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32話 勘違い

 よろしくお願いします。

 帝都防衛戦は苛烈を極めた。多くの人間の、魔物の血が流れたこの草原は赤く染まってまるで地獄にでも居るみたいだった。キーリスは仮面をつけ直して華麗な立ち回りで魔物の首を跳ね回っていく。遠くからの援護射撃はノンシーのものだろうか?全く邪魔にならず、でもちゃんと援護をしてくれている。


 【う~.......精霊王の受託者は何日間も待たないと使えないし.....だからと言ってこのまま戦えばじり貧だしね~.....】

 「ううん.....!僕が必ずどうにかするから!勝つんだ!」


 〈勝たないと.......負けられないんだから!帝都は必ず.....仲間は必ず!まもっ.......〉


 心を追い込み剣を振り続けていると頬をいきなりサティウスに殴られた。その反動でふらついた先にはオークが今にも襲いかかってきそうであった......もう少しでオークが持つ石の斧が当たりそうになったとき、ノンシーの魔法で吹き飛ばされ次々フィルスに襲いかかってくる魔物はキーリスに首を跳ねられていく。


 「大丈夫ですか?!いきなり転んじゃうからビックリしましたよ!」

 「こらーーーー!!フィルス!!立ちなさーーい!!帝都を守るんでしょ?!!」

 【........誰を君一人で守れるの?誰も君一人に助けなんて求めてない!!勘違いしてるんじゃないよ!!】

 「っ!?」


 殴り飛ばされた先にあった壁がドミノのように倒れていくような.......四方八方塞がれてて、出口なんてなくて息が薄くなってて......だけどその倒れた壁から一気に酸素と共に出口が出てきたみたいな........

 フィルスは殴られた頬をしばらく押さえながら尻餅をついていた......だが、口角を上げながら立ち上がりサティウスを見る。


 「.......ありがとう.....やっと目が覚めたよ......」

 【ホントに寝坊助さんなんだからね~.....】

 「うん.......ゴメンね?迷惑かけて......」

 【うっ........ま、まぁ?帝都を守った後にクレプー作ってくれるなら許してあげてもいいけどね~?】

 「了解!いくらでも食べさせてあげるよっ!だから......力を貸して......」


 フィルスとサティウスだけの空間だった.......全ての魔力を司る精霊王とその契約者.......自然界のものは全てフィルス達に味方した。

 風は追い風となり、雷は魔物に降り注ぎ、大地は敵を阻むように膨れ上がり、闇は呪いの化身へと姿を変え、光は天から降る無数の矢となり、雨は槍となり降り注ぐ.......

 全ての常識をひっくり返し、全ての力を味方につけて戦うフィルスとサティウスはまるで......


 「......英雄だ......この帝都を守る英雄........

 皆の者!!全ては我らに味方した!!あとはここを守り抜くのみ!!気合い入れ直せや!!」

 「「「「「「「「「「おーーーーーーーー!」」」」」」」」」」


 冒険者ギルド長は冒険者達に一喝を入れる。その効果は凄まじく冒険者一同は魔物をどんどん蹴散らしていった.......だが、魔物の群れは減ることを知らず何処からともなくあふれでてくる........夜になればアンデットの魔物も出てくるのでここで終わらせたいところなのだがなかなか決着がつかない。


 「........一体何処から.....」

 「すみませんが私の情報に魔物の巣が帝都の近くにあるなんてものは無かったのでどうにも.....」


 キーリスの情報量でもまだ足りないのだろうか?.......いや、魔物が溜まりにたまっていたら何らかの異変は誰もが感じていたはず......まるで急に湧いて出たような......もしかして魔法?......召喚魔法?転移魔法?全く分からん.......


 フィルスは少ない情報を頼りに魔物が湧いて出た原因を探るが情報量の少なさと戦闘中であまり集中できないのも相まって全く原因を特定できない。だが、それが普通なのだ......魔物を大量に出せる魔法など人間が知り得るわけが無いのだから......



 暗闇が広がるある部屋で肘掛け椅子に座り頬杖をつきながら瞑った目に浮かび上がる帝都の様子を眺めていた。攻めきれずにいる魔物と守りきれずにいる人間の激しい戦いが繰り広げられているのに舌打ちをつく。


 「......我が僕どもも役立たずと言うわけか......行くぞ.....マリン......」

 「........主の御心のままに.......」

 ありがとうございました。

 さぁ!動き出した黒幕!フィルス達は帝都を守りきれるのか?!お楽しみに!!

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