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異世界シルクロード(Silk Lord)  作者: 秋ぎつね
第1章 基盤強化篇
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第二十四話 充電!

 蚕たちは全部が繭となっており、あと1週間もすれば羽化するであろう段階となった。

 アキラは、5人の『幹部候補生』たちに、次は飼う数を倍に増やし、繭から糸を取るつもりだ、と告げた。

「はあ、この繭から糸を取るんでやんすね」

「聞いてはいましたが、どうやるんでしょう。楽しみです」

 などの感想を口にしている彼らを頼もしく思うアキラであった。


*   *   *


「さて、いよいよこっちか」

 電気が作れるようになったので、次は『携帯通話機』(携通ケイツウ、K2)の充電と言うことになるが……。

「電圧計がないと壊れるよな……」

 と悩むアキラ。

「簡易メーターを作るしかないか……」


 電流計・電圧計など、アナログメーターの仕組みは簡単だ。

 電流が流れると、その周囲には磁場が発生する。アンペールの右ねじの法則などが有名だ。高校の物理でも習うはずである。

 メーターの原理を知るために、方位磁石のケースに導線を巻く実験がある。

 南北を指していた磁針が、電流によって作られた磁場に影響を受け、向きを変えるのである。


 磁針を磁石に変え、南北を示すのではなくぜんまいばねによって一定の向きを保つようにしたものがアナログメーターである。

 アキラは方位磁石に導線を巻いて作った実験を通して、ハルトヴィヒにメーターとはどういうものかを説明した。

「ふうむ、なるほどなるほど。つまり、電流が多いほど磁力が強くなって、この『メーター』の針は大きく振れるんだな?」

 これまで着磁器や発電機の製作の際に電流と磁界の説明を再三していたため、今のハルトヴィヒは中学生くらいには理解をしてくれていた。

 そしてそれは簡易メーターを作るには十分な理解度であったのだ。

「任せておけ。……ただ問題は、その電圧? の基準がないと、目盛りを振れないよなあ」

 温度計の時は氷点と沸点という、はっきりした基準があった。しかし電気は……。

「……まてよ? 起電力というのがあったはずだ」


 アキラは必死に思い出そうと頭を絞った。

「亜鉛と銅の場合、ボルタの電池で1ボルトだったか1.1ボルトだったか……」

 そうした数値は『携通』に入っており、その『携通』を動作させるために電気を作らなくてはならない……という皮肉な現状である。

「レモン電池が1ボルトくらいだったはず」

 多少の電圧変動は、『携通』内の安全回路が吸収してくれるはず、と、アキラはおおよそ3.3ボルトを測定できればいい、ということで先日作ったリンゴ電池を3つ直列にし、その電圧を3ボルトとすることにした。

「多少電圧が低くても、時間を掛ければ充電できるだろう」

 逆に電圧が高いと『携通』が壊れる可能性があるから要注意だ。


*   *   *


 アキラが基準となる電圧作りに四苦八苦している間に、ハルトヴィヒは簡易メーターの試作機を完成させていた。

「アキラ、これでどうだ?」

 リンゴを用意しようとしていたアキラは、ハルトヴィヒの素早さに舌を巻く。

 そして簡易メーターを見て脱帽した。

「いや、まいった。ハルト、これなら文句なしだ」

「はは、それはよかった。早速試してみよう!」

 ということで、ハルトヴィヒにせき立てられるようにしてアキラはリンゴ電池を用意した。


「なになに? また何か面白い実験?」

 先日来、化粧水作りに没頭していたリーゼロッテが顔を出し、この実験に興味を示した。

「面白いかどうかは別として、発電機の制御をするための計器作りだよ」

 アキラはリーゼロッテに状況の説明をした。

「なるほどね。この前の温度計と同じで基準になる電圧と比較して目盛りを振ろうというのね」

 リーゼロッテもまた、卓越した頭脳で、アキラたちがやろうとしていることを理解したようだ。


「じゃあ、やるぞ」

 まずはリンゴ電池を3個直列にした電圧を測定。

 電圧計なので、理想はインピーダンス(抵抗)無限大だが、このメーターはそうもいかず、多少電流が流れるため、電圧が降下してしまう。

 それも加味して、

「このあたりを3ボルトにしよう」

 と目盛りを振る。

 そしていよいよ発電機の電圧を測ることになった。


 ハルトヴィヒが発電機のハンドルを回す。意識してできるだけ一定速度で、だ。

「いいかな?」

「よし、いいぞ!」

 回転が安定するのを待って、アキラはメーターに接続した。

「うーん、4ボルト位出ているみたいだな。もう少しゆっくり回してくれ。……うん、そのくらいで3ボルトだ」

 1秒でハンドルを1回転させるくらいの速度だと、この発電機は3ボルトを発電するらしい。

「このくらいなら、交替で1時間くらいは回せるかもな」

 1時間充電すれば、なんとか『携通』を起動させることはできるだろうとアキラは当て込んだ。


*   *   *


 アキラの『携通』は、何種類かの電源に対応している。

 その1つとしてDCプラグという、円い筒の外と内でそれぞれプラスとマイナスを供給する端子があり、小さく+ーの絵が印刷されている。

 これが一番わかりやすく単純なので、アキラはこの端子を使うことにし、コネクタは適当にでっち上げた物を準備済み。なのであとは線を繋ぐだけだ。

 プラスマイナスがわかりにくいので、何度も確認したあと、アキラは少し躊躇してからハンドルを回しはじめた。

 繋いだメーター、いや『電圧計』を見ながら、3ボルトを保つように心掛ける。

 その状態で『携通』を見ると、

「お、充電ランプが点灯した!」

 充電中である印の赤い小さなランプが点灯したのだ。

「これで充電ができることがわかった!」

 踊り出したい喜びを胸に抱えながらアキラは発電機のハンドルを回し続けた。

 ともすれば早回しをしてみたくなる誘惑に逆らいながら……。


 疲れるとハルトヴィヒやリーゼロッテ、途中でやって来たミチアにも手伝ってもらいながら、日が暮れるまでの2時間近くを、4人はハンドルを回し続けたのだった。

 そして。

「ありがとうみんな。満充電とはいかないけど、ちょっと使ってみるくらいの充電はできたと思う」

 気怠くなった右腕をぶらぶらさせながら、アキラは『携通』からコードを外し、手に取った。

「ちょっとだけ、起動してみる」

 側面にある起動スイッチを入れるアキラ。

 3秒ほどで起動画面が現れた。

「お、お、お!」

「ひ、光ったわ!」

「あ、何か字が出てきました」

 表示は日本語と英語なので、彼らには読めないようだ。

「*……*……**……****……と」

 アキラがパスワードを入力すると、『携通』は起動を終え、待機画面となった。

「あー……あれだけやっても半分くらいか」

 表示されているバッテリー残量は約半分。あまり長くON状態にしておくのはまずい。

 それでアキラは、3人に『携通』を紹介するため、カメラ機能を使ってみせることにした。


 『携通』を向け、シャッターを押せば、『カシャ』という電子音がして写真が撮影される。

「ほら、これ」

 撮った写真を、アキラは3人に見せた。

「わ、なにこれ? すっごい精密な絵ね!!」

「な、なんで私が映ってるんですか? 鏡じゃないですよね?」

「うーむ、これが『携通』か……」

 と、三人三様の反応を見せてくれた。

「これは写真と言って……」

 三人に説明するアキラであった。

 お読みいただきありがとうございます。


 次回更新は5月26日(土)10:00の予定です。


 20180520 修正

(旧)コネクタは適当にでっち上げた物を準備済み。なのであとは線を繋ぐだけだ。

(新) アキラの『携通』は、何種類かの電源に対応している。

 その1つとしてDCプラグという、円い筒の外と内でそれぞれプラスとマイナスを供給する端子があり、小さく+ーの絵が印刷されている。

 これが一番わかりやすく単純なので、アキラはこの端子を使うことにし、コネクタは適当にでっち上げた物を準備済み。なのであとは線を繋ぐだけだ。


 説明不足といいますか適当に流し過ぎましたので。


 20191027(日)

(誤)踊り出したい喜びを旨に抱えながらアキラは発電機のハンドルを回し続けた。

(正)踊り出したい喜びを胸に抱えながらアキラは発電機のハンドルを回し続けた。

(旧)ともすれば早回しをしてみたくなる誘惑に逆らいながら、アキラはハンドルを回し続けた。

(新)ともすれば早回しをしてみたくなる誘惑に逆らいながら……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 現実世界のスマホはUSB規格の充電器だから5ボルトでの充電だけど、携通は3ボルト充電みたいだから専用の充電器を使っていたのでしょうかね? 携帯用の電子機器は規定よりも極端に電圧が低いと充電…
[良い点] 判りやすく工夫られているところ [一言] 二次電池に直接接続したということは直流発電機を作ったのかな。 整流子をどうしたんだろうとか、ダイオード/2極管みたいなものを作ったのだろうかと思っ…
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