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72話 引き付けられた二人

 今回は短めです。よろしくお願いします。

 サクリとの楽しい会話を終え教えられた場所へと向かう。

 切り倒したと言っていた場所は大きな切り株と動物を模した石が置かれており、月夜に照らされたそこはまさに幻想的なまでの美しさであった。


 『こ、ここにステファが.....っ!?』辺りを忙しなく見渡すハルナはある一点に眼を向けるとそのまま暫く固まった。


 「あれがステファ.....さん?」


 小説で読み、思い描いた通りと言っても過言ではない顔立ちであった。切り株の上に座り、片足を地面につけ、もう片方の足を切り株に乗せて風が吹く方向を細い目で眺めていた。紫色の髪は風で靡き、月夜に照らされ美しく輝き若干、口の端を持ち上げ、気付いているはずなのに、こちらを見ないその雰囲気は大人な感じがした。


 『....凄い、暑かったな.....あの日はピクニック気分で村から抜け出してここに来た.....一番、涼しくて快適だったからな』


 『うん.....そうだったね』


 ハルナは愛しの相手との再会が嬉しくて涙を流していた。それでもこちらを見ないステファは少し照れ臭いのかもしれない。

 二人の感動の再会を微笑ましく思いながらしばらく眺めていたフィルスだが、邪魔をしてはいけないとこの場を立ち去ろうと踵を返し歩き出す。


 『あっ!ふ、フィルス!』


 〈ん?あ、はい、なんでしょ?〉


 急に呼ばれてなんのことか分からないと言った感じで振り返るフィルス。するといつの間にかステファはハルナの隣にいてこちらを見つめている。


 『ありがとう.....お陰でやっと会えたわ』


 『ありがとう、ハルナはドジだから時間はかかるだろうなと思ってたけど.....お陰で数百年ですんだよ。』


 「ん?えっ、あ、はい.....お幸せに。」


 少し気になる言葉が出てきたが突っ込まず苦笑を浮かべながらそう言って一礼してからその場をあとにした。

 一方のステファ達はフィルスが見えなくなるまで手を振り徐々に淡い光を放ち始める。


 『ん?未練がなくなったようだな。』


 『えぇ.....それより!私が探し出すのに数百年以上かかると思ってたの?!』


 『フフッ、そりゃ、夫の勘ってヤツだよ。』ステファは悪戯気に笑む。


 ハルナがそれに頬を膨らませているとステファは苦笑を浮かべてハルナの頭に手を置いた。


 『まぁ、気長に待ってたってことさ』


 そこまで言うと二人は何も言わず流れるような動作で手を繋いだ....消えて行く体で互いに愛を確かめ合うように.....


 『あの世ってどんなところなのかしら?少し心配だわ』


 『あんなに死を望んでたのに、今更怖いのか?』


 『フフッ、貴方に変えられたのよ.....?死神 ステファさん?』


 そんな昔ばなしをしながらも消え行く体をしばらく眺めてからステファは空を見上げた。月が綺麗で、雲は流れが早い.....心地よい風に癒されることなどはもうできず、ただ、髪が揺れる。


 『大丈夫。俺が守るから──』


 『うん、頼りにしてる。ステファ──』


 どちらともでもなく、引力で引き寄せられたように互いの唇を重ねる二人。

 その直後に吹いた風と共に二人は姿を消していた──



 フィルスは帰り道。もう街灯も弱々しくなった町を歩いていると正面から歩いてくる気配に気がついた。薄暗くてよく見えないが、それは自分と背が同じくらいで、だが、その雰囲気はピリピリしており威圧感を漂わせる。


 「フィルス....話してくれるよね?あの老人が──誰なのかを」

 「.....え?」

 ありがとうございました。

 この人物が誰かは何となく分かるでしょうが!次回に持ち越しです!お楽しみにっ!

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