52話 産みの親
よろしくお願いします。
何処かで見たことのある話が噛み合わない老人はフィルス達と目が合うと少しだけ驚いた顔をして、にっこりと微笑んだ。
「これは、これは!あの時の親切な若者ではないか!」
「ど、どうも......お久しぶりです......」
気づかれたなら挨拶しないわけにはいかない......フィルスは相手が見える程度まで頭を下げて挨拶を交わす。ノンシーはそれに続くように頭を下げるだけで、この老人と話す気は無いようだ。
「.......町長とフィルス様ご一行はお知り合いですか?」
「い、いや.....知り合いというか、なんというか.....」
「ワシが重そうな荷物を運んでいるように見えたようでな。態々話しかけてきてくれたのだよ。」
「へぇ~......フィルスはお人好しなんだね~......」
【誰にでも認められるお人好しだね~......】
「......褒められてる気がしない.....」
帝王にまでお人好しと言われるフィルス。お人好しは言葉としては良い風に聞こえるが、意味からすると、頼みを断れない人、優柔不断、人間が甘い等々あまりよろしくない意味で使われる言葉だ。だが、それを否定できないのはやはりそういった頼み事を断れる気がしないからであろう。
「それより、おじいさんが町長だったんですね。」
「おお!そうじゃとも!ワシが昔から夢見ておった眩いほどに綺麗な町がやっとここまできたのじゃよ!
それから、ワシの名は《サクリ・リーザス》じゃよ。」
〈あっ!話が噛み合った!......いや、この驚きは失礼か......ずっと話が噛み合わないわけはないだろうからね.....〉
もう少しで声にも出しそうだった話がやっとのことで噛み合った事に驚くフィルスはその自分の驚きに突っ込みをいれる。老人改め、サクリはまだ腰が痛むのかひっきりなしに腰に手を当てたり叩いたりしている。
フィルスはそんな辛そうなサクリに近づき腰に手を当て、回復魔法をかける。無属性の回復魔法は傷、痣等は応急処置ではあるが治せる。だが、精霊属性はそれの比ではない回復量を持っており、傷、痣、筋肉や骨の痛み等に効果があり、病院である教会で診てもらうより余程治りが早いし的確だ。
「精霊魔法《精霊の雫》」
「っ!?な、なんと!一瞬にして傷の痛みが......!」
「えっ?精霊属性って腰の痛みにも効くの?!」
「うん?サティウス.....逆に効かない回復魔法とかあるの?」
【うん、普通は効かないよ~......人間が持てるのは無属性だからね~傷や痣の応急処置にしか使えないんだよ。】
〈な、成る程.......応急処置だからあまりこの世界で回復魔法は重宝されていないのか.....えっ?じ、じゃあ、可笑しな事しちゃったかな......?〉
エルフは傷の治りが早いと言われていた。だが、それは細胞の問題で人間には関係のないことだと思われてきた......だから人間はエルフを倒すことに躊躇いはなく、ここまで壊滅的に追い込んだ。だが、それは間違っていた......エルフは回復力に長けているのではない。回復魔法に長けていたのだ。秘密主義な種族だったので余計に分からなかったことと言えるだろう。
「......そんなに精霊属性が凄いなんて......ちっ!エルフ達と渡り合っていた帝王達が恨めしいよ.....」
「これを早く知っておけば、エルフとの交流で突破口が見えたかも知れませんね......」
【......今更だよ......魔法がなければ仲良くできないなんて、それはそれで可笑しな関係しか築けない.....】
「......サティウス......」
少し沈んだ顔をするサティウスの気持ちが少し分かる気がする。分かるといっても悲しみや、苦しみが分かるわけではない。ただ、何故悲しい顔をしているのかが分かる気がするのだ。サティウスは精霊、妖精、小妖精の産みの親。その契約者は主にエルフであった。契約した精霊や妖精は契約主の魔力を糧に成長していく。契約主の魔力が減れば元気はなくなるし、逆に増えれば成長は続いていく.......つまりは、契約主が死ねば同時に契約精霊は死ぬ.....沢山のエルフが死んだと言うことは沢山の精霊や妖精も死んだと言うこと.....産みの親としては胸の痛い話だろう。
【フィルスは、さ.....エルフのことどう思ってるの......?いつも威張ってて、救援にも答えなくて、でも自分達は救援をよこせと上からものを言うエルフを......?】
「.........わかんな~いよっ!」
【......え?】
フィルスはサティウスの寂しげな声で尋ねてきた言葉におどけた感じで答える。サティウスはそんないつもは見せないフィルスの態度に驚いているようで目を見開いて首を傾げている。
「だって、僕はエルフなんて見たことないし、話したことないもんっ!誰かが決めた人格のエルフじゃ僕がどう思うかなんて決めれないよ。」
【.......もし......もし、エルフに出会えて、そのエルフが皆が言うような人格だとしたらどうする.....?】
「......助ける......かな?」
【.......たす......ける?】
相変わらず暗いサティウスに少し考えながら率直に話すフィルス。助けるという言葉に再び訳が分からないと首を傾げるサティウスにフィルスは微笑みを浮かべて口を開く。
「僕はこの世界を救うって約束したんだ......もし、そんなに威張ってるエルフがいるのならきっと苦しんでる.....それを救ってあげることも世界を救う事だと思うから......」
【.......】
人は誰かに同意を求め、生物は何かと共に生きる......感情がある限り寂しさは消えない。それでも一人でいる一匹狼は弱ってて、でも誰かと居るのが怖くて.....でも寂しくて......そんな矛盾を抱えて生きている。
それを救い出すためには側に居てあげる他に方法などありはしない。誰も寄り添ってくれないなら自分が寄り添ってあげればいい......それも世界を救う事だと思うから.....
「っ!?さ、サティウス?!ど、どうしたの?体調悪いの?」
【っ!?い、いや、なんでもないよ......目に埃が入っちゃって......】
フィルスの言葉は産みの親を安心させるに値する言葉で、自然と涙が溢れた。そして、そんな契約主と出会えた自分はラッキーだと出会えた奇跡に感謝するサティウスであった。
ありがとうございました。
エルフが絶滅しかかっている理由の一つに触れてもらいました。如何だったでしょうか?自分勝手な人って困りますよね!(自分もですが・・・)
次回はクレプー作りになるかと思います!お楽しみにっ!




