49話 怠け者
よろしくお願いします。
「いや~......凄かったな~.......なんて魔法なの?あと、精霊が見えるってホント?」
「帝王様!落ち着いてください!......で?どうなのですか?まさか、答えられないとかはないですよね......?」
馬車は再び走り始め王都へ向かっている。先程の魔法のせいで帝王は興奮し、執事であるマークリウスは訝しげな視線を向ける。恐らく、エルフをあまり好ましく思っていないのだろう。
「じゃあ、順を追って説明しますね....先ず、僕は産まれてから何故か精霊と契約を交わしていました.....っと、言っても契約自体は凄く簡単なので契約していても可笑しくは無いのですが........」
「契約が........簡単?」
〈うん、でしょうね.......僕も初めてサティウスに契約方法を教えてもらったときは冗談言ってると思ったもん.....〉
マークリウスの信じがたいと言いたげな表情に苦笑するフィルス。精霊との契約はノンシーとクロがしていた通り簡単である。寝ている間に妖精が精霊の魔力を周りに流して頬に触れれば完了........つまり、妖精の気まぐれで契約は出来るのだ。
ならば何故、人間で精霊属性持ちが少ないのかと言うと、エルフが居るからだ。エルフは妖精と同じ精霊属性持ちで幼い頃から妖精が目視できる。そうすると、自然と妖精達は面白がって付いていくし、契約を交わそうとする。それに、妖精自体が自然を壊す人間をあまり好まないので契約を交わすことは難しいのだ。
「へぇ~......自然破壊ね~.......ならさ、なんでフィルスには契約を交わしたのかな?」
「あ~......それは本人に聞いてもらえば良いかと......」
【あっ!放り投げたな!?.......まぁ、仕方がないから僕が説明するよ.......】
〈ご、ごめんね.......だって、創造神様のことは話せないし、契約してきたのはサティウスだし......〉
説明を放り投げてサティウスにパスしたらサティウスが一瞬怒った顔をしたが、直ぐにため息を吐きながら了承してくれた。そんなサティウスに苦笑しながら精霊の魔力を馬車全体に流し込む。この馬車は左右にある扉から出入りする型なので今は密封状態.......精霊の魔力は直ぐに部屋の隅々まで行き渡り帝王やマークリウスがサティウスとクロを目視できるようになった。
「こ、これが.......妖精......?」
【まぁ、クロはまだ小妖精だけどね~......】
【......細かいことは......気にしない......】
「うお~......喋ってるね......」
怯えた声をあげるマークリウスとは対照的に帝王はいつもののんびり口調でのほほんとしている。初めて見る妖精はそれほど珍しいのか、色んな角度から見ているマークリウスは放っておいて話を続けるために口を開く。
「ま、まぁ、兎に角聞くならサティウスに......」
「じゃあ、君がサティウス君かな?僕は帝王のハーリスだよ~.......よろしくねっ。」
【うんうん、こちらこそよろしくね~........】
「っ!?き、貴様!帝王様に向かってなんたる口の聞き方!」
【いや、僕は精霊で君達は人間でしょ?尊敬する相手が違うからね~......】
「そうだよ、人間が敬うものと精霊が敬うものが違っても不思議じゃないし、逆に当たり前だよ。」
「そ、そうですね.......失礼いたしました。」
サティウスに論破され、そこに帝王からの攻撃もあり力なく謝罪の言葉を述べたマークリウスに苦笑するフィルスとノンシー。
それにしても.......帝王とサティウスのしゃべり方が似ているのが気になって仕方がない。同じ、だらけもの同士だから口調が同じなのだろうか.......?
「あっ!そんなことより、どうしてサティウスと契約したの~?」
【う~ん......難しい質問だね~......僕から言わしてみれば直感としか言い様がないからね~。】
〈こ、こいつ......放り投げたな!?説明が面倒だから何となくで誤魔化したよね?絶対......〉
サティウスは何となくというのが理由だと言って説明を放棄した。そんなサティウスに突っ込みたい気持ちをぐっと押さえるフィルス。だが、やはり同じだらけものだからだろうか......?納得したようだ......何処に納得する要素があったのかは分からないが、それはそれで良い......のかな?
「うん、まぁ、そう言うことですね.......っで、ノンシーは僕が仲介してクロと契約したので特に疑問点はない.....ですよね?」
「フムフム.......確かにないね。」
【はぁ~......飛ぶの疲れた.....フィルス~......肩に乗せて~......】
「いや、自分で乗ってよ.....」
〈だらしないな~.......まぁ、サティウスらしいから良いかな......?いや、良くはないか......うん、良くはないね.....
結論的に良くはないとなったが、フカフカの椅子の上で駄々をこねているので仕方なく肩に乗せてあげる。するとうつ伏せで溶けるかと思うほどにだらけているサティウスに全員で苦笑する。
「そっか~......妖精ね~.....僕も欲しいけど、まだやらなくちゃいけないことが山積みなんだよね~......面倒だけどさ~......」
「国民の前でそんなだらけたことを言わないでください。王家の品位が疑われます。」
「ま、まぁまぁ......僕たちはこんなに優しい帝王様で安心してますよ。」
【優しいっていうより面倒くさがりやだけどね~。】
〈それは、サティウスも言えないでしょうが!?まったく.....でも、なんでこんなにも面倒くさがりやなんだろ?.....まぁ、聞かないけどね.....?〉
帝王なのに面倒くさがりやなのは気になるが、そんなに突っ込んで良い事でもないと思うから聞かないでおくことにする。
だから、知らなかった........帝王の笑顔の裏にある悲しい過去を.......
ありがとうございました。
帝王は悲しんでいます。その事にフィルス達が気づくのはまだ先のお話です。お楽しみにっ!