24話 チョロい
よろしくお願いします。
「はい、確かにクエスト完了です........では、こちらが報酬金となります。素材も一緒に買い取りましょうか?」
「う~ん.......どうする?」
「ここより、商業ギルドの方が高く売れますよ~.......賞味期限切れの情報ですけどね~。」
討伐クエストを終えて冒険者ギルドに戻って報告していたフィルスは、魔物の素材をここで売るか売らないかと聞かれて迷っていると、のんびりとした口調でキーリスが情報を提供してくれた。
「へ~、そうだったんだ.......はい、情報料。」
「........聞いてましたか?賞味期限切れなんですよ?」
「僕知らなかったし.........それに、いつまでも情報だけもらうのも嫌だからね.......」
フィルスがそう言ってキーリスの手を掴み銀貨1枚を手渡しした。キーリスはしばらく渡された銀貨を眺めて少し口角を上げてからマジックのように銀貨を消した。
「受け取っときますよ......買い手の我が儘でってことで.....」
「うん.......ありがとう。」
フィルスとキーリスは微笑み合ってから冒険者ギルドを後にした。
〈.......ノンシーが膨れ上がっていたのは気のせいかな?〉
「はい、冒険者ギルドにご登録して頂いている方は大歓迎ですよっ!......ほうほう、オーク、ゴブリン、迷いの魔女それぞれ5体づつですかっ.......分かりましたですよっ!査定に入りますよっ!」
「え、えぇ、よろしくお願いします。」
〈この人可笑しいな........語尾が異常に上がってる.......おかしな人が多いのかな?帝都って......〉
少し可笑しなしゃべり方をする商業ギルドの職員に変なものでも見るような顔で見ていると後ろからサティウスに叩かれた。
「っ!?えっ?な、何?」
【失礼でしょう?!変わった人も居るって思えば良いじゃん!】
〈.......そうだよねっ!変な精霊も居るんだから.....!〉
妙なところで納得したなんて知らないサティウスは良いことを言ったと胸を張っている。
「そうだね.......変な精霊も世の中には居るんだからね......」
【そうそう!!........えっ?ち、ちょっと!?君が出会った精霊って、僕だけだよ!??】
「うん、サティウスの事だけど?」
【なっ!?ぼ、僕が変だとは失敬な!!ねっ?皆っ!.......な、なんで、皆、目を逸らすの??うん?皆、そう思ってるの??ねぇ?どうなの?思ってるんでしょ?ねぇ?ねぇ??ねぇ!!】
ガン無視........とはこの事である。サティウスの言葉に賛成出来ないノンシーとクロはサティウスから目を背けて聞こえない振りをしている。
【ふんっ!皆、嫌いぃぃぃ!!ベー!だっ!】
本当に拗ねたサティウスは可愛らしく舌を出してからそっぽを向いてしまった。だが、フィルスには機嫌を治す方法があった......
「帰ったら、クレプー作ってあげるから.....」
【......ま、まぁ?それなら、許してあげない事もないよ?】
「【...】」
ノンシーとクロの心の声を言うと「チョロすぎ!」である。甘党がここまでスイーツに弱いのかどうかは分からないが、サティウスは本当に弱いみたいだ。
「......あの......査定終わりましたですよっ.....」
「うん?あ、あぁ、すみません.......」
いつの間にか終わっていた査定に移る。出された羊皮紙に目を通していく。だが、キーリスが途中で見るのを止めてギルド職員を睨み付けながら口を開く。
「......これ、安いですね.......状態もよくて、傷もそこまでない........普通ならもっと高値がつくはずですが......子供だからって嘗めてるんですか?」
「.......そんなことないですよっ。私たちは冒険者の味方.....そんな騙すような真似をするわけがありませんですよっ!」
「........じゃあ、もう少し値を上げてもらいましょうか?冒険者のために.....それから、私は情報屋です.......悪評を町中に流すのは簡単な事なんですよ?」
しらを切る職員の話に乗っかりながら、自分達を騙そうとした事を咎める。少し脅しも入れてみたが、効果抜群だったようで羊皮紙に再び金額を書いて提示してくる。
「こ、これならどうですかっ?.......職員としても、これ以上上げることは出来ませんですよっ......」
「.......どうしますか?これでもまだ、平均です.......もう少し脅せば上げてもらえますけど.......?」
悪魔の囁き.......まさにこの事である。だが、フィルスは首を大きく横に振って職員を見る。
「これで、大丈夫ですよ.......買い取り価格を上げてくださりありがとうございました。でも、他の冒険者にはしないで下さいね?
冒険者に良心的な商業ギルドさんが冒険者を騙しているのは堪えられませんからね。」
「は、はいっ!申し訳ございませんでしたっ!」
〈最後の最後まであのイントネーションは変わらなかったな........まぁ、いっか......〉
フィルス達は商業ギルド職員に見送られながら夕焼けに染まる町を宿屋へと向かうのであった。
ありがとうございました。
最近、話の終わり方が不時着ばかりしております・・・・・・・・・もう少し、終わり方にも力を入れねば・・・・・(;・∀・)




