86話 嘘を許さぬ正論神
よろしくお願いします。
クレプーはふわふわだが、クレプーをサクッと作り終え、先ずはサティウスのところへ持っていった。目を輝かせてクレプーを頬張る姿は愛らしく、こちらとしても作った甲斐があるというものだ。そんなサティウスに一言、行ってくる、とだけ伝えて執務室を目指す。これまた衛兵達に聞いての事であったのですぐに辿り着けた。
国王に会うのは緊張するが意を決してドアをノックする。
「なんじゃ?」
「夜分にすみません。フィルスです」
夜に訪れたことを謝りながら名乗るとすぐに扉を開けて中へ入るように促してきた。執務室は予想より狭く、国王が書類を書くであろう椅子と机の前には客人用の地味目のソファーと机が設置されていた。壁にかけられた額縁には絵画がところ狭しと並んでおり、目を飽きさせない。
「ふむ、これがクレプーというものか。不思議な味じゃが実に美味だ」
「国王様のお口に合って何よりです」
国王の口にも合ってくれたようで、フィルスは微笑みを浮かべてホッとする。書類が一段落済んだというので、国王が注いでいたティーポットのものを頂きながら雑談をすることにした。入っていたのはコク茶と呼ばれるハーブティーで中国原産地の疲労回復に効果のある飲み物だ。
甘味のあるお茶なのでフィルスでも美味しく頂けるし、何より疲れているのでこのお茶が本当に美味しく感じる。
「このお茶、美味しいですね」
「おぉ!最近の若者には分からんと思うておったが、なかなか話の分かるものじゃな。これはコク茶と言ってな.....」
なかなか雑談の仕方が下手くそなようで長々と話されたコク茶は名前しか覚えられなかった。
「いやはや、楽しい一時を過ごさせてもらった。じゃが、もう寝ないと明日も護衛があるのだろう?」
「え?あっ、そうですね。こちらこそ、長々と居座ってしまい申し訳ありませんでした。それから、コク茶──ごちそうさまでした」
フィルスはそう言って執務室を後にした。一人残された国王はコク茶を飲み干し、再び書類と向き合い、スラスラとペンをひたすらに動かすのであった。
〈あー。明日も護衛かぁー.....明日は今日見たくあまり外出してほしくないな.....疲れがマジでヤバイ〉
少しげっそりとした表情で薄暗い廊下を歩くフィルス。眠気からか視界がボヤけていくのを感じて一旦立ち止まり目を擦る。これで少しは視界が良くなるだろうと思い、再び目を開けて歩き出そうとするがそこで足が止まった。
「.......へ?ん??ど、何処だろ.....?ここ」
白く眩しい空間。何もなく貧相な場所であるが地面はドライアイスでも散らばしているように白いものが漂い、一面真っ白なその空間は遠近法が効かないようで、壁が何処にあるのかまったく分からない。
「.....フィルスよ」
「えっ?──っ!?し、シンクス様!!そ、それに.....どうしたんですか?カースト様」
そこには神々しく輝くシンクスに、首根っこを掴まれているカーストの姿があった。
「夜分にすまぬな。お主にどーーーーしても、聞かなければならぬことがあってな?」
「は、はぁ......なんでしょうか?」
〈何となくは分かるけど.....ここは答えようによっては.....〉フィルスはそう思って固唾を飲む。
「分かっておるかも知れぬがこのバカカーストの事だ。答えてくれるな?」
「っ!?な、なんなりと.....」
その威圧感はまさに神のもの。逆らうことなど不可能に近い。これは正直に答えるしかないと心の中で諦めてため息を吐くフィルスなのであった。
ありがとうございました。
な、なんと!まさかのフィルスが天界の罰を受けてしまうのか!?
じ、次回をお楽しみにっ!




