけしました。

 ド・ラマーク領では、雪の量が増える季節が過ぎ去ろうとしていた。

 日差しが目に見えて強くなり、木々に積もっていた雪が音を立てて落下している。

 ゆえにこの季節の樹林帯は雪の量が一気に増えるのだ。

 そして油断していると落ちてきた雪を頭からかぶることになる。

 気温が低い朝のうちはいいが、日が出て気温が上がってくると要注意である。


 そして気を付けなければならないことはもう1つある。

 『モナカ雪』だ。

 とはいえこの世界に『最中もなか』はないので、アキラ独自の命名と思われている。

「ゲルマンス帝国では『クラスト』って言うんだったな……」

 今は不在の親友から、聞いた言葉を思い出すアキラ。


 『クラスト』は『硬い外皮』を意味する。

 蟹の甲羅やパンの外側がこれだ。

 そして『クラストした雪』とは、表面が凍って硬くなった雪のことである。

 あくまでも表面だけのことなので、うっかり乗っかると踏み抜いてしまうことがある。

 中は凍っていないので踏ん張りがきかず、脱出に苦労することもある。


 現代日本における冬季後半から残雪期にかけての雪山登山でも、この『クラストした』雪面には苦労するらしい。

 そしてまた、アキラたちも苦労を強いられる。

 『かんじき』を履いていても、気温が上がった昼間になると踏み抜くリスクが増すのである。

「『履帯りたい』を備えた自動車がほしいなあ」

 そんなつぶやきは誰にも聞かれることなく、晴れた空に消えていった。


*   *   *


「うん、試作は成功だな」

 王都では『自動車』の試作1号車が完成、ハルトヴィヒとルイ・オットーは走行テストを行っていた。

 シャーシのみでボディは付いていないが、十分に自動車らしい格好に見える。


 ところで、地球でいう黎明期の自動車とハルトヴィヒたちの自動車を比較して何が違うか。

 何もかも違うと言ってしまえばそれまでだが、もう少し詳しく分析してみよう。


 設計、つまり構造。

 これは『携通』を使い、再現できるところは現代の構造を模している。ハルトヴィヒたちの方が上。

 素材、材料。

 黎明期は金属素材といえば鉄鋼であり、丈夫で扱いやすいが重い。

 アルミニウムやマグネシウム合金は使えないので、この点では引き分け。

 加工精度。

 これが悪いとオイル漏れや水漏れ、ガタつきを生み、性能低下を招くが、アキラとともに開発を続けてきたハルトヴィヒは現代日本レベルとまではいかずとも、設計どおりの性能を発揮できるくらいには加工精度を管理できていた。

 つまりハルトヴィヒたちの勝ち。


 つまり、現代日本レベルとまではいかずとも、黎明期のものよりは数段優れた自動車が作れるはずなのだ。

 そして、現に試作車は、黎明期の自動車を超えている……と、アキラが見れば断言しただろう。


「デフギヤがないから曲がりにくいのが欠点だな」

「次の課題ですね」

 試走させているのは基本的に土の上なので、多少曲がりにくい、で済んでいるとも言える。

 これが舗装路なら、相当なアンダーステア(意図したよりも曲がらない状態)が出、タイヤが削れかねない。


「だが、動力特性はいいな」

「先生の作ったエンジンのおかげですよ」

 飛行機用のエンジンよりも、レスポンス(反応)とトルクを重視した結果である。

 レスポンスをよくするため回転円盤の大きさは小さめにし、トルクを大きくするため円盤の枚数を8枚に増やしたのである。

 回転数も上がるために減速する必要があるが、これは問題なく解決。

 結果的にやや重くなってしまったが、空を飛ぶわけではないので問題なしである。


「うむ、試作とは思えない出来栄えだな」

 魔法技術大臣のジェルマン・デュペーはそれを見て驚いている。

「これをきっちりと仕上げれば、馬の代わりにもなります」

「うむ、そうであろうな」

「専用の台車を作って、『飛行機』を飛行場まで運ぶこともできます」

「用途は多いな」

「はい」

 ハルトヴィヒの説明に、ジェルマン・デュペーは大きく頷いた。

「よろしい。継続して研究開発を進めてくれ。予算は認める」

「ありがとうございます」


 こうして、自動車開発は次の段階に入った。


*   *   *


 飛行機計画もまずまず順調である。

 シャルル、アンリ、レイモンの3人は、壊れた『練習用グライダー1号機』に代わる『2号機』を完成させ、日夜練習を重ねている。

 もちろんハルトヴィヒとルイも練習には参加し、順調に操縦スキルを向上させていた。


「これだけ練習を繰り返したなら、実機へのフィードバックもできるだろう」

 ということで、並行して製作中の飛行機を小改造しつつ少しずつ組み立てている。

 改造対象となったのは主に構造材だ。

 『練習用グライダー』で明らかになった、強度が必要な場所はより強く。

 強度よりも軽量化が重要な箇所はそれに対応。

 全体として重量増加を避けつつ、最適な構造へと近付けていったのだった。


「うん、少しづつ完成に近づいているな」

「楽しみですね、先生」

「早く春が来ないかなあ」

「いや、それまでにこれでもかと操縦の練習だぞ」

「はい」

 練習の重要性はハルトヴィヒがことあるごとに言っているため、全員が納得し、精進していた。


「最終段階は、『練習用グライダー2号機』でロープなしの滑空を行うことだ。そのための自信がつくまで頑張ろう」

「はい」

「はい!」


 その頃までに『自動車』を完成させ、丘の上まで『練習用グライダー2号機』を運べるようにしたい、とハルトヴィヒは考えている。


「あと1ヵ月……」

 冬が終わり、春が来る。

 そうしたらいよいよ飛行機計画は最終段階に入る。

 それまで、十分すぎるほどの準備をしていこうと改めてハルトヴィヒはメンバー全員に向けて周知徹底するのだった。


 春はもうすぐそこまで来ている。

 お読みいただきありがとうございます。


 次回更新は3月23日(土)10:00の予定です。


 20240316 修正

(誤)強度よりも軽量化が重量な箇所はそれに対応。

(正)強度よりも軽量化が重要な箇所はそれに対応。

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― 新着の感想 ―
[一言] 四輪だから曲がりにくいのであって、前輪を一つにしてトライクのようにすれば曲りやすさは改善される……かも? 後輪駆動になっちゃうけど。
[一言] >「『履帯』を備えた自動車がほしいなあ」 速度は余り出ないけれど、頑丈な自動車になりそう。
[一言] >そして気を付けなければならないことはもう1つある。 >『モナカ雪』だ。 >とはいえこの世界に『最中』はないので、アキラ独自の命名と思われている。 >「ゲルマンス帝国では『クラスト』って言う…
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