「きっとこの国は救われます」
●「きっとこの国は救われます」
「"我が祝福は呪縛を解く"――これでどうだ?」
呪文と共に、右手から光が放たれる。
攻撃のための刺すような鋭い光ではなく、包み込むような優しい光だ。
光に包まれるのは石化しつつあった少年。
――俺を呼んだ少年だ。
「――あ、ああ――すごい、すごいよ兄ちゃん! 動く! 手も足も動くよ!!」
光が治まると、少年が飛び跳ねて喜んでくれる。
『石化は問題なく解けたようじゃな』
「ああ。良かった――」
心底、そう思う。
黒騎士を逃がした俺が見たのは、全身が石化しつつある少年だった。
どうにか出来ないかとキャスパーに聞き、治療。石化が解けるまで、気が気じゃなかった。
「勇者様……」
「勇者様だ……」
「勇者様が来て下さった!!」
気が付くと、俺は歓声に包まれていた。
先ほどの騒ぎを遠巻きに見つめていた人々が、俺と少年の周りに集まってきている。
「勇者様! 私の石化も治してください!」
「勇者様! 私も!!」
「勇者様!」「勇者様!」「勇者様!」「勇者様!」「勇者様!」「勇者様!」
見ればこの街の人々は、皆手足のどれかが石となって動いていなかった。
「これって、やっぱり……」
『あのシャドウロードの仕業じゃな。この国の民全てを石にするつもりらしいのう』
許せない。そんな義憤を胸に秘め、俺は治療を始めようとする。
と、そこに新たな声が聞こえてきた。
「お待ちください、勇者様。皆も落ち着いて下さい」
しんと、静かに染み渡るような声だった。人々が騒いでいても聞こえるような。
群衆を割って、一人の少女が歩み出る。
豪奢な長衣に、頭に王冠。纏う雰囲気は気高く高貴なモノ。
「初めまして勇者様。私はラピスラズリ・ジェムレイス。
このジェムレイス王国の王女にして"宝石姫"と呼ばれた勇者の一人です」
「あ、俺は一条レイ、です……」
ぺこりと下げられた頭に、こちらも思わず頭を下げる。
思わずこちらも畏まってしまう、そんな雰囲気の女の子だ。
「勇者様は先ほどこちらに来られた身。疲れも溜まっておりましょう。
まずは王城に来ていただき、ゆっくり休んで頂けませんか?」
そして彼女は、民衆に向かって安心させるように微笑み、
「皆も今日は一度戻ってください。大丈夫、きっとこの国は救われます。
――勇者様が、来てくださったのですから」




