61話 完成と真のパートナー?
よろしくお願いします。
.....もう、全カットである.....何故って?ミスりにミスってしまい、気づけば夕食の時間ほどになってやっとのことで完成に漕ぎ着けた訳で、凄絶且つグダグタな料理の数々を積み上げた調理場は焦げ臭さや生臭さが蹂躙する、まさに地獄のような異臭のする空間であった。
「......失敗したの.....?」
「.....」
闘志尽きたと言わんばかりに厨房の椅子にへたれ込むフィルスに呆れた眼差しを送りながら失敗だと悟るノンシー。だが、フィルスは力尽きた腕を震わせながら持ち上げ、一つの鍋を指差す。どれもこれもが異色で不気味で失敗作だと思っていた。勿論、フィルスが指差したのもそこまで美味しそうな色には見えない。だって.....茶色なのだから.....
「.....何?一番の悲惨作?」
「違うよ!それがカレーだよ!」
【......えっ?こ、これを食べるの.....?】
【.....変な.....色.....】
〈皆、成功作にケチつけるなんて.....!折角、頑張って作ったのに!〉
フィルスは疲労から苛立ちを露にしながら改めて出来上がったカレーの鍋を見つめる。色的には大分、カレーでは無いだろうか?ここでは色々な臭いが混じり鼻が機能しないので匂い的な面ではまだはっきりとは分からない。試しにいつまでも寛ぎ続けるカーストの部屋へと入り、匂いを確認する。蓋を開けると共に広がる匂いはスパイシーで食欲を掻き立てるいい香りであった。
「おぉ!これがカレーと言うものか!ブラフマーとは仲良くしておらぬからな.....一度も食べたことは無かったのだが.....やっと、この世界も向こうの文化に追い付いてきたな!」
「.....ぶ、ブラフマー.....またひょっこりでてくる爆弾発言ですね.....」
〈た、確か、インドの創造神だったよね.....う、う~ん.....凄い、そう考えるとこの場に居る創造神がどれ程凄い人で、人界にいてはいけない人なのかが分かるよ.....〉
[そんなケチ臭いこと言うでないわい.....創造神かて、心はあるし、考え方は違うからの.....ワシは愛する我が子を近くで見守りたいだけじゃわい......それにっ!こうして料理を振る舞って貰えるしの!]
「.....」
相変わらずというかなんというか.....能天気な創造神に呆れながらため息を吐くフィルス。だが、カーストの愛する我が子と言うのが自分の事でもあることがちょっぴり嬉しくて苦笑してから異臭の漂う厨房へと去っていった。
そんな愛する我が子の背中をのんびりと茶を飲みながら見送り再び呼びに来てくれるであろうフィルスを待つことにしよう.....としたが部屋の扉は乱暴に蹴り倒され、瓦礫から舞い上がる砂埃から一つの影が現れた。
「......や、やぁ.....は、はや、速かったの~.....ラファエル.....」
「カ・ー・ス・ト様!!!!」
「ひ、ひぃ!?」
とてつもない怒気を含んだ口調と魔力に震え上がるカースト。ラファエルはカーストの直属の部下で大天使である。その知恵と力を見込まれてカーストから自分の従者にならないかと尋ねられ、断れるわけも断るわけもなく今はカーストの仕事を手助けする位置にある。
「速かったの~.....じゃ、ないですよ!!何を考えておられるのですか?!人間には姿を見せないのが天界の者としての決まりだと仰っていたのは貴方でしょう?!!」
「そ、それは.....そうなんじゃがな.....?ワシにはフィルスを見守ると言うアメノミナカヌシノカミからの頼みが.....「そんなもの天界から見守れば良いでしょうが!!なんのための千里眼ですか?!」.....千里眼なんて無くなれば良いものを.....」
騒がしい音を聞き付け駆けつけたフィルスはそのカーストの言葉に呆れる。しかし何故、長であるはずのカーストが尻餅をつき怯えているのか分かりかねなかったので先ずは割り込んでみる。
「あ、あの~......ど、どうかされましたか?」
「ん?おお!フィルス!丁度良いところに.....!助けてくれ!!」
「.....ま、まぁ.....あの方は放っておいて、あの~.....どちら様ですかね?」
「こりゃ!ワシを放っておくとはどう言うことじゃ!ワシを......誰だ......」
〈ど、どうしたんだろうか?.....この冷徹な瞳の男性が振り返った瞬間に凍ったよ.....何?こわっ.....〉
[こ、こやつを怒らせると鬼じゃからな?絶対に怒らせるでないぞ.....とは、言っても、もうカンカンではあるのじゃがな.....]
〈何してるんですか?!!もう、怒らせてるじゃないですか!!と、取り敢えず話を.....〉
そう思って再び話しかけようと口を開いたフィルスだが、その前にラファエルがこちらに向き直り口を開く。
「お主が、どんなにこの世界にとって重要なものかは分からぬが、馴れ合うつもりはない.....!大天使である私に気安く話しかけるな.....!」
「おい!ラファエル!そんな言い方をするもので.....は.....すみません!!」
〈はやっ!?折れるの早すぎますよ!!創造神でしょうが!〉
[あやつ怖すぎる!睨まれてるだけで殺されそうに感じるのだぞ?!そんなのに逆らえるわけがないじゃろが!!]
〈じゃあ、なんで怒らせるようなことをしたんですか?!ってか、なんでこの方はこんなに怒ってるんですか?!〉
[.....わ、ワシが抜け出したのが分かったようじゃな......ちゃんと影武者を置いていったのじゃがな.....]
フィルスは完全に理解した.....カーストが完璧に悪いと.....だからといって、こんな縮こまる創造神は見るに耐えないので宥める方法を色々と考えて実践してみる。
「あ、あの~.....「私の言ったことが分からぬか.....?話しかけるなと言ったのだ!次、話しかけてくればその首....貰っていくぞ?」は、はい!?す、すみませんでした!!」
[お主も早いではないか!高々、首を切ると言われただけじゃろが!]
〈いや、そんなことって.....言っときますけど!首がなくなれば死にますからね?!〉
結局、フィルスはここで脱落だ.....一言も喋ることが許されないからだ。するとこのタイミングでサティウスがのんびりやってくる。お腹が空いたのでフィルスを呼びに来たのだろう。
【フィルス~!なにやってるんだよ~.....ご飯食べ.....よっ?よよよよよ!ラファエルじゃないか!!久し振りだね~.....】
「ん?.....さ、サティウス様!お久し振りでございます.....相変わらずのお姿に私、安心致しました.....ですが、魔力の弱まりを感知できますが.....?」
【さっすが!ラファエルは気づくのが早いね~.....まっ!契約精霊になったからね~.....魔力は今までの半分もないよ。】
「さ、左様にございましたか.....っと言うことは.....真のパートナーをお見つけになられたのですね?」
【そっ!そんでそれがフィルスだよ~!】
〈真のパートナー?何それ?初めて聞いたけど.....?〉
[まぁ、契約とは精霊から言わせてみれば一生の付き合いで死ぬときも一緒なのだ.....夫婦と言っても過言ではないからの。]
〈えっ!で、でもサティウス男でしょ??僕も男ですけど.....?な、なんか嫌だな~.....〉
真のパートナーという言葉に照れながらフィルスを紹介するサティウスは可愛らしいが......人間のフィルスは少し違和感と嫌悪感を感じながら長々と旅の話を続けるフィルスとそれを微笑ましそうに見守るラファエルをただ見つめるだけであった.....
ありがとうございました。
本当は作業風景をもうちょっと書きたかったのですが、他にも書きたいことが一杯なので・・・・・・・えっ?り、料理をそこまで作ったことが無いからとかじゃないですからね?!ほ、ホントですよ??




