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精霊召喚の検証実験

 高濃度のアルコールから呼び出した精霊は、酔ってはいるようだが、命令はちゃんと聞いてくれた。

 そのまま始まったウォッカ対テキーラの高濃度アルコール対決は、かなり盛り上がっていた。実力が均衡していたのもあるが、何やら酔拳のアルゴリズムを組み込まれていたらしい。

 流れるようなとらえどころのない動きで、互いに攻守入り乱れての戦いは、カンフー映画のような面白さがあった。

 その裏で俺は錬金術で『蒸留水』を錬成。それを使ってカレンさんに召喚してもらう。

 透明度の極めて高い精霊は、アルコール精霊に混ざってファイトを繰り広げ、遜色ない動きを見せてくれた。


「ただ純水は素のスペックだけでしたね。アルコールの方は毒の消毒や可燃性という副次効果がありました」

 アルコールは燃える。もちろん火をつけると徐々に小さくなっていき体力を減らしていくが、攻撃力は大幅に上がっていた。

 いっさんもそうだが、可燃性の素材は流れの中で別の攻撃手段となるようだ。

 他にも手持ちの硫酸なんかを試してみたが召喚はできなかった。これは水に硫化水素が入った水溶液扱いだからかもしれない。

「純粋な液体からの召喚じゃないと駄目かな」

「水にアルコール以外で液体ってなると何があるんだ?」

 シゲムネやカレンさんと首をひねる。常温で液体となると思いつかないものだ。

「ネットで検索してみるしかないかなぁ」

「そうね……宿題にしておきましょう」


「じゃあ、次は炎だ。炎も目ぼしい成果が出ていない」

 紅蓮を名乗るグレイコフ大佐が、炎の精霊について聞いてきた。

「私も炎の精霊召喚は使えないのであんまり研究はしてなくて……」

「しかし、先ほど熱量がどうとか言ってなかったか?」

 シゲムネに突っ込まれる。

「可能性としてはそれもあるかなって」

「熱量……以前、キャンプファイヤーを盛大に起こしながら召喚を試した事もあるが、変化はなかったのだ」

 炎召喚は松明などの火から生み出す事が多いので、確かにキャンプファイヤーなら大きさは申し分ない。

「となると後は温度でしょうね」

「温度?」

「はい、炎にも質があって、環境を整えたり、燃やす素材によって温度が上がります」

「なるほど、それなら鍛冶師の出番か」

 スレイは近くの知り合いに声をかけた。無名の勇者の鍛冶師がハウスにいないか確認に行ってもらう。

「鍛冶師とは?」

「金属を溶かすには高温が必要です。鍛冶師なら火力を上げるためのフイゴなどに詳しいだろう」

 スレイの説明に、グレイコフ大佐も頷いた。

「そういうことか。ならば我の炎魔法の方がふさわしくないか?」

 紅蓮を名乗るグレイコフ大佐、炎の属性に特化した装備を揃えていて火力には自信があるとのこと。

「魔法を使った炎なんかは、召喚の素地にならないと思います」

 魔力同士が干渉するのか、召喚に失敗するらしい。グレイコフ大佐は残念そうに肩を落としていた。


「儂に用か、スレイ」

 現れたのはいかにも鍛冶師といった感じのドワーフ。白い髪に白いヒゲ、それぞれに編み込んで手入れされているのがキュート。

「炉の炎を借りたいんだ」

「ふん、また変な魔法の研究か」

 気難しいドワーフを演じる男だったが、所持袋から簡易の鍛冶炉を取り出した。

 本来は刃を研ぐ程度にしか使われないが、金属を溶かす炉としても使うことはできた。

 鉱山でとれた鉱石をその場でインゴットにすることで、運べる量を増やすのにも使われる。

 長方形の簡易フイゴで炭をベースにした炉へと空気を送り込むと、炭が赤熱して温度を上げていった。

 本来ならそこに刀身を入れて熱した後、叩き直すことで歪みを直したり細かな傷を直したりする。

 今回は一定の温度を確保したところで離れてもらい、そこから召喚を行ってもらう。


 グレイコフ大佐により呼び出された精霊は、赤より少し白っぽくなった炎の精霊。

 思ってたより変化は少ない。

「誰か相手を作ってくれ」

 その声と共にスレイが精霊を呼び出した。術者の力量からするとほぼ互角。あとは素体の強さで差が出るはずだが……。

 火花飛び散る殴り合いの末、グレイコフ大佐の精霊が勝利。ただ突き抜けるような強さは感じなかった。

「多少強くはなっているが、炉を使う手間を超えるものではないな」

 グレイコフ大佐は肩を落とす。


「でも方向性は見えました。松明よりも炉の高温で強くなるなら、もっと温度さえ上げれば……」

「その温度が難しいのではないか?」

「今の私達に知識は無くても、調べれば見つかるかと」

「ふむ」

 グレイコフ大佐の顔には、勉強は嫌だと浮かんでいた。


「光ならもっと楽なんでしょうけど」

「ほう、それはどういうことですか?」

 スレイが食いついてきた。

「光を集める方法は、小学校でも習うじゃないですか」

「んん……あ、虫眼鏡か」

 普段は行って以上の明るささえあれば呼び出せる光の精霊。それを太陽光を集めた中で呼び出せば、より強い精霊になりそうだ。

「しかしレンズってあったかな?」

「望遠鏡などはあったと思うけど」

 再びオークションを見に行こうとする人を引き止める。

「光を集めるのは、まだ他にも方法があります」

 そういいながら所持袋から30cm四方の板を取り出した。

「鏡か」

 十枚ほどあったそれらを半円状に並べ、反射した太陽光を一点に集めていく。


「では誰か召喚を」

 その声に一人の魔術師が、光の精霊の召喚を行い始めた。しかし、精霊が現れ始めた途端に悲鳴が上がった。

「目がぁ、目がぁぁあ」

「痛い、痛いよ!?」

「涙が止まらないっ」

 太陽を直視してはいけない。その十倍の光から生み出された精霊など、直視はおろか瞼を閉じていても光が浸透してきた。

 すぐさま送還して貰っても、皆が視力を取り戻すまでは時間が必要だった。


「すいません、軽率でした」

「いやいや、魔術研究はコレが楽しい」

 久々にやらかしたなぁ。まだチカチカすんぜ。

 周囲は和やかな雰囲気で救われた。

「光精霊は強くしちゃ駄目だな」

「パーティがグラサン持参ならワンチャンあるかも?」

「もう少し鏡を減らせば……」

 失明するかという痛みに襲われたにもかかわらず、すぐに実用化に向けた話し合いが始まっている。

「みんな凄いですね」

「今までも無茶したからなあ。グレイコフ大佐は、油被って火をつけながら魔法を使えば火力が上がる! とかやった事もあるし」

 ゲーム世界とはいえ、無茶しすぎだろう。


「ケイさんは凄いですね、ここまでポンポンとアイデアが出て」

「錬金術をやるのに少し調べてたのが活きただけで、たまたまですよ」

「おっさんにはそれが眩しいのです」

 魔術研究連盟の人々に受け入れられたようだ。確かに錬金術の工夫をしていたのと同じ空気を感じて、ここは居心地が良い気がする。

 色々と実験を交えて過ごしていたら、思ったよりも時間が過ぎていた。

 この連休はほとんどログインしていたので家事も溜まっている。

「また機会があれば参加してください」

「ああ、是非にな。フレアストーンの方もまだ聞いてないし」

「はい、その時はまた寄らせてもらいます」

 楽しい気持ちのまま再開三日目の活動を終えた。

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[一言] 『魔法使い』で『スレイ』かぁ(//∇//)
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