64話 ミルクレープ!
よろしくお願いします。
「はぁ~.....美味しかったよ~!フィルス!」
「お口に合って何よりです。」
「ふむ、ワシの弟子にしてはなかなかの物であったぞ!」
「.....」
[む?無視か?]
〈いえ、面倒なので聞こえない振りを.....というか、貴方に教わった訳ではありませんからね?〉
[良いんじゃよ!そんな細かいことは気にせんで.....]
〈細かくないですよっ!僕がどれだけ苦労して作ったと思ってるんですか!?.....これからデザートも作らなくちゃいけないのに.....〉
夕食も終わり、次は皆の本命であるデザートの時間だ。フィルスは疲労感にため息を吐きながらデザートを作りに再び厨房へと向かう。
角を曲がるくらいで目の前に気配を感じ少し後ずさった直後に町長が曲がり角を曲がってきたので会釈した。
「ん?.....おお!フィルス殿か!」
「えぇ、こんばんは.....こんな時間に呼び出しですか?」
「うむ、そうみたいですな.....クレプーなるものを一緒に食べないか?との帝王様からのお誘いがありましてな.....」
「.....」
〈あのバカ帝王!人の気も知らないで何、人増やしてんの!?で、でも、こういう付き合いは大事なんだろうな~.....帝王様にとっても、町長にとっても.....〉
町長は運が良ければ帝王に気に入られるし、帝王はこの町が発展したときに優先して貿易を行える可能性があるのだ。仕方がないと言えば仕方がない......だが、フィルスが巻き込まれる道理もないのだが、そこはお人好しのフィルス。ため息を吐きながらもトボトボ足で厨房へと再び向かった。着いてみると厨房には鎧を脱ぎ去り皿洗いをする近衛兵達の姿があった。係りごとに別れていたり、テキパキ動く様子を見て初めてではないことを悟り、近衛兵も大変なのだと少し勇気を貰うフィルス。すると近衛兵達はフィルスに気づいたようで微笑みを浮かべながら会釈をしてくる。
「.....皆さんも大変ですね.....」
「まぁ、我々は護衛もそこそこで良いのでこんなことしかお役に立てないんですよ.....なんたって、我々より帝王様の方がお強いのですからね.....」
「それに、そんな帝王様よりも強い護衛がついたとなれば、俺達の出番はほぼほぼゼロなんだよ。」
「うっ.....なんか、すみません.....」
出番があるのは忙しくて疲れる.....だが、それ以上に出番がないのに付いて回らなければならない近衛兵達は精神面で疲れるし、後ろめたさも出る。故に、皿洗いという雑用をして少しでも役に立ちたいのだろう。
この人達の分は必ず作ろうと心の中で誓いながら調理へと取りかかる。先ずは何時もの材料でクレプーの生地を焼いていく。甘い香りが厨房に広がり、まだ消えていないカレーの香りと重なり、若干気持ち悪い....だが、そこは気にせず十枚以上の生地を並べていく。
いつの間にか皿洗いが終わった近衛兵達に見守られながらの作業だったので若干のやりにくさを感じながら生クリームを生地の上に敷いてまたその上に果物を乗せて巻けば出来上がりだ。
「.....作りすぎちゃったな~.....」
近衛兵の分を含めても作りすぎた生地の量に思案するフィルス。別にアイテムバッグの中に入れれば日持ちするのでいつでも食べるのに便利なのだが、それでも多い。4、50枚は作ったのではないだろうか?なんとなく何時もより多めに作ったのが仇となってしまったようだ。
「.....アレ作ってみようかな.....」
先ずは近衛兵達にクレプーを持っていってもらい、作業に取りかかるフィルス。生地の上に生クリームを敷き、その上に生地を乗せてまた生クリームを敷く.....これを何回か続けて、最後にドデカイ生地を上から被せれば完成だ.....
「出来た!ミルクレープ!」
その料理は近衛兵達に渡して「お疲れさまです。これ....試作なのでどうぞ.....」と言って厨房を後にしたフィルスを眩しいものでも見るように目を細めて見つめる近衛兵達.....次の日から近衛兵達がやたらに話しかけてくるようになったこを不思議に思うフィルスなのであった.....
ありがとうございました。
自分で書いてるときに、ミルクレープってどんなのだっけな?って画像を検索して滅茶苦茶お腹が減りました・・・・・・・・食べ物の画像は天敵ですΣ( ̄皿 ̄;;
 




