表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界シルクロード(Silk Lord)  作者: 秋ぎつね
第7章 新生活への序章篇
181/425

第四話 ついに見つかった探しもの

 ティボーを家臣に加えたアキラは、

「家族はいないのか?」

 と聞いてみた。


「はい、おります」

「聞かせてもらってもいいかな?」

「はい。実家は隣町にあります」

「隣というと……フォンテンブローかい?」

「そうです」

「そうか。ちょうど、領地に戻るときに通るから、顔を出していくか?」

「よろしいのですか?」

「もちろん。もしよかったら、俺も君の家族には会ってみたい」


 彼らもまた、過去の『異邦人エトランゼ』の子孫であろうから、だ。

「きっと両親も喜びます」

「ご両親は健在かい?」

「はい、それはもう」

「……で、味噌と醤油はどこで手に入る?」


 実は、これが一番気になっているアキラである。


「ああ、それでしたら実家で細々と……本当に細々とですが、作っております」

「おお!」

 これで恒久的な入手が可能だろう、とアキラは喜んだ。

 そしてさらに、気になることを尋ねてみる。

「なあ、オリザ……あるいは米、もしくは稲、って聞いたことはないかな?」


 これが、アキラにとって今一番欲しいものだったりする。


「ありますよ。というかうちで取り扱ってます」

「ほんとか!!!」

 文字どおり、アキラは椅子の上で踊り出さんばかり。

「ですが、ほんの少しですよ?」

「いいさ。今後増やしてもらえるように交渉するから」

「はあ……」


 米が手に入るなら、何でもしそうな勢い(比喩)のアキラである。


「アキラさん、嬉しそうですね」

「ああ、嬉しいよ! 今年1番の……いや、2番めの嬉しさだな!」

 1番はミチアとの結婚だよ、と言ったアキラの慌てたさまに、くすっと笑ったミチアであった。


*   *   *


 ティボーに続き、第2の家臣となるケヴィンと面会するアキラとミチア。

「閣下、よろしくお願いします!」

 また閣下呼びされて背中がむずむずするアキラ。


「ああ、よろしく頼むよ。……ケヴィンの実家はリオン地方のラヴァリスだったな?」

「はい、そうです!」

「領地に帰ったら、一度挨拶に行こう」

「恐縮であります!」

「……ご家族は皆さん健在なのか?」

「はい、おかげさまで」

「それはよかった。家族構成を聞かせてもらってもいいか?」

「はい。両親、祖父母、それに兄が1人、弟と妹が2人ずつおります。自分は次男です」

「6人兄弟か」

「いえ、とついでいった姉が2人いますので8人兄弟です」

「……」

 その多さにちょっとびっくりするアキラだったが、こういう世界だとそれほど珍しいことでもないのだろうな、と思い直した。

 そして、

「文官を募集しているんだが、誰か知らないかな?」

 と聞いてみる。

「文官ですか? ええと、妹の1人が、読み書き計算が得意です。帳簿付けならできるかと思います」

「お、そうか。……よし、候補に挙げておこう」

「ありがとうございます!」

「いや、まだ決めたわけじゃないからな?」


 とはいえ、家臣のあてが付くのはいいことだ、とアキラは思っている。

 リオン地方に帰る道中でも募集していこう、と思ったのである。


*   *   *


 そして夜。

 予定どおりにアキラはシャルロット・ド・ガーリア第2王女やアドリエンヌ・ド・ガーリア王妃らとの食事会という名目の謁見をしていた。

 出席者はアキラの他にはミチア、フィルマン・アレオン・ド・ルミエ前侯爵、シャルロット・ド・ガーリア第2王女、アドリエンヌ・ド・ガーリア王妃。


「明日は帰ってしまうのですね。名残惜しいわ」

「本当に。でも領地に戻ったら、また素敵な絹織物と絹製品を作ってくれるのでしょうから無理に引き止めることもできないわね」


 どうやら王妃も王女も、格別な用事があったわけではなく、さりげなく絹製品の催促をしたかっただけらしい、とアキラは感じていた。


「アキラ殿、我が国でもこれから絹産業を振興していきたいと思います。ですので、毎年とは言いませんが、1年おきくらいには王都に来てくれますね?」

 来てくれますか、ではなく来てくれますね、という言い方に、有無を言わせぬ圧力がこもっているな、と感じたアキラ。

 だが、ガーリア王国の貴族の一員になった以上、肯定以外の答えはない。

「はい。おそらくは冬になると思いますが、可能な限り毎年伺います。そして新たな絹製品を献上いたします」

「おお、楽しみにしておりますよ」


 喜ぶ王妃と王女。

 さらに王妃から、

「わたくしから、ド・ラマーク卿に、お祝いとして100万フロンを贈ります。新領地のため、また絹産業のために役立ててください」

 と、驚きの贈りものが。

 100万フロンといえば日本円でおよそ1億円である。

「ありがたき幸せ」

 深々と頭を下げるアキラとミチア。

 新米領主としてはありがたい限りであった。


 実は、男爵になった際、準備金という名目で王国から200万フロンを貰っている。併せて300万フロン。

 これだけあれば、新領地での新生活をなんとか始められるだろうな、と考えて少しほっとするアキラであった。

 お読みいただきありがとうございます。


 20201108 修正

(誤)「お、そうか。……よし、候補に上げておこう」

(正)「お、そうか。……よし、候補に挙げておこう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >「領地に帰ったら、一度挨拶に行こう」 >「恐縮であります!」 お父さん、息子さんを僕にください!!(何でもしそうな勢い)
[良い点] ついに和食が……うん、ほんともう、いろいろうっかりしていい。 それだけの苦労と努力を……故郷を忘れられないまま、それでも、この世界で生きていこうと決めて……重ねてきたのだから [一言] …
[気になる点] マギクラの方でもありましたがド・ラマーク卿として貴族になった事ですし王都から「蔦屋敷」までと、ド・ラマーク領との位置関係が分かる簡易的な地図があったら妄想が膨らみますね。 そして異世界…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ