56話 聞き覚えのある声
よろしくお願いします。
「さっ!材料は整ったね!あとは調理場と調理器具だけど.....」
〈だ、大丈夫かな.....?帝王様、のんびり屋さんだからまだ用意できていない可能性も......〉
ハムチェ以外の材料も買い、あとは調理に取りかかるだけとなったが、不安がまだ残っている。帝王は一国の王であるといってもまだほんの10歳でしかも面倒くさがり屋であるためちゃんと用意してくれているのか心配である。だが、それはいい意味で裏切られた........
「ただいま戻りました......」
「遅い!遅いよフィルス!折角、張り切って全部用意したのにさっ!」
「........これをもっと違うところで活用できれば良いのですかね......」
集合場所である宿屋へと向かうと帝王が仁王立ちで立っていた。どうやら器具も場所も揃っているようで安心する半面、執事のマークリウスが不憫に思えて苦笑してしまう。
「えっと.....じゃあ、早速調理場へ案内してくれますか?少し、試作も兼ねて作ってみたいものがあるので.....」
「おっ!フィルスもやる気だね!良いよ、良いよっ!どんどん使ってよ!マークリウス!」
「はぁ~......えっ?あ、はい......こちらです.....」
「......マークリウスさんも大変ですね.....」
「うぅ.....分かっていただけますか?光栄です.....」
〈う、うん......苦労が目に見えて分かるよ......ため息吐きまくりだもんね.....〉
向かっている間もマークリウスを不憫に感じながら作る料理のイメージを膨らませていくが途中で何かが足りないことを思い出す。
「あっ!......こ、米がない.....」
「コメ?何それ?美味しいの?」
【コメ......あ~!カースト様が食べたいって言ってた食べ物だね。なんでもニホンってところの料理だとかなんとか.....】
〈えっ?か、カースト?あっ!そ、創造神様じゃないか!な、なんで創造神様なんかが......?〉
[いや~......異界の神と交流を深めておったらコメと言うものを食べさせて貰っての~......あれは旨かったぞ!]
「へ~......やっぱり、誰が食べても美味しいんですね。」
「?フィルス?どうしたの.....?」
「ん?何が?」
無意識である。と言うか誰と喋っていたのか分かってすらいない。ノンシーは独り言を呟くフィルスに訝しげな視線を向けるが当の本人は訳が分からないと首を傾げている。
「い、いや、独り言を呟いてたからどうしたのかなぁ~って思って......」
「へっ?いや、何いってるの.....?老人と会話を.....ん?誰と喋ってたんだろ?」
自分が誰と喋っていたのか分からないことにやっとのことで気づいて辺りを見渡す。しゃべり方的に該当する人はゼロで自分達以外に通行人もいない。何故なら貸しきりだから......
「......えっ?こわっ!老人に話しかけられたのに.....」
「や、やめてよ!そんな不吉なこと言うのは......!」
[不吉とは......なかなか傷つくの......]
「ま、まぁまぁ、彼女も怖がっていっただけで......ん?」
〈や、やっぱり、老人の声が聞こえる......気のせいかな.....?〉
[気のせいならここまでの会話は成り立たんじゃろ......]
〈ハハッ、確かに......って!?ど、どちら様ですか!?〉
[ハッハッハ!やっとのことで気づきおったか!初めて見る魔法じゃろ?そうなんじゃろ?]
〈えっ?あ、はい......そんなことより!どちら様ですか!〉
[なんじゃ、さっき話題に上がっておったというのに.....それに!一度会っておろうが!]
〈い、一度あってる.......?ど、何処かで聞いたことのある昔っぽいしゃべり方なんだけど......や、やっぱり、そういうことだよね.....?あの人......いや、あの方なんですよね.....?〉
突如として思い返される記憶が正しければ、もう少し畏まったしゃべり方でなければ無礼にあたるだろう......闇の神 カーストなのだとしたら......
ありがとうございました。
なんと!闇の神であるカーストがフィルスに話しかけてきました!その内容とは?!お楽しみにっ!
 




