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130話 母親に代わって

 よろしくお願いします。

 「私でよければ水の魔力を取り入れますよ.....?」

 「っ!?あ、貴女は......!で、でもまだ安静にしていないと.......!」


 右足を引きずりながら歩み寄ってきた女性に安静にするよう呼び掛けるノンシー。だが、女性は歩みを止めず凍えるフィルスの側まで来ると力尽きたようにその場に座り込み、息を切らしながらもノンシーを見やり口を開く。


 「私を......息子を.....救ってくれました.....そんな人が私たちのせいで傷ついている.....見過ごせませんし、私で役に立てるならなんだってします!」

 「.......でも、その火傷で.....」


 得意属性とは幼い頃からあるもので、それは勝手に身体に馴染んで私生活に支障を来さないように調整してくれる。だが、大きな怪我等をすると魔力というものはそれに反応し体内から治そうと身体中を駆けずり回るがそれを外へ出そうとするとそれを拒否して魔力が抵抗を起こしたりしてしまう危険性もある。

 この女性も例外ではない......たとえ治癒していたとしても完治したわけではないし、これは免疫力で徐々に治ってもらうしかないし、それでも皮膚が完全に元通りに戻ることはないだろう.....それも魔力が慣れてくれればどうと言うことはないのだが、今は治療したばかり.....無闇に魔力を放出するのは良くないことだ.......


 「分かるでしょ?......いいえ、貴女が一番知ってるはずよ。魔力がいつもより加速的に体内を廻っているのを.....それは貴女を必死で治そうと魔力が働いているの.....それを外へ放出しようとすれば必ず抵抗を起こすわ.....そしたら、下手すると死ぬわよ?貴女.......」

 「......そんなこと......知ってます.....私も教会で治癒術師として働いていた身です......」

 「だったら.....「だからこそ!.......だからこそいつまでも人を助ける人間でありたいのです.....」......」


 これは治癒術師としてのプライドとも言えるだろう。本来人の怪我を見て治してあげる立場である治癒術師が助けられ、そして助けてくれた人が死にかけている......今まで人のために働いてきたのに、自分のために働いてくれた人を見殺しにはできない.....彼女の目がそう語っていた......

 ノンシーはその目を見てもなお首を大きく横に振った......こちらは.....フィルスの譲れない意思を知っているから......


 「.......この男の名前はフィルス・クレイア......帝国では英雄と名高い男よ。そんなこの人はお人好しなの.....恐らく、貴女が水の魔力を出してこの人を救い、そして貴女が死んだところでこの人は悲しむだけだわ......貴女は助けてくれた人を悲しませたいのかしら?」

 「っ!?そ、そういえ訳では......「なら貴女から水の魔力を取り入れさせるのは無理だわ。」......お役に立てずすみません......」


 沈み込んでしまった女性を慰めることなく周りを見渡す。だが皆が残念そうな表情を浮かべているところを見ると、この町の者達に水属性持ちは少ないのだろう。

 ノンシーが困っていると沈んだ女性の前に少年が仁王立ちをしてノンシーを見る。


 「母ちゃんは役に立ってなくなんかない!毎日人のためにって教会に行ってどんな怪我でも治療してたんだ!でも......でも、今は体調が悪いだけ!いつもの母ちゃんならすぐにそんな怪我治しちゃうもん!」

 「.......でも、そのお母さんが今は何もできないの.....それは役に立たないと同じじゃない?」

 【ちょ!ノンシー!言い過ぎだよ!】

 【......ノンシー.....怒ってる.....】


 確かにクロの言うとおりノンシーは焦りからか苛立っている。そのせいか口調も目付きもきついものとなり少年を睨み付けている。少年はそれに怯むことなく親指を自分に向けて口角を上げ、口を開く。


 「そんな怪我、母ちゃんに代わって僕が治してやる!魔法は母ちゃんの真似して使ってたから調整もまぁまぁ出来るし、なんたって母ちゃんの息子!治せない怪我なんてないんだ!」

 「.......フフッ.....ウフフフフフッ.......」

 「な、何が可笑しい!ホントに治せるんだからな!」


 ノンシーの笑い声をバカにされたと受け取ったようで顔を赤くして怒りながら治せるんだと言い張ってくる。ノンシーはその主張にまた笑い声をあげるが、再び少年が怒鳴ろうとした瞬間には笑うのをやめており、真っ直ぐと少年を見て口を開く。


 「......分かった.....そこまで言うなら貴方に託すわ......今はそれしか方法がないし、このままではどちらにしろフィルスは死んじゃう.....頼んだわよ.....」

 「っ!?......ま、任せとけ!」


 今、頼れるのは少年だけだ.....綺麗な瞳で真っ直ぐ見つめられながら頼まれた少年は少し照れ臭そうな表情を浮かべてから親指を立てて自信に満ちた声をあげる。そこで驚くべき才能を開花させるなど今は誰も知らないのであった.....

 ありがとうございました。

 明日の投稿はお休みさせていただきますm(__)m

 さて!次回、少年はどんな才能を開花させるのか!?お楽しみにっ!

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