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172話 お決まり

 よろしくお願いします。

 「少なくとも50人はいる......中はかなり広がってるみたいです。」

 「了解.....エルロートの魔力とかは分かりますか?」


 侵入の前に交代するための見張りが来るまでの間、索敵をするたつとフィルス。魔力感知に優れているたつの方が情報が正確であるためそこはたつに任せることにする。報告を聞いて質問をするを繰り返して敵の情報を知りながらたつはより集中しエルロートの魔力を探る.....だが、届かない位置に居るのか感知は出来なかったが、たつは冷や汗を流し、深刻な表情で瞳を開く。


 「......悪魔が1体.....今感じる限りではそれくらいですが、他のより大きな魔力は他に3つほど.....エルロートの魔力は今のところ分かりません。」

 「あ、悪魔が......邪神団は本当に悪魔と繋がってたんだ....50人以上という大規模な数に数人の精鋭.....かなり厄介ですね。」


 正直言ってアルゾットの部下ほどの実力者が50人以上というのはたつとフィルスでも対処できてしまう。だが、猛者が数名と悪魔が1体ついてくるとなると......分が悪いというもの.....

 サティウスとエルにたつの先程の情報を伝えておいてもらってフィルス達はしばらく待機かと思われたが洞穴から足音が聞こえ、フィルスは肩をポンッと叩かれる。


 「交代だぜ、お二人さんっ。」

 「.....あ、あぁ、分かった。」

 「あ?どうしたんだ?声が違うな。」

 「っ!?か、風邪だ.....風邪。」

 「風邪で声が高くなるって......面白いな。」


 数とは力.....それを疑わないものは仲間を疑わない。だが、それは信頼などではなく『どんなに強いやつが裏切っても数には敵わない。』という心の隙から生じる綻びだ。

 まぁ......意図した気づかぬふりなら別だが......



 〈......もう、お決まりだよね.....〉


 フィルスはまとわりつく鎖で身動きがとれないことに苦笑いしながら、鉄の扉を閉める音でガックリと頭を下げた。その隣にいるたつは頭上を見上げ、もう脱出する策を考えている.....お察しの通りだ。フィルス達は洞穴へと無事、侵入し長く下へと続く階段を下りていると広場へ辿り着いた。そこには多くの者がまるでフィルス達を待っていたかのように武器を構えており、引き返そうと考えたが階段の上にも数十人以上の者が待ち構えていたので抵抗することなく両手を挙げて拘束された。

 そして今に至るわけだが.....檻の中だしテンションが下がるのも当たり前ではあるし、逆にヘラヘラするのもどうかとは思うけど.....なんだか居心地が悪くなったフィルスは無理矢理たつと話をしようと口を開く。


 「.....たつ.....さん?」

 「?......はい、なんですか?フィルスさん。」


 〈あ、今パッと思い浮かんだ.....いい加減さん付けやめてほしいな......〉


 話題もないが名前を呼んでみたフィルスはたつの言葉でふとそんなことを思い恐る恐る口を開く。


 「いや、そろそろ僕たち、敬語やめないかな~っと思いまして.....こんな状況を共にしてる訳ですし、そっちの方が接しやすいでしょ.....?」


 なんかフィルスとしてはたつは冷たくて頭がキレるイメージがあり、果たしてこの案を受け入れてくれるのか不安であったが、たつはしばらく悩むように顎に手を当てると微笑んで頷いてみせた。


 「確かにそうだね......フィルスがこちらの方がいいならそうするよ。」

 「思ってたけどたつって僕としゃべり方似てるよね~。」

 「アハハッ、確かに。」

 

 たつは本当は親しみやすい存在なのかも.....?そう思いながら笑い合っていると牢屋の向こう側から足音が聞こえ始めフィルス達の笑い声を聞き付けると冷たい声で言葉を発する。

 

 「あれれ~?ここって牢獄なのに何故か楽しそうな笑い声が聞こえるね~。」

 「っ!?お......前は.....」

 ありがとうございました。

 こ、このしゃべり方.....!フィルスにとってはにっくき者が登場する?!お楽しみにっ!

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