42話 抱き締めて
少し短めとなってしまいました!すみません!
一先ず、閻魔大王と魔物の帝都襲撃は収まりを見せ始めたのであまり動けない体のフィルスはノンシーの肩を借りながら一歩ずつ帝都へ歩いていく。魔力の使いすぎだったり、戦闘での傷、動かしすぎで体が思うように動かないのだ。
「........キーリスは......?」
「.......あっちよ.....」
フィルスが穏やかで悲しい声で尋ねると、ノンシーも同じように悲しい声で視線で指し示す。冒険者や騎士団は行動が速いようで、もうキーリスには薄い毛布が被されている。その毛布は黒く滲んでおり、キーリスが死んだときの悲惨さを思い起こさせる。
「.......助けるべき、対象だったのにね.......僕にはまだまだ力が、魔力が、頭が足りないね......本当に......」
「......フィルスは分かってない.......ううん、分かってるけど目を背けているのよ.......絶対に守ることなんて出来ない.......!約束だって破っちゃうし、行動範囲も限られている人間が本当の意味で守るなんて出来ないんだよ.......?特に、私たちのように帝都全部を守ろうとすれば尚更.......」
「.....」
〈分かってる.......!知ってる.....!気づいてる......!でも......何かを、誰かを責めないと.....この気持ちが収まらない......!人は......いや、生物は完璧じゃない........絶対になんらかのミスは犯すし、そこが欠点になることだってある.........仕方がない.......そんな言葉で締め括れば死んでしまったキーリスが浮かばれない.......!〉
自分でも気づいていた事を咎められて苦虫を噛んだような表情をする。勝てない相手がいて当然.......負けてしまって当然......守れなくて当然......死んで当然.......そんなことはない。だが、完全に否定も出来ない。未来は1つしか無いのだから.......他の未来なんて誰かが描いた未来予想図でしかない。本当にあって、その通りにことが運ぶなんてことは無いのだから.......
後悔は出来ない.......
「........分かってるよ......僕の両手で守れる数なんてたかが知れてる.......でも、全身を使えば少しはマシになるかもしれない......魔力を全て使えばマシなのかもしれない......もう.......後悔はしないから........」
「もうっ!何回言えば分かるの?!貴方が一人で戦うなんてことはこの先一生無いんだからね?!!私が居るじゃない!サティウスが居るじゃない!」
【そうだよ!そうだよ!!僕たちがついてるんだからなんの心配も要らないよ!】
目が覚めてから冷めきっていた心が解凍されていくみたいに暖かく.......包まれていくようであった........手を差しのべてくれる訳ではなく、抱き締めてくれているような感覚.......
少し目を瞑りその感覚に癒されてしばしの沈黙のあと微笑みを浮かべて口を開く。
「.......いつまでも言うよ.......ありがとう。」
「いいのよっ!仲間で、幼馴染みなんだからっ!」
【そうそう!クレプーも食べたいから元気になってもらわないとね~.......】
「........サティウスは場外ね......」
ありがとうございました。
次回から新たなフィルス達の冒険が始まります!お楽しみにっ!