35話 キーリス死す
よろしくお願いします。
「き、キーリス!!!」
「ちっ!一人逃したか.......」
キーリスは漆黒に輝く箱形の空間の中に消えてしまった......慌てて助けるために中へ入ろうとするが今までずっと眺めていたサティウスが立ち塞がった。
「っ!?さ、サティウス!!今まで何してたんだよ!!キーリスが!!早く助けないと......!」
【ダメだよ!!......あの中から聞こえないの?......キーリスの叫び声が......?】
「だから!!だから助けないと!!」
【バカじゃないの?!!あれは絶望と憎悪の空間だよ?!どうやって、生きて外に出るつもり?!どうやって、助けるつもりだよ!!勝てないものは勝てない!!救えないものは救えない!!割り切らないと.......!なんのために、キーリスは君を助けたと思ってるんだよ!!】
「っ!?.......分かんないよ........なんで.....?なんで、僕なんかを助けたの......?僕が......僕が守るって言ったのに......!なんで僕が守られたの......?分かんないよ.......!」
崩れ落ちながら何度も問いかける。助けられた自分が無力に思えて、助けれなかった自分が憎くて.....ただ、泣き崩れた。
そんなフィルスを悲しげな表情で見つめるサティウス。なんて言えば良いのか.....君が世界を救う人材だから?......いや、多分フィルスはそんなの否定するだろう.......返答に困る。その間にも悲鳴はどんどんと小さくなっていき、次第に聞こえなくなっていった。
「っ!?キーリス!!!そ、そうだ!黒甲冑を殺せば!!」
【君がどうやって勝つの?!僕でも勝てないってのに!!】
何かを待つようにずっと黙ってブラックボックスを眺める黒甲冑を睨み付ける。だが、それもサティウスに止められた.......君では無理だと........あれ?自分は何が出来るんだっけ?......魔法でも剣術でも勝てない......誰も守れない.....あれ?自分は何が目的で旅に出たんだっけ?
「......ダメだな......僕は.......誰を守るために強くなったんだろ.......?何が目的でここまで来たんだろ?.....魔物一匹殺せなくて.....人間一人守れなくて......何を足せば、何を引けば強くなるんだろ?
.........あぁ、優しさなんて要るっけ?恐怖なんて要るっけ?手加減なんてしないといけないっけ?......捨てちゃおう.....何もかも......それで何かを守れるなら.......」
【っ!?な、何を言ってるの.......?ふ、フィルス?!しっかりして!!】
〈.......誰だっけ?.......あぁ、僕の邪魔をしてくる精霊か.....あれ?何か........何か大事な言葉が抜けてるような......気のせいか........あの黒甲冑だったかな?倒さないといけないのは.......この箱なんだっけ?真っ暗だ......何も見えないや........〉
目が霞む.......視界がボヤけて、頭も上手く機能しない......誰が敵で、誰が味方か忘れてしまった.......サティウス?.......知らない人だ.......ノンシー?.......幼馴染み?......知らない子だ.......キーリス?.......誰だっけ?........フィルス?......それ.......誰のこと?
そんな何も考えられなくなった中でブラックボックスは消え去り、自分の首を切って死んだキーリスが姿を現した.......
「っ!?........守れなかった.......?僕は.........フハッ......フフフフッ.......!ハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
フィルスを全ての魔力が包み込み、その中から狂喜に笑うフィルスの声だけが木霊するだけだった........
空は黒く覆われ、一筋の日差しさえ入ることを許さない。風は吹き荒れ、大地は悲鳴を上げるように震え始める。
【っ!?守る側が一瞬にして......滅ぼす側に......】
この世界の終わりとでも言いたげな空間で人間は固唾を飲んで見守り、魔物は恐怖のあまり腰を抜かして震え上がっている。
「さぁ!始めようか!!僕の敵討ちを!!」
ありがとうございました。
残念ながらキーリスは死亡しました・・・・・・フィルスは怒りで我を失っています!一体帝都はどうなる?!




