53話 ある罪
よろしくお願いします。
「......キムチとかって何処で売ってるんだろ?」
「きむち?何それ?美味しいの?」
〈あ~......成る程。この世界にキムチは無いか、名前が違うかなんだね......う、う~ん.....それだと探すのが難しいね.....〉
腕を組み、思案顔で考え込むフィルス。だが、これといって案も出なかったので散策をすることにする。まだ午後前半なのだが間色には間に合いそうになく、晩御飯のデザートとしてクレプーを食べることになりそうだ。
「う~ん......辛い調味料とか無いの?」
「そうね......代表的なのでタバスコとかあと、野菜に染み込ませて食べるハムチェとかかしら.....?あと、唐辛子ね。」
「ふ~.......ん?えっ?ハムチェ?」
思い出すような顔で代表的な辛し調味料の中に聞きなれない言葉だが、製法が何処と無く何かに似ている物をフィルスは聞き返す。いや聞きなれないだけで聞き覚えはある....確か朝鮮語だ。
〈な、なんだっけな......確かハムチェって......キムチじゃなかったっけ?〉
そう、ハムチェはキムチの語源となった1つと言われている。他にもチムチやチムチェが語源だという説もあるが一般的にはチムチェがそうだと言われている。
「じゃあ、そのキ.......じゃなくてハムチェは市場とかで売られてるの?」
「さぁ?.....私、買い物なんかしたことないし.....辛いの苦手だから気にもしないし......」
〈考えが子供か!?い、いや、子供か.......まだ10歳だもんね.....〉
精神年齢21歳のフィルスは突っ込みを自分で返して納得している。だが、言われてみれば分からなくて当たり前だ。貴族は買い物などしない。食べ物は全てメイド等がするし、ショッピング街道と市場は真逆と言っていいほど離れており、行く機会など微塵もなかっただろう。冒険者になってからも食べ物は全てフィルスが作ってくれたし、材料は宿屋にある物を買っただけなのでどう頑張っても市場へ行くことは出来なかったのだ。
「ま、まぁ、市場に行けば何かあると思うけどね.....」
【クレプー!早く食べたいな~......】
【辛いの.......楽しみ.....】
〈そ、そんなに辛いのが良いんだね.......僕にはその気持ちが分かんないや.....〉
フィルスは別に辛いものが苦手ではない.....だが、好きでもない。舌が痛くなったり、汗をかいたりするのはあまり好きとは言えないが、美味しいので食べれないこともないといった感じだ。
サティウスは相変わらず、フィルスの頭の上で寛ぎながらクレプーを連呼している。クロも辛いクレプーが食べれるとあって真顔の顔で少し口角を上げている。
「僕達、材料を買ってくるんですけど帝王様はどうしますか?」
「うん?......そ~だね~......調理場の確保も必要だからフィルス達だけで行ってきなよ~.....」
「そ、そうですか.....ちなみに、帝王様は何をするんですか?」
「ここでのんびり昼寝でも.......じゃなくて!調理器具も必要だしねっ!僕も帝王としての責務があるから!」
「「【【.......】】」」
〈ね、寝るつもりだったな......良かった.....聞いておいて正解だったよ.....〉
いつまでもだらしない帝王に呆れた視線を向けながらため息を吐くフィルス達。綺麗な町長の家を後にしてこの町の市場がある《フラワー通り》という場所へと足を進めた。
道中で見かける人達は皆、この自然と融合した町並みを絶賛しており、この町がどれ程栄えているのかが伺えた。風も心地よく降り注ぐ日差しも心なしか優しく感じる.....そんな穏やかな気持ちで向かっているフィルスは再び居なくなった町長の事を思い出す。
まだまだ完成していない建物がチラホラとあり、金槌を叩く音が鳴り止まない。恐らくこの中の何処かに町長も混じっているのだろう。
「......町長って大変なんだね......」
【いや、あの人位だよ?町長なのに建築に携わってるなんて.....】
「あ、あぁ......やっぱり、そうなんだ.....」
「この町が好きなんでしょうね.......あんなに頑張ってるんだもの......」
〈うん、確かに.....頑張りすぎて腰痛めてたもんな~.....〉
話が噛み合わない変な老人ではあったが、町を一途に思い栄えさせようと必死で働いている.......そんな町長は誰の目にも良い人だろう。だからこそ信じられなかった.......町長が犯しているある罪が......
ありがとうございました。
気になる終わり方でしたね!さぁ!真面目で町思いの町長が犯しているある罪とはなんなのでしょうか!その前に!クレプー作りです(。>д<)




