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100話 溝

 よろしくお願いします。

 「それじゃあ、僕が中央以外の下半分で、ノンシーとラックが上半分と中央。どう攻めるかは任せるよ。」

 【なかなか、ざっくりで決めたね~.....】


 〈そ、そうかな~?.......まぁ、これで大丈夫だと思うし....皆、強いから.......〉


 この時、もう少し算段を立てておけば良かったのかもしれない.......だが、この時は皆の強さに浮かれて、相手の強さが如何程なのかを確かめようともしなかった。


 「よしっ!じゃあ、僕が回り込んでる間に二人で役割とか、攻める場所とか決めておいて!それから、無理はしないでね!」

 「......うん、気を付けてね!」

 「武運を......」


 フィルスは反対側を目指してバレないように駆け出した。ノンシーとラックに無理はしないように告げた。それに頷く二人はフィルスの健闘を祈りながら手を振って役割や攻め場所を決めるため話し合いを始めた。


 「........遠くない?」

 【まぁ、かなり広いからね~......】


 〈まったく.......これ、東京ドーム何個入るんだろ?あんまり、人数が多いと、捕獲が厄介になるよ.......〉


 数分走ってもつかないこの広さにため息を吐くフィルス。すると何処からともなく騒がしげな声が聞こえる。


 「おい!あっちに行ったぞ!」

 「チッ!折角、はぐれてたエルフを見つけたのによ......逃げられたら元も子もねぇじゃねぇか......!」

 

 〈エルフを捕まえた........ま、まさかラックなんじゃ......いや、それはないか......だとしても、放っておけないよね。〉


 フィルスは外壁から道をそれ、声のした方へ走っていく。


 【ま~......たく。お人好しなんだからさ~......】

 「そりゃどうも.......」


 呆れるサティウスに否定はしないフィルス。流石に自分でも自覚はあるし、別に人助けは悪いことじゃない。それで悪口を言われる理由が分からない.......だから、開き直って誉め言葉だと受け取っている。


 「いた......!数人係とは.......卑劣な.....!」

 【フィルス!油断はダメだからね!】

 「僕が、人助けの時に油断なんてしたことある?」

 【ないけど.....念のためだよ!】

 「大丈夫......ばっちし気を引き締めていくから!」


 〈そうだよ.......戦闘において、気は抜かないって決めたんだ......8年前の帝都大襲撃の時から......〉


 あの時、もっともっと強くなっていれば.....もっと全力で戦っていれば.......救えなかった命も救えたんじゃ......ふと今でも思う。あの時もっと速く動けていれば、あの人も.......あの時、魔物をもっと速く片付けていれば、あの人の魔物も請け負えたんじゃ........あの時、もっと速く閻魔の動きを捉えられていたらキーリスは........叶わぬ願いほど人は叶えたくなるし、思い返してしまう......だが、思い返すだけで終わればそこから成長はないし、前と何も変わらない......フィルスはあの時に数々の者を護れず、学んだ......自分には力が全然足りないのだと......

 フィルスは身体強化で動きを速くし、追い詰められたエルフに迫る男の一人を鞘にしまったままの剣で撲り付ける。


 「がはっ!」

 「っ!?だ、誰だ!てめぇ!」

 「........その子、エルフだよね......?何しようとしてたのか何となく分かるけど.......差別なんて古臭いものをこじつけにしてるなら許さないよ?」

 「お、おい........こいつ.....俺、見たことあるぞ......て、帝国で英雄って呼ばれてる男だ.......!」

 「あ?こんなガキんちょが?ガハハハハッ!笑わせんじゃねぇよ!確かに、一人やられたがあれは不意を突かれたからで、こんな大人数に勝てるわけねぇぜ!」


 〈.......負け役の台詞じゃんか......それ.......はぁ~......やだやだ......見た目で判断する大人はよくないね。〉


 そんな見た目で判断する大人達はものの数秒で捩じ伏せられ、近くにあった頑丈そうな蔦で縛り上げておいた。

 改めてエルフを見ると、女性で、最近連れてこられたらしく、体にアザがあるが、服は大してボロくはなく、顔色も酷くはない。


 「........先ずは、ごめんなさい.......こいつらは山賊で僕は冒険者だけど、同じ人間がこんなことをしてしまったこと......どうか許してほしい。」

 「........ねぇ........教えてよ.........なんで、エルフと人間の溝はこんなにも......深くて暗いの.......?」

 「.......《ヒール》......なんでだろうね.......?こんなに近くにいるのに......《ヒール》.....どちらとも、それを気づいてない振りをしてる......橋はかかってるはずなのに.......《ヒール》」


 フィルスにも何とも言えない......エルフの女性が助かってもなお震えながら問いかける言葉はなんとも重く、フィルス一人では担げないものだ。だから、回復魔法をかけ、アザを消してあげながら悲しい瞳をする。


 【......あのさっ......あんま、深く考えなくて良いんじゃない?それはこれからどうにか出来ることだし、今はそれの準備のためにこの山賊の城をぶっ壊すんでしょ~?】

 「ハハッ.....そうだったね。君は一人で皆のもとへ帰れるかい?」

 「......うん、多分......」


 〈た、多分か......それは心配だね......よしっ!〉


 フィルスは少し悩んでからエルフの片手を手に取り風魔法を練る。


 「風よ.....草よ.....この者に隠密の加護を.....《ヴァンサイレント》」

 「........何か変わったの?」

 【.......なかなかの大変化だよ~.....気配はあるけど姿が見えない。】

 「草竜さんの加護だから.......当たり前のように強力だよね。」


 予想以上の効果に苦笑するフィルス。それから見えなくなったエルフがお礼を言って居なくなるのを確認すると再びノンシー達の反対側に向かって走り出した。

 ありがとうございました。

 ひ、100話突破でございます!予定通り、今は紹介文をひたすら書き進めております!そちらの方もお楽しみにっ!

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