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37話 自分の名前

 よろしくお願いします。

 「全属性魔法.......《神々の鉄槌》!」


 それを唱えた瞬間、空が、空気が、地形がうねりをあげながら姿形を変えていった.......

 まるで大地の津波が起こっているかのように地面は波の形状で黒甲冑に迫り来る。空は帯電が集まるように一点に迸り、巨大な光を放ちながら黒甲冑に降り注ぐ。空気中の酸素は毒素へ変わり果て、草木は枯れて空飛ぶ鳥たちは地へと伏せた。


 【.......なんて魔力.......!こ、これじゃあ、帝都まで......!】


 冷や汗が身体中から流れ出るのが分かる.....フィルスの魔法はこの世でも最高峰の強さを誇るサティウスでさえ絶望という言葉を過らせるほどに強大なものであった。

 黒甲冑は何を考えているのか全く分からないように無表情な顔で黒魔法の結界を自らの周りに張り巡らせる。一枚だけではなく、何枚も.......これでもかというほど張り巡らせると魔力が底を尽きる感覚がしたので止めた。ざっと100枚以上は重ねた.........だが、これでも本当は心もとない。


 「永遠の死と共に.......くたばれ!!」

 「フハハハハハハッ!!見事!見事であるぞ!!だが......我を殺すなど高々人間の貴様が成せることではない!我は不老にして不死の存在.......全ての罪人を裁き、地獄へ送り届ける死の番人であるのだぞ!!」

 

 その声は留まることを知らず、帝都まで響き渡った.......その言葉は恐怖でしかなかった.....今、目の前の黒甲冑が言った言葉が本当なら.....こいつは......


 【ちっ!やっぱり、そうなんだね......《閻魔大王》.....】

 「ん?フハハハハハハッ!!誰かと思えば精霊王か!!.....平和ボケして力が大分衰えたな!!」

 【それだと笑えるんだけどね........人間と契約を結んだからね.......大分力を押さえられてるんだ。】


 本来のサティウスならば、閻魔大王を1発KOで、フィルスの暴走も止められただろう。だが、契約で力を制限されているため止めようにも止められないのだ。


 「相変わらず、創造神の雑用係か.......だが!この世界の法を司るのは我である!!止めることなど許されぬわ!!」

 「あーあーあーあーあー!あーあー!!うるさいんだよ!!早くくたばれ!!」

 【フィルス!!しっかりしてよ!!】


 結界を砕かれ続けているのに余裕綽々の閻魔大王に苛立つフィルス。上空からの落雷も、地面の津波も、空気の毒素も防いでいるが、それも時間の問題だろう.......『普通なら』だが.....

 閻魔大王は指を鳴らす。すると地面から這い出てくるように三体の黒く靄がかった物体が現れ閻魔大王を守るように互いで手を繋ぎ拡張していく。


 【っ!?相変わらず......部下をなんだと思ってるの?!!】

 「駒だ!!我に従う忠実で愚かな!貴様にも居るであろう?それくらいのことをする僕は!」

 【居ない!居たとしてもさせない!!君と一緒にしないでよ!】

 「........さ..........ティ........ウス......?」


 〈あれ?誰だっけ?なんだっけ?この名前は.......?この精霊は......?〉


 一瞬だけ......ほんの一瞬だけ出てきた名前と顔.....この世界に来てずっと一緒にいて......バカやったり、やられたり.......甘いのが大好きで、いつもだらけてて........楽しくて......優しくて......威張らず、謙虚ぶったりもせず.....ただ、ただ普通に接してくれて.......大事な一番の友達で......家族で.......仲間........


 「我の邪魔をするなら......貴様にも罰が必要なようだな!!」

 【なっ!?】

 「罰が必要なのは.......お前だろ!!」

 【ふ、フィルス!】


 〈あぁ、そうだった........僕はフィルスだ.......そして、この精霊は.......〉


 記憶が.......思い出が蘇ってくるようであった.......閻魔大王はサティウスの目の前へテレポートして襲いかかろうとしていたところをフィルスが光の魔力を纏わせた拳で殴り飛ばした。

 それから.......サティウスに言わなければならないことを言うために.......フィルスは微笑みながらサティウスの方へ振り替える。


 「ありがとねっ......サティウス.......」

 【っ!?.........うん......うん.....!】


 自分の名前を呼ばれたことが......感謝の言葉を述べられたことがこれだけ、幸せで、嬉しかったのは初めてであった.......あぁ、だからなのかな.....?こんなに目の前が歪むのは......溢れでる涙が止まらないのは......頷いた首がずっと縦に振られ続けるのは.......


 「蝿どもが!!我は閻魔大王であるぞ!!」

 「残念だけど、閻魔大王でも人間の法にのっとってその首頂くよ!!」


 暴走から治った自分では勝てない.......だが、退けない.....フィルスはただ、魔力を溜めて対抗策を練りながらミスリルソードを構える.....守るべき者のために.......

 ありがとうございました。

 さぁ!完全に帝都防衛戦終盤です!!次回は何が起こるのか!お楽しみにっ!

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