21話 クレプーの製作者
よろしくお願いします。
「.........で?どうするんですか?私が持っている情報を使うの?使わないの?」
ドラゴンの隠れ家の厨房.........フィルスは買ってきた素材で、あるものを作っていた。そんな、フィルスに即断即決を迫る仮面の少女はあまり料理には関心がないようである。
「謎なぞ子ちゃんは、甘いの食べれるの?」
「何よ!?謎なぞ子ちゃんって!!私の名前は《キーリス》よっ!!」
【.........釣られやすい子だね~.......あっ!ちなみに、僕は甘いの大好物だよ~。】
「........激辛にしといてあげるよ.......」
【........私は.......激辛が良い.......】
〈えっ!!じ、冗談で言っただけなのに.........ま、まぁ......一先ず食べてもらおうか......クレープを!!〉
そう、フィルスが先程から製作しているのはクレープである。前世では甘党だったフィルスが磨きに磨き上げたスイーツの数々.......フレンチトースト、パンケーキ、クッキーやラング・ド・シャ........数えれば両手で収まりきらない程に作った自信作で、今回はクレープを作ってみる。
クレープというのは、薄い生地にホイップクリームや果物をお好みで巻いて食べるスイーツである。今回は、シンプルにイチゴの味がする果物や、バナナの匂いがする果物を使ってみる。
この世界の砂糖は貴重だが、その分甘味が増しておりスイーツ作りにはもってこいである。
「.......へい、お待ち!フィルス特製クレープだよっ!」
「.......初めて見る食べ物ね.......」
【うわ~!!美味しそうな香りがするっ!】
ノンシーとキーリスは出された皿を訝しげな視線で眺めていたがサティウスは躊躇うことなく、一番乗りでかぶりついた。
【ふぁ~!!美味しいよ!!甘~い!】
【.......辛くないけど.......美味しい......】
「えっ?そ、そうなの?......なら、私も.........っ!?お、美味しい!こんなに甘くて美味しいスイーツは初めて食べるわ!」
〈そうだろ、そうだろ.......なんたって、僕が子供の頃から作り続けたスイーツの1つなのだからっ!〉
フィルスは自分の品が褒められて満足げに胸を張るが、何故かキーリスはクレープに手をつけようとしない。人を余程信用出来ないのか、甘いのが嫌いなのか.........その真実は分からないが、フィルスは自分の品にけちをつけられているみたいで気にくわないとばかりに顔をムスッとさせる。
「なんで、食べないの?」
「.......私は用心深いんです.......今日出会ったばかりの相手の品なんかに手をつけられるはずが........「じゃあ、帰ってくれない?」.......どうして?」
〈確かに、今日出会ったばかりの人間を信用するなんてどうかしてるよ........だけど、それは『普通』の人間の話だ。〉
「.......君は情報屋でしょ?.......なら、僕たちの事も調べあげているはずだ.......なのに、その判断を自分で怪しむような情報屋なんかに、僕たちに定期的に的確で確かな情報を提供してくれるとはとてもじゃないけど.......思えないね。」
そう、キーリスはフィルス達と初めてあったような口振りで、自分は用心深いとも言った........だが、フィルス達にしてみれば、調べあげて自分達に害がないと思っているはずの彼女が自らの情報に背いたと同意である。
「........わ、分かりましたよ!食べれば良いんでしょ?!食べれば!!」
半分やけくそのように無理矢理口にクレープを押し込む。イチゴの程よい酸味とホイップクリームの滑らかで濃厚な甘さが上手くマッチしたまさに、この世界に革命をもたらすような一品といっても過言ではないかもしれないその味にすっかり魅了されたキーリスはお腹が減った子供のように無我夢中にクレープを頬張った。
「.........なにこれ?.......美味しい!」
「でしょ?!兎に角、美味しいわよねっ!」
〈も、盛り上がってるところ悪いんだけど........そこまでガチトークで絶賛されると.......恥ずかしい!!
それから、なんの行列ですかね?........えっ?く、クレープ目当てのお客さん??.......マジか.......〉
こうして新たに帝都に出来たスイーツのクレプーは何故かクレープという名前ではなくなってしまった.......だが、そんなことを知るよしもない帝都の者が次々とクレプーの作り方を全世界へと拡散していくのであった........
ありがとうございました。
ちなみに、私は甘党ですが料理はからっきしなので、そこまでのスイーツを作ったことはありません。
多少のスイーツの誤差があるかもしれませんが、何分初心者なので・・・・・・・すみません。