171話 秘める決意
よろしくお願いします。
振り分けが決定した。変装というのは頑張れば誰にでもとは言わないがあまり不可能と言われるほどのものではない。難しいのは持続させること.....魔力量が問題なのだ。それから変装は出来ても変声は出来ないので一言二言しゃべっても問題なさそうな男性に限られる。そこでもう1つ重要になるのはもしもの《対策》だ。もし予想外にも正体がバレた際、戦えなければ意味がない。洞穴の中は狭いだろうから近接戦闘に重点を置くべきだろう。つまり魔法使いは×、魔力量の高い者、女性は見張りの男と性別が違うため声や行動に差異が生じるため×、そして何より.....エルロートをここまで連れ戻す力のある者になる。
「.....これはフィルスさんと俺で勤める。魔力量的にも問題はないしな。」
「そうですね.....これが最善でしょう。」
「それで俺かフィルスさんがチャンスを窺って大きな爆発を起こす。それが開戦の合図。洞窟内だから狭いと考えるのが妥当だから一列.....いけそうなら二列で攻めいってきて。順番としては......」
フィルスはたつの指示を聞きながら感心していた。こんなに若いのに的確な指示で皆の職種や魔力、戦闘スタイルを活かした配置をしている。指示が一通り終わるとたつは木の枝を置き皆の顔を一見する。
「.....必ず自分の命を優先して.....危なくなったらすぐに脱出。いいね?」
「お前にだけは言われたくねぇよ!ちゃんと自分を大切にしろよ!」
「ぐっ......!わ、分かってるよ......」
そんな会話をして笑うたつと大地を微笑ましげに見ていたフィルスは肩を叩かれる。そこにはノンシーの姿があり少し膨れっ面だ。
「ダイチも言ってたけど.....自分を大切にするのよ!タツさんが言ってた通り危なくなったら脱出!分かってるわよね?」
「う、うん。分かってるよ.....死なないのも人のためだって気づいたから.....」
たつは恐らくまだ知らない......自分が死んでどれ程の人が悲しみ傷つくのかを.....だが、体験してきているはずだ。大切な人が目の前から居なくなる悲しみを、恐怖を、怒りを、孤独を.....
フィルスは洞穴の前に立つ見張りを見据える。すると後方から足音が聞こえ、それはフィルスの隣で歩みを止めた。
「.....極めて重要で危険な役割です。変えてほしいなら.....「そんなことあるわけがないじゃないですか.....戦いますよ。」.....了解です。」
〈使者っていうとてつもない存在が急に目の前に現れて、その影に隠れている今のこの現状.....自分の価値とか意味とかそう言うのが再確認出来そうなこの役割.....一石二鳥でいかないのは分かってるけど.....それでも.....この影から抜け出したい。〉
帝都の英雄としての意地.....使者という存在はあまりに大きく英雄という肩書きなど影に隠れてしまった。別に目立ちたいわけでも、見下されたくない訳でもないが.....何かに頼ろうとしているようで.....なんか、嫌なのだ。
フィルスは魔法で手早く見張り二人を眠らせ木陰まで引きずりフィルスとたつは着替える。体型から顔まで似せてそれを維持しながら先程まで見張りが立っていた場所へ向かった。
〈エルロート......味方につけば強く、つかなければ極めて厄介な存在。確かに生かしておくにはメリットもデメリットも目立つ.....だからって.....罪のない青年を殺していいはずなんてないんだ.....!〉
フィルスは心の中でそう呟くと1つ深呼吸をした。これから待ち受ける困難も苦痛も耐える覚悟と.....エルロートは必ず救い出すという決意を胸に秘めて.....
ありがとうございました。
次回は洞穴へ!どんな構造と敵が待ち受けるのか?!お楽しみにっ!




