45話 忙しくなりそうだ
よろしくお願いします。
「帝王からの依頼内容は........護衛だ。」
「.......へっ？ご、護衛ですか......？」
〈帝王の護衛を僕たちが.......？だ、大丈夫かな......子供だから、信用されないんじゃ......〉
ギルド長のガーリングの言葉に不安が募る。帝王とは帝国にとっての心臓部分でそれが無くなれば全部の機能が停止して崩れてしまう。つまり、その帝王を護衛するということはこの国の未来を守ると同意である。それを担うのが子供だと分かれば帝王以外の人も不安になるのでは？と思ってしまう。
「大丈夫だ。俺の方からは帝都を守り抜いた者だと伝えてあるし、お前はCランクの冒険者だからな！」
【あ～.......成る程ね～.......だからフィルス達にはまた一段上げたのか......】
〈それじゃあ......活躍したからとかではなく、帝王の護衛で必要になるランクだからってこと？！.....ま、まぁ、それはそれで良いんだけど......本当に大丈夫なのかな？〉
ガーリングの意図が読めたのは良いのだが、やはり不安は残る。何せ相手はこの国の王でフィルス達はそれを敬わなければならない貴族出身で今も貴族である。向こうがどんな要求をしてくるのか分かったものではない。
だが、そうも言ってられない。これはもう決定事項のようだし断ることも出来ないだろう。
「.......はぁ......分かりました。それで？どうして帝王様を護衛しなければいけないんですか？もう、魔物の脅威は去りましたよ？」
「まぁ、魔物の脅威は確かに去ったな.......帝王は別に不安で護衛を付けたいわけではない。少し遠方に用があるから、それで護衛が必要なんだよ。」
「遠方に？どうしてまた.......？」
ガーリングの言った気になる単語に首を傾げて聞き返すノンシー。だが、分からないのはフィルスも同じのようで小首を傾げてガーリングの答えを待っている。
「知っての通り、帝都は絶大な被害を被った....そこで、他国の協力を借りたいのだ。まぁ、この近くだと.......ダジリア王国だろうな.......だが、仲がそこまで良くないから別の国に行くかもしれんがな。」
「ダジリア王国......」
ダジリア王国は武力で治めている帝国とは真逆で交渉で治める国で帝国とは然程、仲がよろしくない。国王と帝王は犬猿の仲で世界会議ではいつもいがみ合っているらしい。
あくまで噂程度であるため本当はどうなのか分からないし、これは帝王でしかどうにもできない問題である。
「分かりました......じゃあ、日にちと時間帯、集合場所を教えてください......」
「おお！受けてくれるか！！あぁ、その前に報酬は金貨３０枚で集合場所はここで大丈夫だ。時間帯は......今くらいだな......それで......日にちなんだが......」
〈ん？どうしたんだろ？端切れが悪くなってきたぞ......？嫌な予感しかしない......〉
ガーリングはまるで日にちを後回しにするような言い回しをして言葉に詰まっていた。なんだか申し訳なさそうな顔をしているのは気のせいだろうか？
「........今日だ。」
「........は？」
〈え？あ、うん？き、今日？今日の時間帯.......場所はここ.....あ～.....成る程ね......〉
やっとのことで理解できた.....今から迎えが来て、そのまま護衛に入るらしい。サティウスは思いっきり残念そうに肩を落としている。恐らくクレプーが食べれないからだろう。しばらくフィルス達が呆気にとられていると、この部屋にノック音が響き渡る。迎えが来たのだろう........
「お迎えにあがりました。帝王の執事で名は《マークリウス》です。
......えと........Cランクのフィルス様とノンシー様でございますか......？」
「.......は、はい。そうです......」
〈や、やっぱり、訝しげな目で見られてる......そ、そりゃあそうだろね.......Cランクって言ったら冒険者のなかでも指折りの人にしか与えられないランクだからね......それが子供となればもう.......誰でもこうなるよ.......〉
予想していた反応に苦笑をしながら心の中でため息を吐く。マークリウスは清楚な黒い礼服に身を包み、優雅な立ち方等から執事感が伝わってくる。
少しの間疑いの眼差しを向けていたが、本当かと尋ねるようにガーリングを見て頷いたのを見ると、微笑みを浮かべてフィルス達を見る。
「失礼いたしました。では、急ではございますが帝王は直ぐにでも出発されるご予定なので冒険者ギルド正面に停めた馬車にお乗りください。
それから詳しい説明をいたしますので......」
「え、えぇ、分かりました。」
〈な、なんかスケジュールが混んでるな......少し、忙しくなりそうだけど.......うん、頑張ろ......〉
これから忙しくなるのを覚悟しながら言われた通りに冒険者ギルドを出てすぐの場所に停めてあった馬車に乗り込み出発するのを待った。サティウスがずっと膨れていたのは気のせいではないだろう.......
【.......クレプーが～.......クレプー食べたかったのに～.........クレプー.......】
「ご、ごめんね.......この依頼が終わったら食べさせてあげるから......」
〈うん......少し機嫌を取らないと........まぁ、帰ったらクレプーたらふく食べさせてあげよう.......〉
拗ねているサティウスを宥めながらそう心の中で呟いていると馬車が走り始めた。向かうは帝都上層部にある......王城。
ありがとうございました。
今回は少し長めとなりました！・・・・・・えっ？ぜ、全然長くない・・・・・・・？わ、私にとっては永遠にも感じる長さなんですよ！！
