80話 敬意を称して
よろしくお願いします。
先程の慌ただしい受け答えから一転、この場には重苦しい静寂が支配していた。
いつにも増して王らしい顔立ちの帝王は威厳を溢れんばかりに漂わせており、フィルスの背中を冷や汗が流れる。
同じく国王もその眼は鋭く、相手を静かに、だが絶大的なまでに威圧しているようで、机を挟んで向かい合う両者の間には空気の割れ目でも出来そうな程の眼力と威圧だ。
「話の前に1つ聞こう。ダメ王.....いや、ハーリス・トリウス帝王。お主にとって国とは──民とはなんだ」
「......」
再びしばらくの間流れる沈黙は永久にも感じる時間の感覚とやけに大きく聞こえる鼓動を生み出す。目を瞑り、自分の意見を纏めるようにする帝王からは不安の感情が内側から溢れてきている。
ここで、気に障ることを言えば帝都は救われないのだから無理もない。
それは百も承知である国王はその沈黙を破ることもなくただ、返事を待っていた。
「僕にとって帝国は──帰るべき場所。いつも、だらけたり昼寝したりできる癒しの場所。僕にとって国民は家族も同然。だから、なるべく国民に耳を傾けて、参考にしたり、実行にしたりしてるつもり.....優しくて、暖かくて.....こんなに幼くして王になった僕を優しく受け入れてくれた、大事な家族達なんです!」
「......帝王様」
その目は確固たる決意を感じさせた。
国民の事を話すときは優しい顔と声で、今にも泣き出しそうに潤ませた瞳で話した帝王の言葉にマークリウスは自然と帝王の名を口ずさむ。国王は目を瞑り、しばらくの沈黙を挟んで優しげな瞳で帝王を見る。
「我が何故、お主にガミガミ言うか分かるか?
それはな、お主が立派に.....一国の王として、民から信頼され、尊敬される帝王になってもらいたいからだ。お主が父、アクア・トリウスが果たせなかったこの願いを引き継いでもらいたかったからだ」
「父、様が.....果たせなかったこと....」
〈な、なんで、帝王様でも知らないことを仲の悪かった国王様が.....?う、裏は深いってことかな?〉
だが、帝王は知っていた。自分の父親が国王と仲良くしていたことを.....
手紙の送り合いはいつも、国や子供の成長のことばかり。たまには酒を酌み交わす仲であるが、それはある日酔っぱらって帰ってきた父から聞いたことであった。
「いいか!ハーリス!俺の目標は現国王なんだ!そんでもってあいつの目標は俺なんだ!国民はそんな俺たちは犬猿の仲だと、いつか戦争でも始めるんじゃないか?と怯えている.....いいか?何かあればダジリア王国を訪ねろ。間違ったことでもしなけりゃ、快く引き受けてくれるだろうからよ!」
〈あぁ、そうだったんだ.....僕が何故、ここを選んだのか.....近いからだけじゃない。父さんが信頼した人がいるからだったんだ。父さんなら.....人情深く、潔い父さんなら.....こういうときどう動くだろう?〉
自分で自分の心に問いかけた。だが、身体はわかっていたのか、ソファーから立ち上がり国王の斜め横程で両手、両膝をつき頭を下げた。精一杯の頼み事なのだ。精一杯の礼儀と作法で頼み込まなければ気持ちなど微塵も伝わらない。
自分一人だけなら惨めな思いが残っていたかもしれない。だが、ハーリスの隣にはフィルスとマークリウスが同じような格好で頭を下げていた。驚いたというよりも嬉しかった.....だが、お礼は後にして、帝王はゆっくりと口を開く。
「帝都は知っての通り、甚大な被害を被りました。犠牲者も13081人と.....相当な者の命が奪われました。でも、まだまだ、生き残った者達も沢山居るんです!二次被害はなんとしても避けたい.....そのために、帝都をより強固なものにしなければなりません。でも人手と資金がかなり足りない....無理を言っているのは重々承知で申し上げます!どうかお力ぞえ──「もうよい......もう、よい」──アリルド国王.....」
国王は席を立ち、頭を垂れる帝王、フィルス、マークリウスにそれぞれ手を差し伸べ起き上がらせる。その雰囲気からは威圧感というものは欠片も感じず、ただ美しい顔立ちの中年が微笑んでいるようであった。
「お主達の思い、しかと受け取った。国同士の貸し借りは絶大ではあるが、そんなものはちょこちょこ顔を見せて、国の近況報告や愚痴を話し合うので十分.....手を貸そう、お主の頑張りと、清く正しい者達に敬意を称してな」
これにて会談は終わりを迎えた。一週間ほどはここで滞在し、詳しい内容を話し合うのだそうで城内の空き部屋を一人一室用意してもらい、その日は疲れが溜まっていたせいか、昼間だというのに眠ってしまった。
ありがとうございました。
80話!?も、もうそんな話数に・・・・・・・・・・・・!( ̄□ ̄;)
次回は、帝王とのお散歩です!お楽しみにっ!そして、明日はお休みします(´д`|||)
すみませんm(__)m




