95話 開く門
よろしくお願いします。
「止まれ!貴様ら、ここに何用だ?!ここからは立ち入り禁止だ!即刻立ち去られよ!」
「わお。荒い歓迎だね.....」
馬車を降り、歩いて近づくフィルス達を訝しげな視線を向けて止める門番。フィルス達もそれに素直に従い止まって両手を挙げる。それを見た門番は恐る恐る槍を構えながらフィルス達に近づいてくる。まだまだ若いと分かると少し驚いた顔と何故だろう?という疑念が入り雑じった顔をしている。
「こんなところに何のようだ?ここから先は帝王様の許可なく入ることは許されんのだぞ?」
「え?あぁ、そういえばハー.....じゃなくて帝王様からこんな手紙を.....」
フィルス達が馬車へ乗り込もうとしていたときにこの手紙を門番に渡すようにと帝王が渡してきた手紙を門番に差し出す。門番はそれにも訝しげな視線を向けたが恐る恐る手を伸ばし、フィルスの手を触れないように繊細に、だが、指で摘むと荒々しく手紙をとる。
少しフィルス達から離れて顔色を変えずに手紙を読んでいたが、読むにつれて目を見開かせていく門番は少し面白く笑えてくるが内容はそんな笑えたものではない。
『やぁ、門番の《ザマダ》。こうして僕から直々に手紙を寄越した訳だけど、この手紙を持ってきた者達には手を出さない、言動に気を付ける、それから門を通してやる。これをしっかりこなしてよね。もし、出来なければ.....分かってるよね?』
圧力以外のなにものでもない手紙の内容に身震いがする。それから帝王にそこまで言わしめる青年達は何者のだと、恐怖すら感じる門番のザマダ。今までの自分の言動は明らかに無礼であるがそれは仕事上仕方のない事で.....だからと言ってそれが許されるかどうかと言われれば首を横に振らざるおえないわけで.....
ザマダは素直に謝るか、自分の行った行動は正しいと信じて、このまま振る舞うかを悩んでいた。フィルスはそんなザマダに首を傾げるが、喋りかけたら怒鳴られそうなので、そのまま待機する。
ザマダは数分悩んだ結果──
「ふむ、通っても問題ないようだな。だが!エルフは狂暴だ!見かけたら、即刻駆除、もしくは逃げること.....わかったか?」
「ん?え?いや.....僕たちはエルフと分かり合うために行くわけで.....」
「なっ!?え、エルフと分かり合うだと?!もう、エルフは人間と対等な生物ではないのだぞ?!人間へ襲いかかる頭のいい『魔物』でしかない!」
「っ!なんだって.....?誰の.....誰のせいでエルフは滅んだと思ってるんですか!エルフは魔物?!絶滅寸前まで追い込んだ人間が口にする言葉ですか?!エルフにも意思はあります!それを分かろうともせずに敵扱いするなんて最低です!!」
「.....フィルス.....」
「.....じゃあ、君はエルフの何を知ってる?エルフに家族の命を取られた俺より、君はエルフの何を知る!あいつらは狂暴で無慈悲な魔物だ!!高々、人間の言葉を話せるだけ!そんなの龍王種でもできる!君が.....!エルフの何を知ってるって言うんだ!!」
「っ!?」
殺意──汚れなく、相手に向ける殺意の目を門番はしていた。
フィルスはショックだった。エルフはもしかすると昔通りなのではないのか、と.....欲張りで、人間を蔑み、自分達こそが頂点だと言い張る──時代は変わっても、根底にあるその性格は変わっていないのではないか、と。
フィルスは拳に力を入れる。するとクロがこちらをじっと見つめていることに気づき、クロを見つめる。
【.......エルフは悪い人だけじゃない。優しい人、沢山.....いた.....】
「......クロ.....」
クロは涙目でフィルスに訴えかけた。余程、エルフが好きだったのだろう。
フィルスは少し目を瞑って考え、口角を上げて再びクロを見る。
「.....大丈夫。エルフと分かり合えないなんて僕は微塵も思ってないよ。だから、そんな悲しい顔しないで。絶対に、エルフを.....エルフの里を復活させてみせるから!」
【っ!?......うん、ありがとう。フィルス.....】
〈そうだよね。人の意見で聞いたエルフは妄想でしかないよ。ちゃんと、向こうにも事情があったんだ....僕はそれを確かめるためにも、進まなきゃ〉
フィルスは怒る門番を素通りして門に手を触れる。するとそれを合図に門は開き始め、人一人が入れる程までで止まる。
「.....んじゃあ、行こっか!」
「【【うん!】】」
ありがとうございました。
え?フィルスの強靭的な怪力?まさか~・・・・・!風魔法で開けただけですよf(^^;
それもまた次回にお話しします!お楽しみにっ!




