温泉ツアー
あれから五箇所の温泉地を回り、5つの女将の死体を発見。それぞれに怪異な死に様を晒していた。
木に吊るされていたり、まんじゅうを喉に詰まらせていたり、温泉で逆立ちして足だけ出ていたり。
しかし、それらの犯行に一貫性が無く、いきあたりばったり感が募っていった。
「犯人は女将たちとヴァイス、あなた達だ!」
参加者の一人がヴァイスを指さし看破する。ヴァイス老は身を震わせて怒りを見せる。
「バレてしまっては仕方ない。客引きのイベントとしての狂言殺人、今後も続けるためには目撃者に消えてもらうしかないな!」
凶悪なグローブ型の武器を取り出したヴァイス老。更には死体役をつとめた6人の女将達が、ツアー参加者を取り囲み襲いかかる。
更には護衛を務めていたマッチョな冒険者もヴァイス老側に!
緊迫の最終決戦が……。
「接触不可障壁とPK禁止機構のせいで、おじゃんじゃよ」
殴りかかったところで障壁が発動して、触れることがかなわず。
プレイヤー同士で戦うには専用のフィールドに行くか、1対1のデュエルを申し込むしかなくなっている。
「温泉地を移動する際の会話の種となればと思ったんじゃが、どうにも推理モノを考えれる者がおらんでな」
「いつも通りの力技イベントに持ち込むしかなかったが……」
「それもシステム変更で封じられるとは不覚」
女将に女装したガタイの良い男達が肩を落とした。
「いや、楽しかったよ」
「うんうん、本気で考えてたのが、肩透かしくらってがっかりしたよ!」
「温泉地も堪能しましたしな」
鼻の穴を膨らましながら語る冒険者もいる。
実際、画竜点睛を欠いた結果なのかもしれないが、イベントとして最後まで楽しめたのは事実だった。
「今後は今のシステムを加味して、もうちょっと変わった方面を攻めるとするぞい。また参加してくだされ」
ヴァイス老が頭を下げて、最後の温泉地に皆で浸かる。高い山の山頂に湧き出ていた。エメラルドグリーンの湯が美しい。
付近で一番高い山から眺める景色も最高で、今日一番の絶景だった。
温泉もスタッフ含めて50人ほどが入っても余裕があり、広々とお湯に浸かることができる。何度か殺人に関して意見を交わしたこともあり、参加者同士の会話も弾んでいた。
「ケイちゃんはクランに入ってないの!?」
「是非ともウチに!」
「ダメです、入るならチェリーブロッサムですっ」
「そんな、女の子ばかり集まるのは卑怯だ!」
ホノカちゃんと男達が俺を取り合っている!
などとのぼせ上がる事もなく、まったりと温泉を楽しんだ。
「私に声がかからないのはなぜ?」
セイラはぶつぶつと声を漏らしていた。
「それではイベントは以上じゃ。現地解散となるが、ゴミは各自で持ち帰るようにのぅ」
ヴァイス老の言葉を切っ掛けに、俺達も家に帰ることにした。
その際にエメラルドグリーンの湯の花をもらって帰ることにする。岩場の淵に結晶化した成分を集めていく。
「これで家のお風呂も温泉になるといいなぁ」
「そうですね」
ホノカちゃんやセイラも手伝ってくれて、程よい量が溜まったところで転送石を使用。
「それではヴァイスさん。今日はお疲れ様でした」
「うむ、達者でのぅ」
小人族を頭に乗せたヴァイス老は、ほがらかな笑みを浮かべながら見送ってくれた。
殺人トリックを考えようとして挫折。
私に推理モノを書く度量はありませんでした。
もし期待された方がおられましたら、申し訳なかったです。




