勇者様(笑)は一体何の限界に挑戦しているのか。
「はい、勇者様、あーん」
「あーん」
もう何度目かというこの光景にも慣れた自分達が怖いと、神官さんと二人で慰めあう日々。
サキュバスは二人まとめて吹き飛ばしたはずなのにね。なんだろう。
何故か、勇者様といちゃいちゃラブラブしていたはずのミーが戻ってこず、ムーがミーシャ、ミーと入れ替わり、勇者様あーんをやっている。これは何か。マトリョーシカ的なあれなのか。
パーティを抜けそびれた私と神官さんは、城への報告の書状を送り、ついでに勇者様(笑)の現状と、賢者様の訃報と、もろもろの報告を全て終わらせて、結局、魔王の城?らしき豪華な城で城からの返事を待っているわけなんですが。
剣士は脳筋らしく、連絡の書状は一枚も書けなかったので、丁重にお断りした結果、腕立て伏せと走りこみしかしてない!
が、勇者はそれ以下。
マトリョーシカあーんを繰り広げていた。
何故、大人しく待てないんだ。
そしてミーはどこいった。
ムーは何故戻ってきた!
そして何より、まだ離婚成立していない以上、既婚者で子持ちの勇者様のどこにそんな魅力が!まして、サキュバス内で密かに騙しあって取り合うほどの!
一応、親切心という名の、やけっぱちの気持ちで勇者様結婚してて、娘もいるからね!娘は溺愛してるよ!(多分、もう会えないけど!)と、どんな効果があるのやらと思いつつ、暇なので申告はしてみたものの、ムーの反応は、
「そうですかー。私別に勇者様と付き合ってるわけじゃないですしー。ミーの彼氏だし。既婚者でも別に。」
みたいな謎の反応だった。
「でもカッコいいですよねっ!」
とかもう意味が分からないよ。
サキュバスわかんない。理解できない。
ミーの彼氏なのに日常の「はい、あーん」は別なの?!別枠なの?!何枠なのさっ?!
恋愛偏差値の低い私と神官さんは、もう本当に呆然と空を見上げて、若いって難しいねって呟くことしか出来ない日々が続いた。
ある日。
やっと、王様から返信が届いたんだ。
まぁ、魔法でのやり取りではなく、何故か、決まりとしての鳩便なので、数日掛かったんだけど。
その間、いちゃいちゃしていたムーと勇者様は何故か、日当たりのいい中庭で、脳筋剣士さん相手に、
「俺、こんな立派な城の主で」
お前の城じゃないし。
「可愛くて身分もある嫁と娘が居て」
城に戻ったら、どころか今すぐ棄てられそうな立場だけどな。
「かわいい彼女も二人も居て」
二人とも魔物だけどな。
「稼ぎも勇者という能力もあって、人生勝ち組だよなぁ!」
?!勝ち組?!片腹痛いわ!!
と、心の中の突っ込みが追いつかない自慢大会とか繰り広げてたけど。
私と神官さんの虚しい時間。乙。
神官さんの私に対する生温かい視線が身に沁みる。
うん。全力で突っ込みたいんだけど、私のスキルでは手に負えないよ!
二人で日向ぼっこという名の現実逃避をしながらも、魔力の鍛錬として花を育てては燃やし、再生し、と視線を決して奴等の方に向けないようにしていた私達は悪くないと思う!
むしろ、頑張ったよ!その場に居れないと思うくらいの状況を耐えたんだから!
噴き出して笑死しさないで乗り切ったんだから!
あれ?もしかしてあれって私達の理性や気合を試されていた?!
それとも、新しい暗殺技?!
いやー。無知とアホって怖いね。
確実に、その勝ち組人生の半分以上の要素が今まさに王城で議論にあがってるのを察知も気付きもしないんだろうか。
あ、私達に対する盲目的な信頼?
いらんから。
それとも彼女?が二人いるから勝ち組なのかな。
そして、この城は魔王のもんだと思うんだけど。平和すぎてぼけてるのかな。
とりあえず、王様からやっと、やっと届いたこの手紙読んで、心から自分の「勝ち組」人生を反省したらいい!!
はげろーーーーーーーーー!
もげろっ!!
まぁ少なくとも、離婚は硬いだろうねぇ。
真面目に勇者やってきた歴代の英雄達に、本当に恥じ入ることしか出来ない結果しか残してないからねぇ。
さあ、手紙が見物だ!
わくわくしちゃった私は、形式上だけでも、ちゃんとまだ勇者様(笑)パーティのメンバーなのでしょうか。




