10話 行こっか!
よろしくお願いします。
「宿ってどんなのなの?」
「.......さぁ?」
再出発しようとしたのは良いのだが、フィルスもノンシーも貴族生まれの貴族街育ち........宿など見たことも、泊まったこともない。
【そういうのは、町行く人に聞いてみれば良いんじゃな~い.......?】
「それもそうだね........それより、僕の肩の上でだらけるのやめてくれない?」
だらけながらのサティウスの助言にため息を吐きながらもこの意見には賛成なので、先ずは良い宿はないかの聞き込みを始めようと周りを見渡すフィルス。すると、ちょっとした路地道の入り口付近で地面に突っ伏せている少女が目に止まる。
「.........ん?........あの女の子、大丈夫かな?」
「........あぁ、確かに........あんな路地道で寝そべって.........何かあったのかしらね?」
【おっ!再び人助け?........良いね、良いね~!はりきって行こうっ!】
〈何をどうはりきるのかは分からないけど.......あの子の様子........なんか可笑しいぞ........〉
胸のざわめきを感じながら誰一人として助けない女の子の元へと駆け寄る。
茶色の髪は洗ってないからか縮れていて肩まであるであろう髪の長さは少し肩の上ほどまでになっていた。
「どうしたんだい?大丈夫か?」
「うぅあぁああぁ........パパとママが.......居ないの......」
「御父様と御母様が居ないのね?......どうして.....?」
フィルスが肩を叩きながら女の子に呼び掛けるとボロボロになった服と顔を上げてフィルスを見る。長時間泣いていたようで、声は渇れ、目は赤くなっていた。ノンシーの問いかけには首を大きく横に振っている。恐らくは分からないということだろう。
「..........お家はどこ?もう少しで、日が暮れるよ?.....一回家に帰ってみれば?」
「.......うん........お兄ちゃん達も........一緒に来てくれる?」
「えぇーーー!「うん、勿論良いよ。」.....はぁ~.....」
嫌な顔全開で拒否しようとしたノンシーだが、その言葉を遮ってフィルスが了承の言葉を口にする。ノンシーは仕方なくついていくことにするが、盛大なため息を漏らす。
「ねぇねぇ!なんでついていくのよ?!」
「一度関わったら最後まで付き合わないと後味悪いし、この子一人で帰させても、親が居るかも分からないからね......」
女の子には聞こえない声で会話をする二人。女の子の家は町の離れにあるらしく、歩いて小一時間はかかった。
家は以外と大きいが、貴族のフィルス達にしてみれば、馬小屋か物置小屋程の大きさに見える。
「.......灯りがついてない........」
「.......灯り?」
女の子曰く、夜になれば必ず親が玄関と室内の灯りをつけるらしいが、今はどちらともついておらず、沈みかける夕日が不気味に照らし出すだけであった。
「........一応、中へ入ってみよう?つけ忘れてるだけかも知れないし......」
〈そんなことは絶対にない.......分かってるけど......〉
フィルスは下唇を噛みながら心の中でそう呟く。女の子の気持ちを考えると、少しでも事実から目を背けていたかった。
家は薄暗く、鍵はかかっておらず扉を軋ませながらゆっくりと中へ入る。ノンシーは得意属性に炎があるので机の上に置かれていた蝋燭に火を灯す。
「........やっぱり.......」
「......ん?机の上に羊皮紙が置いてあるよ?」
ララへ
お母さん達は少しの間、冒険者ギルドのクエストを遂行するため旅に出ます。
長旅になると思うのでご飯はしっかり、用意してあるからそれをお食べ。
お母さん達は人の為になる事をしてきます。だから、ララも人のための努力を惜しまないでね。
必ず帰ってきます。
母より
「クエスト..........っ!?ま、まさか........!」
フィルスは何かを思い出したのか顔を真っ青にする。この世界にも新聞というものはあって、それで冒険者ギルド史上もっとも危険なクエストとして発行されていたクエストがあった........日付は今日........内容は、帝国近くに棲みかをつくるリザードマン約1000体討伐。
だが、そのかわり大勢で戦うのだが、リザードマンはドラゴン種では最弱の竜種でしかも飛べない。しかし、それでも中級冒険者で勝てるか勝てないか程の剣術の持ち主だと聞く。
勿論、それ以外のクエストに出掛けたとも考えられるが、日にちが重なりすぎているため、これしか考えられない。
「.......私も今朝の新聞で見たわ........だとすれば......」
「ど、どうしたの?パパとママ.......何処に行っちゃったの?!」
「.............なんでもないよ!必ず帰ってくるって、手紙で書いてあったから大丈夫だよっ!ねっ?」
「う、うん.....そうそう!大丈夫よ!直ぐに帰ってくるわ。」
〈苦しいな.........嘘をつくのって.......本当はまったく分からない.........この子の両親の強さも、本当にリザードマン討伐に行ったのかも、帰ってくるかも......〉
胸が締め付けられるのを感じながら必死で作った笑顔で誤魔化す。
【よーーーしっ!じゃあ、出発だねっ!】
「.........え?ど、何処に.......?」
【決まってるじゃんか~........この子の両親を助けにだよ!】
「知ってる?!リザードマンって中級冒険者で倒せるか倒せないかの実力を持ってるんだよ?!僕、まだ、子供、OK?」
最後は日本語を外国人に教えるような感じでサティウスに話しかける。だが、この世界はOK等は使われておらずサティウスは首を傾げるがめんどくさくなったのか首を縦に振りながら【おーけー、おーけー!】と言っていた。
【よしっ!と言うことで改めて行こう!】
「全然分かってないよね?!」
【大丈夫、大丈夫........君は中級冒険者にも引けを取らない実力があるんだからっ!】
「井の中の蛙大海を知らずって言葉知ってる?」
【僕は精霊王ですっ!蛙なんかと一緒にしないで!】
〈そういう意味じゃ無いんだけどな.........でも........困ってる人の為に死ぬのなら......文句はないか......〉
「........はぁ~........じゃあ、行こっか!」
ありがとうございました。
もう投稿してから10日経ちました・・・・・・・・まだまだ未熟者ですが、頑張って毎日投稿していきたいと思っております!