「明日が勝負というわけじゃな」
●「明日が勝負というわけじゃな」
「問題はあの黒騎士じゃな」
食事も終わって。
そのまま件のシャドウロードについて話すことになった。
「国全体の石化の呪い自体は、こやつなら何とかなる。時間は掛かるが、明日一日使えば解呪そのものは可能じゃろう」
しかし、とキャスパーは指を立てる。
「今ある石化の呪いを解いても、あの黒騎士がおる限り問題は解決せんじゃろ。解いた端からまた呪いをかけられてはイタチごっこじゃ」
「元を断つ必要があるわけだ」
「その通り。汝も分かってきたのう」
「ですが。黒騎士の足取りは掴めていません」
ラピスラズリ王女が目を付して言う。
「奴がこの国に現れて5日。何度か襲来自体はあったのですが、現れる時も消える時も突然で……
奴がどこから来て、どこに消えているのか。分かっていないのです」
「なら、やることは二つじゃな」
びし、とキャスパーが指を二本立てる。
「一つ、国中の石化の呪いの解呪。もう一つは黒騎士の探索じゃな」
「呪いの解呪は明日にでも出来るけど、黒騎士に関しては地道に行くしかないか」
俺に与えられた千の魔法の中には、特定のモノや個人を探す魔法もあるようだ。
それを使って地道に探すしかないだろう――と、そんなことを考えていると、キャスパーがニヤリと笑う。
「何、呪いを解けば尻尾を出すじゃろ。
あの黒騎士は何故この国の民を一週間かけて石化しようとしてるか、分かるかの?」
「そう言えば……何でだ?」
石化そのものは早めることも出来るらしい。現に俺が最初に出会った少年は、周りに人々に比べて格段に石化が進んでいた。
つまり、黒騎士はいつでもこの国の人々を完全に石に出来るわけだ。
だが、奴はそれをしない。それは何故だ?
「シャドウはな。人を殺してその命を啜る。だがそれ以外にも喰らうものがある。
――恐怖。絶望。そう言った心の負の想念。それもまた奴らにとっては御馳走なのじゃ。
奴が時間をかけて石化を進めていたのもそのため。じっくりと恐怖を熟成させ、味わっておったわけだの」
「そんな……」
「つまり今のこの王国は黒騎士に取って『丹念に準備した食事場所』なわけじゃ。
そこを汝が解呪して台無しする。するとどうなる?」
「怒って、出てくると?」
「正解じゃ」
親指と人差し指で丸を作りながら、ニヤリと不敵に笑うキャスパー。
「明日、石化の解呪儀式を行う。さすれば黒騎士も出てくるだろうよ。明日が勝負というわけじゃな」




