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王の素質

「こんにちは」

「!!??」

男はこちらを見てビクビクしている。

いきなり知らないところに来たと思ったら、知らない男に顔を覗き込まれたのだ。

それは、驚くだろう。


「ああ、何が何だかわかっていないといった感じですね」

男はこくんと頷いた。


「今回あなたにお越しいただいた理由は私たちの王、つまりは国王になってほしいんですよ」

それを聞いた男はすごい勢いで首を振った。


「あなたにはこの国の王の素質があるのです」

「そ、そんなもの……ない」

男はこの場に来てからやっと口を開いた。


「いえ、私にはわかるのです。あなたには十分、王の素質があるのですよ」

「だけど……」

「あなたは驚くべき程にコミュ障だ!」

「!!??」

「ああ、その反応。いいですね」

「私はコミュ障の方にこそ王の素質を感じるのです」

「え?」

「王になっていただけますね?」

「……」

「なっていただけますね?」


男は頷いた。

押しに弱いところなんて……。

今までの王以上にいい魔王になるかもしれない。

もともと私たちの国も他国と同じように王家の血を引くものを代々王としてきた。

だがそれらの王は皆、傲慢だった。


国民を無理に働かせたり、むやみに殺してしまったり。

一切他の者たちのことなんて考えなかった。

国民の声など聞こうともしなかった。



だから、私たちは変えることにした。

王となるべきものの選考方法を。


思いやりのある者。

会議の結果、これが一番大事だと思う。


ということで私たちは思いやりのある者たちを探したが、この国にはそんなものはいなかった。

自分の利益を得るためなら、理性が飛んでしまうやつらばかりなのだ。


だから、他の世界から連れてくることにした。


初めは優しくてコミュニケーション能力が高いものを選んでいた。

だがそれは失敗だった。

コミュニケーション能力が高いということはいろんな人と仲良くなりやすい。

つまり他国の者たちと仲良くしてしまったのだ。

そして、他国へ行ってしまった。


初めの者だけだと思い、その後何人も他の世界から連れてきたが結果は同じ。


諦めて俺たちはコミュニケーション能力が高くないものを選ぶことにした。

これが予想以上によかった。


私たちを理解してくれるまで時間はかかるものの、仲間と認識してくれればとても親切だし、会話も弾む。

なにより、仲間限定ではあるが他者への思いやりがある。

これこそが私たちが求めていた王。


王が亡くなる度に私たちは新しい王を連れてきた。

コミュニケーション能力が高くないものを。

そして気付いた。

コミュニケーション能力が低いものほど、われらに優しかった。



そして、私たちはある結論に至った。

いい王の素質を持ったものはコミュ障であると。


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