82話 頬を伝う冷たいもの
よろしくお願いします。
「.....っ!?ふ、フィルス!!」
「ぐぅ.....話の.....途中、で.......襲いかかると、は.....な、なかなか.....躾が、なっていません、ね......」
「っ!?」
少年が振りかぶって帝王目掛けて振り下ろした短剣──だが、本来当たるはずの帝王へは当たらず、いつの間にか少年の前に立ち塞がっていたフィルスの右肩に直撃した。
〈痛い痛い痛い!肩があぁぁあぁあああ!!全身が痛くて熱い!〉
フィルスは基本鎧を着けない。だから、肩など斬りつけられれば一溜まりもないし、肩にはちゃんと短剣が上から刺さっていた。だが、そこは持ち前の10歳では十分すぎる筋肉でどうにかガードできているようだ。それでも血はかなり出ている。
「ふ、ふふ、フィルス!どうしてこんなことを!」
「言った、でしょ?.....仮にも僕は護衛として、ここ、に居るん.....だよ.....?それに──」
フィルスはそこで話を区切り帝王を見てはにかむような笑顔で口を開く。
「──友達.....でしょ?」
「っ!?ふ、フィルス.....」
二人の会話はそれで終わった。後は目の前の者をどうにかした後でも遅くはない。
そんなフィルスを斬りつけた少年は動けずにいた。別にフィルスにビビっていたり、恐怖で震え上がっている訳ではない。
フィルスの右手が少年の左手を掴んで放さないのだ。肩には短剣が刺さっているにも関わらず.....
これが原因で溢れでる血の量は増えていることだろう。その証拠にフィルスはもうフラフラだ。
「じゃあ、聞かせて.....もらえる?何故、ハーリスを狙った、のか.....」
「っ!?て、帝国は武力で国を治めたんだ!!そしたらその力に抑圧された力はどうなると思うっすか!」
「.....力のない王国へ雪崩れ込む......」
「そうっすよ!そのせいで.....!俺は!俺達は!どれ程辛くて悲しい人生送ってきたか分かってるんすか?!」
〈.....そっか。王国はそんな事に.....でも.....!〉
フィルスはよりいっそうに右手に力を入れる。
怒っているのだ。この世界にでも帝王にでもなく──この少年に。
「だから?!君はその苦しみのためだけに帝王を襲ったの?!考えが幼稚過ぎるにも程があるよ!
人っていうのは不満を抱えて生きていくものなんだ!なのに!それを自分だけで、その不幸を誰かのせいにしようとするなんて馬鹿げてる!!世の中そんなものだ!!人に擦り付ける(なすりつける)暇があるなら幸せを探そうよ!君の考え方も分かるし、その不幸が壮大なのもなんとなく分かる!でもさ!それを分かれ!って押し付けるのは間違ってる!!」
フィルスの怒号に暫く呆気に取られていた少年は我に返ると物凄い剣幕に顔を歪める。
「.....じゃあ.....じゃあ!この痛みは!苦しみは!絶望は、悲しさは、寂しさは!!!!何処にぶつければ良いって言うんですか?!!!
産まれたときから独りぼっちで!物心がついた頃には襲われて!満足に歩けるようになったころには人を殺したこの不幸としか呼べない人生を!!どうすれば......どうすれば良いって言うんですか!!!!」
フィルスは少年の言葉に内心、動揺を隠せなかったが、それを表に出すことはなく、何かを考えるように少しの間を開けると口を開いた。
「.....ある少女のお話──その子は森に家族と住んでたんだって。普通に幸せで、誕生日も一緒に祝ったりして.....でもね。その誕生日の日に.....両親は殺されたんだ。理由なんて分からずに.....分かる?この子がその時どんな気持ちだったか。そりゃ、君の過去の全てを知らない僕がその少女の過去を知らない僕が分かるはずは無いけどさ.....君も、物心がついた頃に殺された両親を見た少女の気持ちなんて分かんないでしょ?」
少年は驚きに目を丸くした。その話が嘘であろうが本当であろうがその少女は嘸かし辛い思いをした事だろうから。
「でもね。彼女は懸命に、誰も呪わず生きてたよ。彼女はどんな痛い思いをしても何かに八つ当たりすることもなく!それでも君は鬱憤晴らしに人を殺めるのか!」
「っ!!」
異論はない。確かに、この気持ちを分かってくれる人はいないだろう。だが、幸せだった空間から引きずり降ろされた少女の気持ちも自分は分かってやれない.....
少年は短剣から手を放して崩れ落ちるように両膝をついた。頬を伝う冷たいものを感じながら......
ありがとうございました。
やはり重くなりますね・・・・・・・・・(^^;
作者的な好みかもしれませんが、もっとこうしてほしい!みたいな要望があればお申し付けくださいm(__)m
できるかどうかは分かりませんが、頑張ってみますので・・・・・・・(( ̄_|チラッ




