74話 釣りは魔法で!
よろしくお願いします。
「帝王様、また近いうちにお会い致しましょう。この町の発展を続けながらお待ちしております」
「うん、帰りにでもまた寄るとするよ~」
早朝。朝食を食べ終えて馬車へ乗り込む帝王へ頭を下げるサクリ。そんなサクリを眠そうな欠伸を吐きながら手を振る帝王は相変わらずで苦笑するフィルスも乗り込むためサクリを通りすぎて馬車へと向かう。
「フィルス殿」
「うん?あ、はい。なんでしょうか?」
通りすぎる直前に話しかけてきたサクリを見ると頭を深々と下げたままであり、顔を見せてはくれなかった。察するに向かい合わずに聞いてほしいのだろう。
フィルスは反転させた体を再び馬車へと向ける。
「貴方は不思議な方だ。子供でありながらそこまでの才と知恵をお持ちで、何より御優しい.....」
「.....」
ここで否定なんてしない。ただ、前を向きサクリの言葉を聞くフィルス。仲間たちも察してくれ、先に馬車へ乗り込んで二人の会話が終わるのを待ってくれている。
「一言目はお礼です。本当にありがとうございました」
「.....はい」
「二言目は....お気をつけください。その優しさは良い意味でも悪いことでもあります。よく言えば慈悲深い、悪く言えばお人好しです。分かっておりますでしょう?この世界の闇は深い。一回でも落ちればなにも見えなくなるでしょう。そんな者にまで手を差し伸べていればきりがありませんし、貴方自信も引き込まれかねない」
「....そう、ですね.....でも、僕はそれで誰かを救えるのなら良いと思ってます。僕は善人で悪人です。人には手を差し伸べますが、自分に差し出す手など持ち合わせていません。それで良いと思ってます。僕の体は1つで、動ける範囲も同じく一人分です。全部を救える気ではいませんし、もし、救えるのならこの身を投げ出します。では.....」
フィルスは最後に少し後ろを見ながら頭を下げ馬車へと向かった。頭を上げたサクリは少し切ない顔でフィルスを見る。
「この世界よりも.....一人の為に死ぬには些か惜しい人材だと自ら気づいてもらいたいものです」
そんな願いが届くのはいつになるやら.....そう思ってため息を吐くサクリは帝王達の馬車を笑顔で見送った──旅の安全を祈りながら。
「.....帝王様?」
「ふにゃ?ん?へ?あ、うん。な、なに?」
〈....寝てたよね!?何事もなかったかのように....まぁ、あんな時間まで起きてたら──ってか、ずっと起きてたもんね〉
そんな帝王に苦笑の笑みを浮かべるフィルス。だが、フィルスもうとうとし始める。仕方がないと言えば仕方がないのだが、何せフィルスはクエスト中.....寝るのは些かよろしくない。
だが、ノンシーの「私たちがクエストは遂行しとくから寝て良いわよ?」という言葉で不安は退き去り、睡魔を迎え入れ深い眠りに落ちた──
ポカポカ陽気であったのも関係しており夕方近くまで眠ってしまったフィルスは目を覚ますと疲れ果て船を漕ぐノンシー達を見て申し訳なさを感じる。帝王はまだ眠りについているようだ。
執事のマークリウスも眠いようで大分、眠気と戦っているようだがフィルスが目覚めて「僕が起きときますので」と言うと安心したように眠りに就いていた。
夕焼けに染まる木々は美しく、春の香りを感じるべく手動式の馬車の窓を開ける。
「うわぁー。海だ....」フィルスは感嘆の声で呟いた。
〈この世界では初めて見るな~.....どの世界でも変わらず綺麗だ〉
地球では山暮らしで海というより川へ行くことが多かった。だからなのか海は広く美しく見えたのが印象的だ。
やはりというか、この世界の海もやたら綺麗でしばらく潮風に当たって、御者さんがこの近くで一泊すると言って子供のように喜んだのは内緒である。
「.....釣りが出来る」
そう思ってにやけるフィルスを誰も知らないのはこの馬車に乗る者がまだ夢の中にいるからだろう。
馬車が停まると勢いよく飛び出したフィルスは風魔法を使って魚を釣り?続けていた....
〈今日は魚料理だ!〉
ありがとうございました。
「釣りが好きなのではありませんから!釣って、料理するのが好きなわけで・・・・・・・・僕は何も間違ったことはしてませんからね?!」
というのがフィルスの言い分です・・・・・・・




