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異世界シルクロード(Silk Lord)  作者: 秋ぎつね
第6章 再びの王都篇
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第二十二話 結婚式 弐

 ハルトヴィヒとリーゼロッテの結婚式は、この世界の宗教の主神をかたどったタペストリーの前で、司教立ち会いのもと現在進行系で進められている。


「それでは、指輪の交換を」

 これはアキラが是非にと主張し、宰相や産業大臣も賛成した。

 なんとなれば、この習慣が流行りになればアクセサリー産業が活気づくであろうからだ。


 銀の指輪をお互いの左手の薬指にはめ合うハルトヴィヒとリーゼロッテ。

「よろしい」


 続いては主神の前での誓いだ。


「……晴れの日も雨の日も、穏やかな夜も嵐の夜も、変わらず助け合い生きていくことを誓いますか、ハルトヴィヒ?」

「誓います」

「リーゼロッテ?」

「誓います」

「よろしい。主神もご照覧あれ。ここに若き2人の絆を結び、永き幸あらんことを願い奉る」


 そしてハルトヴィヒがリーゼロッテにそっと口づけを行うと、列席者から割れんばかりの拍手が行われた。


 行きは親代わりの前侯爵と伯爵に付き添われて歩いた2人だったが、戻る時は2人腕を組んで、となる。

「お2人のために祝福を!」

 アキラの声に、列席者たちは拍手を贈り、色とりどりの紙吹雪を撒く。

 本来なら『ライスシャワー』を行いたかったアキラであるが、まだ『オリザ』すなわちお米が手に入っていないので、紙吹雪で間に合わせたのだった。


 それでも、色とりどりの紙吹雪の中を歩む2人は喜びに満ち溢れた顔をしており、見ている者たちも自然と頬が緩むよう。

「おめでとう」

「おめでとう!」

 紙吹雪と祝福の声に送られ、2人は中広間を後にしたのであった。


*   *   *


 もちろん、これで式が終わったわけではない。

 これから披露宴が始まるのだ。王から姓を授けられるのもその席である。

 つまり、結婚式は神前で。披露宴は国王の前で、ということになる。


 中広間を出たハルトヴィヒとリーゼロッテは一旦控室へ行き、休憩。

 そこへアキラ、ミチア、リュシル、リリア、リゼット、ミューリらがやってくる。


「おめでとう、お二人さん」

「とっても素敵だったわ!」

「おめでとう! 憧れちゃうわ!!」

「ありがとう、みんな」

「ありがとう、アキラ、ミチア」


 仲間だけの場なので、皆気兼ねなく言葉をかわすことができた。

「……ああ、緊張したわ」

「僕もだ。もう2度とやりたくはないね」


 リーゼロッテがぼやき、ハルトヴィヒが愚痴を言う。


「ははは、それは大丈夫。2人仲睦まじく過ごしていけば、もう2度と結婚式をする必要はないさ」

 アキラが正論を言った。

「そ、そりゃそうだ」

 頭を掻くハルトヴィヒ。

「ははは」

「そうよ、ハル。私は他の男性と式を挙げるのなんてごめんですからね」

「そりゃそうよねえ」

「違いない」

 控室に明るい笑いが広がった。


 アキラとミチアは披露宴の準備でじきに控室を出ていったが、ハルトヴィヒとリーゼロッテは30分ほどを控室で過ごす。

 その間に水分補給と用足しを済ませておく時間でもあるのだ……。


*   *   *


「それでは皆様、新郎新婦を拍手でお出迎えください!」


 披露宴会場にアキラの声が響いた。

 控室の扉が開かれ、ハルトヴィヒとリーゼロッテが現れる。それを迎える万雷の拍手。


 中広間は結婚式場から披露宴会場に模様替えされていた。具体的には立食パーティーの場になっている。

 この短時間では、椅子を片付けるのが精一杯で、テーブル類を揃えるのは無理と判断したゆえの判断だ。


「おや? 先ほどと装いが違う……いや、変わってないのか?」

「いや、なんとなくだが違うぞ……ああわかった。小物が加わってアクセントを添えているのだ」


 そう、さすがに『お色直し』のために服をもう1着ずつ用意することはできなかったので、要所要所を取り替えたり小物を追加したりすることで印象を変えているのだ。

 リーゼロッテなら、白一色の装いだったものが、腰回りにピンク色の腰帯を巻き、同じ色のショールを肩から掛けることで。

 ハルトヴィヒはジレ(ベスト)の色を青に変え、ポケットチーフも白から青にしている。

 これは、最初からリバーシブルに作ったジレの裏側を青く染めた生地で構成してあったのだ。


 ハルトヴィヒとリーゼロッテは腕を組みながら会場中央を歩き、専用にしつらえた席へ。

 そこに座って、出席者からのお祝いの言葉やお祝いの品や、飲料水やお酒のお酌を受けることになるのだ。


 まず最初に2人に歩み寄ったのは国王陛下、ユーグ・ド・ガーリア。


「おめでとう、2人共。まずは祝いの言葉を言わせてもらおう」

「光栄です、陛下」

「ありがとう存じます」


「さて、祝い代わりに、2人に家名を贈ろう。『ラグランジュ』。それがこの国における、2人の家名だ」

「ありがたき幸せ」

「これより私どもはラグランジュを家名とし、王国民としての義務を果たす所存です」

「うむ、よろしく頼むぞ」


 そして国王はその場を去る。

 執務もあるので披露宴会場からも出ていくのだった。

 少々後ろめたくもあったが、進行役のアキラは、

「陛下のご厚情によりまして、新郎はハルトヴィヒ・ラグランジュ、新婦はリーゼロッテ・ラグランジュと相成りました。皆様、2人に拍手を!」


 会場は拍手に包まれた。

 披露宴はまだまだこれからである。

 お読みいただきありがとうございます。


 次回更新は6月27日(土)10:00の予定です。


 お知らせ:6月20日(土)早朝から21日(日)昼過ぎまで帰省してまいりますのでその間レスできません。ご了承ください。


 20200621 修正

(誤)中会議室

(正)中広間

 2箇所修正。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  ハルトのジレがリバーシブルだと分かった瞬間、結婚式というよりファッションショーの印象が強くなり、脳内でハルトがモデルのように魅せる仕草でジレのボタンを外して内側を観客(私)に見せてくれま…
[気になる点] >「それでは、指輪の交換を」 > これはアキラが是非にと主張し、宰相や産業大臣も賛成した。 > なんとなれば、この習慣が流行りになればアクセサリー産業が活気づくであろうからだ。 ~ …
[良い点] >ラグランジュ 安定して、人と物が集まりそうな良い家名です。重力的に
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