87話 シンクスとカーストの秘密
よろしくお願いします。
「ふむ、良い返事だ。早速尋ねるが──こやつは人界へ来ていたか?」
「.....」
答えるべき。分かってはいるのだが、それ以上に恐怖心が強くなっていく.....自分はどうなってしまうのだろう?折角、本当の自分の気持ちに気付けたのに.....死にたくないって思えたのに.....カーストは死にはしないと言っていたが、それはカーストからしてみればの話。そんなカーストの足元にも及ばないフィルスでは一溜まりもないだろう。
「.....ん?もしや、カーストに嘘でも吹き込まれたか?」
「え?」
黙って俯くフィルスを見てシンクスがそう呟く。訳が分からず、目を丸くするフィルスには到底、整理できない内容であったが、こういうことらしい。
「天界の法律は天界の住人にのみ使用可能なのじゃ。例えば、我らが人間を殺しても人間の法律では我らを裁けまい?それと同じだ。それから、カーストがここへ来たのはカーストの気まぐれで、どちらかと言えばお主は被害者よ」
「え?あ、うん?え、え~と.....た、端的に言うと僕は──「悪くないぞ。」──.....カースト様!!」
「い、いや、あ、ああ、あれは言葉の綾というやつじゃ。お主も罪に問われるかもよーって、言う意味で──「問答不要!!」──ひ、ひぃ!?」
〈まったく!!ビビって損したじゃないか!!それに!どう考えても悪意があったよね!?.....はぁ、頭痛い〉
[だがな、お主もやってはならぬ事がある。それはな.....創造神の事を誰にも知られないようにするということだ]
〈それは分かってます......でも、なんでそこまで創造神が居なくなったという情報に拘るのですか?〉
少しの沈黙が訪れた。別にしてはいけない質問であった訳ではなく、ただ、言葉を整理して話すためのほんの少しの沈黙だ。
[いいか?創造神というのは人間からすれば抑圧でしかない。そんなものに抑えられなければ戦争を止められないのではダメだ。これは一種の親心で、世界の均衡を我らがいなくても保てるようにする方法じゃ]
〈.....もし......もしですよ?戦争が再び勃発したら.....?〉
[.....創り直すだけのことよ]
その創り直すは何よりも重かった。生物の命、思い、水や地面、重力に空.....全てが全てその一言通りに創り直される。
どんなものかも想像がつかないと思うのはフィルスだけではないだろう。
「少し、この世界について.....いや、我らについて話そう。だが、他言無用で頼むぞ?」
「.....はい」
この白い空間に椅子が3脚ならべられ、そのうちの1つは鉄製でできており、そこにカーストを座らせて鉄の縄のような物でぐるぐる巻きにした。
「逃げないようにしなければな」
「逃げないことくらい分かっておろうに.....」
カーストはもう慣れたと言わんばかりの顔なので天界の法律を破ったのは初めてではないようだ。そんなカーストに呆れた眼差しを送るフィルスとシンクス。それから、しばしの沈黙が訪れシンクスがゆっくりと口を開く。
「先ずは、我らシンクスとカーストについてじゃ」
フィルスはシンクスの重々しい口調に胸の高鳴りを覚え、固唾を飲んで言葉を待った。フィルスの待ち望んだシンクスの言葉は誰もが耳を疑い、誰もが驚くものであった。
ありがとうございました。
し、シンクスとカーストの秘密!?一体なんなのでしょうか?!次回をお楽しみにっ!




