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319話 眠る青年、少女

 よろしくお願いします。

 照らす日差しが心地よく朝の知らせを.....っという事はなく、慌てた様子のたつの騒がしい声で皆が目を覚ます。中には二度寝する者も居たが、フィルスは寝癖で髪を立たせたまま起床する。


 「どうしたの?そんな慌てて.....。」

 「重傷なんだ!大地!あいつを早く!」


 何やら血相を変えたたつの頼み。フィルスはすぐに把握出来ず、目を擦りながらたつの周辺を見渡すとたつに背負われるようにして苦悶の表情で瞳を閉じる青年とたつに抱えられる少年にも見える少女を目視してフィルスは状況を把握し、飛ぶように大地が眠るテントへ駆け、少し強引にたつの元へ連れていく。


 「んだよ.....俺は低血圧で朝、弱いんだからさ.....。」

 「そんなの知ってるしどうでも良いから!早くこの二人の怪我治してくれ!」


 フィルスは状況を理解してもたつの言う通り大地を連れてきた。治癒してほしい相手が誰であろうと人として助けたいと思うのは当然の事だと思っていたからだ。だが、普通ならば.....大地は目を見開かせた。


 「は?!!な、なんで.....なんでこいつが?!」

 「事情は後だ!治してくれ!」

 「.....分かった。後でちゃんと説明してもらうからな。」


 フィルスは確かに言う通りに従った。だがそんなの大地だって同じだ。誰であろうと傷を負った者に刃は向けない。フィルス達の騒動を聞き付け、続々と集まる冒険者達は驚いたり困惑したりしているが、今は黙って見守ることにしてもらう。言いたい気持ちは皆も同じだから。


 「これが本当に茂みの奥に.....?」

 「う、うん.....。」

 「好都合じゃない。奴等の情報聞き出して殺せば良いだけの話でしょ?」

 「残酷な考えっすけど.....俺もそれに賛成ッス。」


 この会話で分かる通り相手は邪神団。生かしておく理由も助ける道理もないのは目に見えて分かる。それでもたつの希望だ。無下には出来ないと大地は黙って治癒をして、皆はひたすらに治癒を施される少女と青年を見つめていた。


 「.....何はともあれ、先ずは治癒だ。こんなに傷を負ってちゃ目覚めることすら叶わない可能性もあるからな。」

 「おう。今、やってるから静かにな。」


 治癒を行う大地からは光の魔力が全身を駆け巡り、掌から淡い白の光が傷口を塞いでいく。フィルスはその光を眺めながら思案に耽る。何故、こんなところに居るのか、何故、傷を負っているのか.....それが独り言のように口から漏れ出たのかモルテが諭す。


 「そういう詮索は目が覚めてからだ。妄想で同情してちゃ、話が進まんからな。」


 結局、他人の事で自問自答をしたって分かるはずはないのだからそれならば考えず、本人から聞くのが手っ取り早いし確実だ。モルテの言葉に確かにと頷いたフィルスは考えるのを止めて山から顔を出す陽光を細い目で見つめた。また忙しない日々が始まりそうな予感を感じながら.....。

 ありがとうございました。

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