14話 笑うんじゃない!
よろしくお願いします。
リザードマン討伐隊を見つけ、フィルスはいち早く駆けていった。腰に携えていたミスリルソードを抜き、下段に構えた状態で全力疾走をして一体のリザードマンを気づかれる前に切り伏せた。
「フィルス・クレイアだ!!苦戦の模様......助太刀致す!」
「っ!?た、助かります!!」
〈戦国時代の人みたいで、言ってみたかったんだよねっ!滅茶苦茶スッキリした~......!〉
フィルスは戦国大好きであるため、こんな台詞を言ってみたいと何時も思っていた。その夢が今ここで叶えられて、満足感で一杯なのだ。
「ちょっと!フィルス!!先々、行かないでよね!」
【.........フィルスに何かあったら........大変......】
【もぉ~!あんまり、速すぎるから肩から落ちちゃったじゃないか!】
ノンシーとクロはフィルスを心配してくれているが、サティウスは自分が肩から落ちてしまった事を怒っている。
「......サティウス以外はごめんっ!.........でも、今は一刻も早くこの場を潜り抜けないと!」
「そんなこと分かってるわよ!《ファイアボール》!」
ノンシーは基本、魔法での戦闘を得意とする魔法使いである。魔力はフィルスより下だが、習い事の生徒の中でも2位を争っているほどの魔力量の持ち主。
1位は言うまでもなく、フィルスである。
「いくよ!サティウス!!」
【え~......なんて、言ってられないよね......「混合魔法!《ダイアモンドダスト》!」】
フィルスとサティウスの混合魔法は真っ白な竜巻を発生させ、瞬く間にリザードマンを吹き飛ばしていく。
「すごー!私たちも出来るの?!」
【.......まだ........ノンシーには、加護をつけてないから.......出来ない......】
加護は、小妖精、妖精、精霊のどれかで、お互いがお互いの事を信頼してないと出来ない。
「それは、残念ね.......でも、ゆっくり、仲良くなっていきましょっ!」
【.........うん.....】
ノンシーの微笑みにつられながら、クロも微笑む。フィルスとサティウスはその間もリザードマンの数を減らしていき、半分近くまで追い込んでいった。
「意外と、弱い......?」
【だから、言ったでしょ?......フィルスなら大丈夫だって!】
ほら見ろと言わんばかりに胸を張るサティウス。フィルスは冷たい視線を送りながらもリザードマンの屍を増やしていく。
右上からの袈裟斬りをしゃがんで避けて、左下からの袈裟斬りを.......大上段から来たリザードマンには石玉をぶつけてから首をはねる......全部が全部、習い事の実践などで身に付けた技......貴族街でも指折りの習い事に入っただけはある。
「........見てるだけじゃ、死ぬだけですよ!!あなた達も戦ってください!!」
呆気にとられて、フィルス達の戦闘を見ていた冒険者達に一喝する。それで、冒険者達も我に帰ったようでそれぞれが戦闘を始めた。
【君に力を!!身体強化魔法!《オールアップ》!】
「っ!?.......あ、ありがとう!サティウス!!」
サティウスが唱えた魔法は光魔法のみで使える身体強化魔法の一つで、ステータスに表示される体力、力、魔力、器用、俊敏の全てを一段階強くさせる魔法である。
「土魔法!《ゴーレム召喚》!!」
使ったことのない魔法ではあったのだが、魔力が上がったことにより、少し試してみたい気持ちに駈られて召喚してみたが、あまりにも不格好なのが出来てしまい、ノンシー達は吹き出していた。
「笑うんじゃない!!これでも、精一杯造ったんだぞ!」
「アハハハハハハッ.........はぁ~.....ごめんごめん。」
〈バカにしやがって........見てろよ!!〉
フィルスは顔を恥ずかしさと怒りから真っ赤にさせながら、片手を挙げて降り下ろす。それを合図に動き出した、体長4メートル程のゴーレムは右拳を空高く振り上げると、勢いよく地面に叩きつける。
その勢いは凄まじく、衝撃で何メートルか飛ばされる人やリザードマンがいた.......その中に、命令した張本人のフィルスが居たことに後で再びノンシー達に笑われたのは内緒である。
「一気に片付けるよ!!」
【【「うん!」】】
このあともフィルス達の猛攻撃にリザードマン達は一人残らず討伐されて、あっという間に決着はついた。
ありがとうございました。