22話 聞く相手間違えたわ
よろしくお願いします。
【クレプーは~?まだ作らないの??】
「........今はキーリスと交渉中だから黙ろうか?」
【......黙ったら.......クレプー.....作って....】
「わかった!わかったから!!黙って!」
【やったーーーーーー!!】
「........サティウスは無しね......」
【そ、そんな~........君の相棒だぞ?!!】
「なら、その相棒の事を考えて静かにしてよ!」
【...】
フィルスは押し寄せてくる客を追い返して自分達の部屋でキーリスとの交渉をしていた。ノンシーにはクレプーという名のクレープの作り方を教えると嬉しそうにドラゴンの隠れ家の店員とクレプー作りに没頭していた。
「で?どうする?私の情報を使えばもっと人助けが楽に出来ると思いますけど?」
「.......先ず、支払わなければならない金額の平均と情報の正確性が欲しいです......それからでないとこれ以上の交渉は難しいですね.......」
フィルスが気にしているのは、情報に払わなければならない金額が自分達で払えるものかどうか、そして本当に情報が正しいかどうかということだ。
キーリスはこの年でこれだけ賢いフィルスに感心とばかりに微笑みながら首を縦に振ってから、何処からともなく羊皮紙を取り出して何かを書き始める。
「情報料に関してはそこまで問題ないと思います。問題はあなた達が気にしている正確さだけど......証明するのが難しいですね........」
羊皮紙書いていたのは情報料の平均額であった。
人助けの情報など誰が欲しがるわけでもないので、格安であるがそれでも銀貨1、2枚は必要となるようだ。
「........そういえば、ここ最近魔物の動きが活発化しているそうですよ。そのせいで帝都周辺の森で駆け出し冒険者達が危険な目にあったり、命を落としたりしているみたいです......あとは、大分鉄不足で武器が造れないみたいですよ。」
〈おっ!良いこと聞いた気がする.......魔物が活発化したせいで、鉱石を採れずにいるって事じゃないのかな?
.........帝都付近でも駆け出しとは言え冒険者がそう簡単に傷つくような魔物は少ないはず......〉
フィルスは頭をフル稼働させて、原因となっていそうな場所を探す。先ず、思い浮かぶのは洞窟、迷いの森、遠方から来た魔物........のどれかである。どれもあり得そうであり得ないのが悩みどこでなのだ。
「........この情報がいくらなの?」
「これは、金にはならないですね.......情報屋ならとっくに嗅ぎ付けてる情報ですから......」
〈成る程......情報は古くなると売り物にもならないって訳か......〉
フィルスは顎に手を当てて納得とばかりに首を縦に振る。そして、再び自分達がやらなければならないことを思い返す。
先ずは、生活費と情報料の調達が先決される。つまりはクエストを受けなければならないのだ。
「........う~ん.......キーリスの情報は信じるとしても、今はお金の調達が先かな.....どう思う?サティウス.....」
【うんっ!お金は大事だよ!クレプー作るためには少しお金がかかるからね!!】
「.......ごめん、聞く相手間違えたわ......」
サティウスはクレプーのことしか頭にないようで、お金はクレプーの素材に必要だと力説してきた。フィルスはそんなサティウスに尋ねてしまった事を後悔しながら、やはり自分で決めるべきだと心の中で決めるのであった。
「........じゃあ、交渉は成立......でもまだ情報は不要......ってことで良いかな?」
「了~解.......じゃっ!私は帰りますね.......」
「うん、これからよろしくね!キーリス!」
フィルスの言葉に口角を上げてこちらを見てから霧のように消えてしまった。
こうして、フィルス達には専属の情報屋が出来た。仮面を被り、正体を隠した女の子......九尾種という特殊な種族で情報を集める彼女は後にこう呼ばれ始める......《謎の情報屋・キーリス》と.......
ありがとうございました。
相変わらずの短さですみません!ですが、まだまだこの物語は続いていきますので、ご声援のほどよろしくお願いいたします。




