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55話 折り合い?

 よろしくお願いします。

 「ハムチェ?......そうねぇ.....あっ!《ククリックのお店》ならあったと思うし、美味しいわよ。」

 「ククリックのお店.....それって何処にありますか?」


 ハムチェを探すため聞き込みをしていたが、呆気ないことに最初の女性が知っていたようでお店の名前を聞き出せた。取り敢えずそのお店に行ってみようと思い場所を聞いてみる。すると女性は困った顔をしてフィルス達の後ろを指差す。


 「......あなた達の後ろ......だけど?」

 「......へっ?......あ~.....成る程........ありがとうございました!」


 〈いや、知らなかったからね?!マジで分からずに聞いただけだし、めくらでもないからね!〉


 フィルスは心のなかでそう言い訳をしながら女性と別れる。ノンシー達も分からなかった自分が恥ずかしいのか少し俯いた状態でフィルスの後ろを歩いてくる。

 外観的には他の店と変わりはないのだが、中からは香辛料の匂いが駄々漏れで匂うだけで体が暑くなる感覚がする。


 「これを気づかなかったんだね.......」

 【ホントだよね~......もう!フィルス、鼻が悪いんだから~っ!】

 「......えっ?いや、僕だけのせいじゃないでしょ?!サティウスだって気づいてなかったじゃないか!」

 【......私は......気づかなかった.....】

 「......私も分からなかったわ.....」

 【なっ!?み、皆裏切ったな?!ふ、ふ~んだ!僕は気づいてたもんねっ!誰がなんと言おうと気づいてたもんんんんんん!】


 〈いつにも増して自棄やけになってるね.....なんか......微笑ましいよ......〉


 自棄になり、そっぽを向くサティウスに呆れた眼差しで苦笑するフィルス。しばらくサティウスはそっとしとくとして早速中へと入る。カレーのような匂いやバジルのような匂いも混ざりあってなんとも良い匂いである。中は然程広くなく、テーブルや棚などが並べられており、その上に数々の品が揃えられている。


 「へい!いらっしゃい!んあ?子供.......冷やかしなら帰ってくれ。」


 どうやって感知したのか、フィルス達が中へ入ると小さな子供?であろうか......?身長140センチメートル程の女性がニコニコの笑顔でカウンターの奥から走ってきたが子供だと分かると途端に興味を無くしたように門前払いしてきた。

 そんな店員女性の言葉を無視してフィルスは棚に置かれた調味料をいじり始める。この店にはハーブの種類が豊富なようで基本的な物から見たことのない物まで置いてあり、料理好きのフィルスは興味をそそられた。


 「.....ねぇ?聞こえたか?ひ・や・か・しならか・え・れっ!って言ったんだぞ!」

 「このバジルはシナモンバジルですか?なかなか良い香りがしますね......あっ!これはレモンバジルですか?鳥料理に使うのが大好きなバジルなんですよ!ほのかな柑橘の香りが爽やかさを与えてくれてさっぱり食べられますからね!」

 「おっ!分かってるね~!だけど他にもうちにしか売ってないのもあるからね!見ていくと良いよ!」

 「おお!ありがとうございます!」

 「......クロってハーブとかバジルとか違いわかる?」

 【......同じ草.......】

 「だ、だよね.....私にもそれくらいしか分からないわ.....」


 何だかんだで入店を許可され、店員と色々なハーブを見て回るフィルスを呆れた眼差しで見つめるノンシーとクロ。ちなみにサティウスはフィルスの頭の上で寝ている。


 「あっ!忘れてた......ククリックさん!今日はハムチェを探しに来たんですけど......ありますかね?」

 「おっ!ハムチェね!......確か、今日出来上がってたのがあったはずだから......待ってな!取ってきてやるよ!」

 「えぇ、お願いします。」


 この女性店員はなんとククリックだったという。つまりは店主と言うことだ。突然思い出したフィルスはハムチェが無いか恐る恐る聞いてみると店員改めククリックは大きく首を縦に振ってカウンターの奥へと消えていった。暫くハーブを見ながら待っていると鉄製の盥を重そうにククリックが運んできてカウンターに背伸びをしながら大きな音を立てて置く。


 「ふ~.....お望みのハムチェだぞ!どれくらい欲しいんだ?」

 「う~ん.......じゃあ取り敢えず、100グラムください。それから.......ハーブのこれとあれとあれと......」

 

 ハムチェだけでなくハーブまで買っているフィルスをやれやれといった表情で見つめるノンシーとクロ。指差した品をどんどん回収して回りながらホクホク顔のククリックはカウンターに品々を並べ終えると羊皮紙に値段を書いてフィルスに見せる。


 「んじゃあ、全部合わせて銀貨20枚でどうだ?」

 「はい、良いですよ。」

 「え~!やっぱ、そうだよな......へ?良いの?」

 「?はい......良いですけど......?」


 〈あれかな?値段の交渉とかあると思ったのかな??残念ながら僕はお金に詳しくありませ~ん.....〉


 キョトン顔のククリックに首を縦に振るフィルス。もう少し負けて貰いたい気もするが、値段が決まっているのに負けるのはなんか.......嫌なのだ。


 「い、いや、もうちょっと負けても良いんだぞ?」

 「へ?だってこの値段は決まってるものなんでしょ?......なら負けてもらう訳にはいきませんよ。」

 「えっ?あ、うん.....それはそうなんだが.....あー!もう!!分かったよ!負けてやるよ!」

 「うん?いや、負けなくても良いと......「良いんだよ!料理にうちのハーブ役立ててくれるのは嬉しいことじゃねぇか!ちょっとだけ負けてやるよ!」......あ、ありがとうございます.....?」


 〈あ、あれ?なんか僕から負けるように言った感じになってるけど......僕は何も言ってないからね?!〉


 負けたとばかりに悔しそうな顔をするククリックに少し押される形で値引きを引き受けると、店員であるククリックが満足そうで客であるフィルスが腑に落ちないという可笑しな状況でもう一度提示された銀貨15枚で折り合い?をつけククリックの店を後にしたフィルス達であった。

 ありがとうございました。

 次回はクレプー作り!そして、今回は2話投稿と言っていたのですが・・・・・・・・(;´∀`)

 私、急用が入りまして・・・・・・・・あ、明日・・・・・の投稿となりそうです・・・・・・・すみません!

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