表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

「“我が光刃は闇を裂く”」

 ●「“我が光刃は闇を裂く”」


『――随分派手な登場だのう!』


「誰だお前」


 助けを求める声が聞こえた――と思ったら、気づいたらこんなことになっていた。

 眼前に真っ黒な鎧兜に身を固めた騎士っぽいの。

 背後には助けを求めた少年。

 周りには遠巻きにこちらを見ている雑多な人々。

 そして――自分の顔の横に、手のひらに乗るサイズの二頭身猫耳幼女がいた。

 ――猫耳幼女?


『我はキャスパー。この世界クロスワールに不慣れな(なれ)のために神が遣わした使い魔よ。汝のサポート役じゃな』


 それはまた随分と親切な。太っ腹な神様もいたものである。


『さて――レイよ。まず状況説明じゃが――目の前のアレ(・・)が敵じゃ』


 キャスパーが目の前の黒騎士を睨みながら、そう断言する。


『あの黒い瘴気を撒き散らすモノこそシャドウ。人類の敵じゃ』


「シャドウ……」


 敵。倒すべきモノ。そう認識し、自分もまた黒騎士を見やる。


「勇者。まさか本当に来るとはな……いいだろう。まずはその実力を確かめてやろう!」


 黒騎士が叫ぶ。瞬間、黒騎士から黒い瘴気が吹き出し――それらが黒いヒトガタとなって眼前に立ち並ぶ。数は――十体以上!


『シャドウには位がある。今生み出されたのは一番下のただのシャドウ。対してあの黒騎士のように、シャドウを率いるシャドウをシャドウロードと呼ぶ』


 キャスパーの解説を聞き流しながら、俺は黒いヒトガタ達――シャドウの軍勢を見やる。

 彼らはゆっくりと、だがこちらを包囲するかのように近づいてくる。

 背後には少年。逃げ道は無い。


「おいキャスパー! 敵のことはいいから戦い方を教えてくれ!」


『せっかちじゃなー。ただのシャドウ程度、そう焦ることも無いと言うに』


「いいから!」


『しょうがないのう。良いか? お主には千の魔法(サウザンド・マジック)という神の加護が与えられておる。ざっくり言うと千の魔法が使えるようになっておるわけじゃ』


 魔法。それも千も。それは凄そうだが。


「それはどうやって使うんだ!?」


『本来、魔法というのは使用するのに色々とややこしい手順が必要となる。術式の構築、魔力の準備、エトセトラエトセトラ……』


 ジリジリとシャドウ達が包囲を狭めてくる。黒いヒトガタはこちらに手を伸ばし、今にも掴みかかって来そうだ。


「おい――ッ!」


『まぁその辺のややこしい手順はサポート役たる我が引き受ける。汝がするのは使いたい魔法を決めて、気合を入れて呪文を叫ぶ、これだけじゃ』


 今の状況ならこの魔法かのう? キャスパーがそういうと、脳内にとあるイメージと呪文が浮かぶ。

 これが魔法? 半信半疑ながらも、気合を入れて俺は右手を前に出し叫んだ。


「“我が光刃は闇を裂く”!!」


 言葉と共に、右手から光が刃となって放たれ、シャドウを貫いた。

 右手を薙ぐように左右に振ると、光刃が後を追い、全てのシャドウを斬り裂いた。


『初めてにしては上出来じゃな』


「ほう。さすがは勇者、ただのシャドウごとき物の数ではないということか」


「そりゃどうも。次はお前だ! “我が光刃は闇を裂く”!!」


 再度魔法発動。右手から放たれた光刃が黒騎士を襲う。

 黒騎士は迎え撃つように、瘴気を纏った左手で光刃を受け止める。

 光爆。

 光と空気が炸裂する。


「やったか!?」


『それはフラグじゃぞ』


 破裂した光と空気の乱舞が治まる。そこに立つのは――


「くくく……なかなか、やるではないか」


 砕けた左腕を抑える黒騎士の姿だった。

 奴はしかし、震えるように笑いながらこちらに告げる。


「面白い。面白いぞ勇者よ。この国が滅びるまで後三日。それまで楽しませてもらうとしよう! せいぜい足掻いてみせるがいい!!」


 捨て台詞を置いて、黒騎士の姿が霞んでいく。

 待て、と言葉にするよりも前に、黒騎士は姿を消した。


「くそ……逃したか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ