1話 困ります
よろしくお願いします。
〈僕は....死んでしまった。自分で言うのも可笑しいけど、良い死に方だったと思うよ。人を助けて死ぬんだよ?これって凄く良いことじゃんか!嬉しいよ....僕が死ぬことで、誰かが救われるなら....僕は幸せだ。だが、嬉しくない事も1つだけある....〉
〈.....ここ....何処だ?......確か、僕は強盗の男にナイフで刺されて......え?し、知らない天井だ......って!言ってる場合か!?〉
直人は何故か目を覚ました。先程は激痛で苦しかった体は楽になり、今はどこも痛くない。だが、何故か体は重りでも着けているかのように重くて動かしにくい。
それに、見たことがない天井にはシャンデリアがぶら下がっており、寝転がっているベッドもふかふか。
〈助けた女性が救急車でも呼んでくれたのかな......それにしても豪華だ.....じゃあ、生まれ変わった.....?いやいや、そんな非現実的な事が起こるはずがない.....じゃあ、なんだろ?〉
訳が分からず首を傾げていると扉が開く音が聞こえてくる。すると、こちらへ近づいてきて直人の顔を覗き込む、外国人のような顔立ちの美人な女性が直人を見て微笑んでいる。
〈良かった!人が来てくれた.....この状況を聞き出さないと.......〉
「あ、あうーーーー、あう、あ?」
〈.....あれ?い、今の言葉って.....僕の口から出た?.....っ!?め、めっちゃ恥ずかしいんだけど!?女性の目の前で、赤ん坊みたいな声出して......って、この人誰?〉
直人は色々、疑問に思うことがありすぎて頭がこんがらがりそうになる。すると、女性が直人を抱き上げて.....え?
「はいはい、ご飯でちゅね~~.....ちょっと待ってね~....」
〈え?ぼ、僕、腹へったなんて言っただろうか.......って!なんで人前で胸なんかさらけ出してんだ?!お、可笑しい、何もかもが可笑しい.....〉
しばらくすると、直人はぐったりとしてベッドに横たわっていた。
『し、しんど.....地獄だったな......いや、天国か.....天国みたいな地獄?.....って!僕は何言ってんだ!』
直人は泣きそうになりながら色々と頭を働かせると、睡魔が襲ってきたので、目を瞑ると眠ってしまった......
【やぁ、僕は君の妖精だよ~】
『......は?何言ってるんですか?妖精なんてこの世界にはいません。』
急に目の前に現れたプカプカ浮かぶ妖精と名乗る少年を冷たい目で見ながら、否定の言葉を述べる。すると、妖精はクスクス笑いながら直人の周りを回って真っ正面で止まり、口を開く。
【じゃあ、ここが何処か分かる?】
『......病院?日本の.....』
すると、妖精はチッチッチと人差し指を左右に揺らす。子憎たらしい程に可愛らしい少年は羽も生やさずに飛んでいる。それもあって、直人は信じることが出来ないのだ。
【君は、前世で英雄として死んだんだよね!!だからこの世界も救ってほしいんだ!!】
『.......困ります。』
ありがとうございました。