382話 全員集合?!
よろしくお願いします
頼もしい助っ人の到来で沸く冒険者達。フィルスの表情からも希望が溢れ、種族を超えた共闘に胸が高鳴るのを感じる。
「まあ、やりますかね」
キーリスは伸びをするとフィルスの前へと歩みでた。
それに首を捻るフィルスに振り返って笑んだキーリスは上空を指さす。
まるで、あっち向いてホイで指を追ってしまうようにフィルスは自然な流れで空を見上げる。
もう中空はドラゴンが優雅に空を泳いでおり、そのまた上空から射し込む光に照らされながら落ちてくる人型のシルエットの大軍。そのシルエットには大きな翼が生えていた。
「世界は天界が秩序を保っていたから存在するんです」
「ぼ、僕も行くよ!」
止められる、分かってはいたが自分だけ突っ立っているのは我慢がならなかった。
キーリスは踏み出そうとしていた足を止め、フィルスへ再び視点を戻す。
数秒の見つめ合いがあるとキーリスはフィルスに背を向けた。
「逆に行かないつもりなんですか?」
「.....え?」
フィルスは目を点にして首を捻るとノンシーに背を押され、振り返ると続いてキーリスの言葉を聞く。
「世界は皆で守るものですよ。英雄さんっ」
キーリスはそう言うと歩き出す。それに続くはマリン、ルシファーに属性戦士.....名だたる世界の強豪が背を向け、それに触発されるように冒険者達も歩みを進める。
「私達も行くわよ」ノンシーは炎のように紅い杖を手に持つとフィルスにそう言って歩き出した。
「うん.....ほら、サティウスもっ.....」
フィルスは不意に名を呼び、不意に右肩を見つめた。だが、もうそこには誰も居ない。
急に悲しみが押し寄せてくる。苦しくなって寂しくなって.....一々、確認しなくても傍にいる存在だったサティウスはもう.....すると反対側の方に重みを感じ、左耳のすぐ傍に声を聞く。
【僕も.....ちゃんとついてるよ】
フィルスはその言葉を聞いただけで何もかもが吹き飛んでいくのを感じる。
もはや、寂しさなど遥か彼方へ飛ばしたように何時もの表情に戻ったフィルスは決して左肩に目を向けることはなく、悲しみの表情を浮かべるノンシー達に視線を向けた。
ノンシーはその時にフィルスの何時もの表情を見て、その沈んでいた表情を無理矢理に元に戻して下がっていた口の端を気持ち少し上に持ち上げた。
「よし、行こう!」
「ええ」
まだだ.....まだ、現実を直視はしない。心が崩れそうになる。死にたくなっちゃう。生きたくなくなっちゃう。だから、まだサティウスを傍に感じていたい。いつものように、寛ぐばかりで戦闘にはあまり参加してくれないサティウスの存在を.....
フィルスは目尻がどんどん熱くなるのを感じる。だが、それをぐっと我慢して潤んで視界がボヤけてきた頃、冷たい小さな手がフィルスの右手に触れる。
フィルスがハッとしてそちらに目を向けるとホーラがこちらをじっと見つめており、フィルスは目を閉じると肩で涙を拭いホーラに一言、お礼を言って前を見据えた。
邪神に最早、勝ち目がない状態で襲いかかる人々が各々の武器を振りかぶったその時、衝撃波のようなもので大半の冒険者達は吹き飛ばされ、他もまともに攻撃ができずに衝撃に耐えていた。
「こざかしい!雑魚は黙って死ねええ!!」
邪神はまだそんなに魔力が残っているのか、と絶望してしまうほどの魔力を体から放つ。
その濃い魔力はそれだけで他人の精神をチェーンソーの如くギャリギャリと抉りながら真っ二つに切り裂き、冒険者はほぼ、絶滅。ドラゴンも天使も大半が気を失ってしまった。
「こんなに一遍に.....」大地が呟くとモルテがそれを鼻で笑う。
「何言ってやがる。ここからが本番だろ」
なあ?と賛同を求めるように、たつを見るとたつも笑顔で頷いた。
「言っちゃ悪いっすけど足で纏いは困りますっすからね」
少しは気を遣うようになったダンクスが「言っちゃ悪い」という言葉を使ってそう言った。
それに納得するのは最早、やむを得ない。
フィルスは苦笑を浮かべて周りの反応を見て回る途中で視界の隅に入った左肩で笑うサティウスの姿が映ったように思えた。
ああ、本当に居てくれるんだ、フィルスはそう思うととても心が暖かくなって幸せそうな笑みを浮かべた。
それを知らない周りに不謹慎だと怒られたのは内緒である。
ありがとうございました




