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日本サーバーの終焉

「だ、大丈夫?」

 憔悴しきった様子のルカに声をかける。

「ん、あなタカぁぁ……」

 顔を上げた拍子にバランスが崩れ、腐った樽の耐久値がなくなり壊れてしまう。ルカはそのままべちゃっという音と共に、地面へと張り付いた。

「ちょっ、ホント、大丈夫なの!?」

「うむ、ちょっと自分の無力さの打ちひしがれていたので、色々と鈍くなっているから大丈夫だ」

 色々とだいじょばない返答だ。

「とりあえず座って、コレ飲んで」

 十歳前後の体型のルカを抱えて座らせると、セイラの畑で採れたリンゴから作ったジュースを渡す。

 両手でコップを握り、コクコクと飲み干すのを待った。

「ふむ、旨いな。自家製か」

「そんなの分かるの?」

「味にムラがある。均一な工場品ではない感触だな。果物からして既製品とも違う上物」

 そう語るルカには、いつものふてぶてしさというか、思慮深さが戻りつつあった。


「昨日まで色々と活動してみたのだが、やはり個人は小さいものだね」

「日本サーバーが開いたのにいないって聞いて、体調でも崩したのかと思ったよ」

「例の暴力表現規制法案の危険性を広めようとしてたんだけど、ALFをはじめ他のゲームもサービス開始で祭騒ぎでね。思った以上に話が広げられなかった」

「規制法案って、今回のサーバー閉鎖はCEROの倫理審査じゃなかったの?」

「それに関してはそうね。ただあの法案自体は、この先に不安を巻くものだった。昨日の大敗で法案提出はほぼ決まり。今まで民間組織で審査されてたものに、国が関与することになるわ」

「それってどういう……」

「違反がみられたら行政指導などで管理、閉鎖される可能性はあるわね」

「そんな事あるの?」

「すぐにどうこうって事はないでしょうけど、今まで以上に自粛ムードは高まるでしょうね……」



 ルカの危惧から気になり、ニュースを見ていると民心党から早速『暴力表現規制法案』が提出された。

 ゲームが人間、特に未成年に与える影響への配慮から、行き過ぎた表現を規制する事が書かれている。

 その中に「規制の緩い海外へのアクセスを制限する」というものがあった。

 国内の倫理と海外の倫理を照らし合わせて、緩い国へと移動されると規制の意味がないということだ。

 つまりALFでいうなら、今回の倫理処理を入れたのは国内サーバーのみで、海外サーバーに行けば規制から外れてしまう。そうすると今回のような事件がまた起こるという論旨だ。

 ならばそれを封じるべく、海外サーバーと国内サーバーを完全に分断。行き来を不可とするというもの。


 これに対して、ALF運営は広い連携に支障が出るとして、日本サーバーの閉鎖を通達する運びとなった。

 半ば日本政府に対する抗議の意味もあったのだろう。

 約半年の間、海外サーバーへのキャラクター移転に応じ、それ以降は運営によるサービスはアメリカ本社が行う事になる。

 当然、プレイ料金の支払いや海外サーバーとの併合により様々な問題が予想された。

 先は無いと宣告されたゲームから、リアル店舗の出張店舗は軒並みサービスを終了。日本の個性だった味覚やアキバ文化の展開がなくなった。

 海外から訪れるプレイヤーもいなくなり、国内のプレイヤーも一気に減少していった。


 日本サーバー再開からわずか一ヶ月。あれだけ賑わっていた街は、ゴーストタウンと化していた。

 チェリーブロッサムも面々も、キャラクターは移すものの継続してプレイするかは不明らしい。特に動画の被害者だったホノカちゃんは引退することを告げていた。

「ここまで一気にかわるとはな……私の悪魔憑きでは全く追いつかなかったよ」

「それを言うなら私は全く考えもしなかった。投票すらおざなりで」

 ルカは海外に用意された日本人用サーバーで活動を続けるつもりらしい。

 俺もやり残したことは多々あるので続けるつもりではあるが、プレイ料金の支払いが海外決済のクレジットカードに限定されて、どうやって支払うかを検討中。

 セイラやシゲムネも同様の問題に行き当たっていた。


「なんでこんな、勝手に、大人の都合で決められてしまうんですかね」

「それは有権者が少ない……いや、国政に興味のない若者が多いからだろう。今の生活がどうやって成り立っているかを考えない。ただ与えられているものを享受しているだけ。戦後、自らの手で切り開いてきた人達とは、心構えが違うんだろう」

「でも少子化で有権者自体が少ないから仕方ないじゃないですか」

「本当にそうか? 高齢者の中にも若者の事を考えてくれる人はいるのに、全てを丸投げにして投票に行かなかったら、助けようと言う人も去っていくだろう? 投票数ではなく、投票率が低いのが問題なんだよ」

 わからない。どうしたら、一方的な不条理に晒される現状を回避できるんだろうか。

「まずは考える事だろうな。なんでそんなに自分達を支えるものに興味を持てないか。他人の思惑で踊らされて甘受し続けるのか」

 ルカ自身、投票を呼びかけて失敗している。人の影響を与えられる範囲なんて狭い。

 だからといって諦めるのか、自分なりの方法を模索するのか。


 人のいなくなった街。

 わずかな変化でこうなってしまう。

 あれだけ楽しかった日々、これからの楽しみ、喜び、それらは失われたのか。

 しかし、世界は続いている。

 まずは考えてみよう。錬金術を工夫して伸ばしたように。自分達が楽しい世界を守るために。

ひとまずこれで終わりにします。

急な展開にしましたが、その方がインパクトがあるかなと判断しました。

これから楽しくなるだろうなと期待してくださってた方は、少し政治の仕組みに興味を持っていただければと思います。


無関心でいると、どこで自分にしわ寄せがくるか分かりません。

逆に声を出して行動すれば、何かを変えれるかもしれません。

政治の話をどこかタブーとしがちな空気。

政治家を批難したところで、それを選んでいる人間が変わらなければ変えられない。

少しでも考える切っ掛けにしていただければと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 終わり方。十分に印象に残る。 [一言] 読了。面白い。 d(^-^)
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