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転戦からの攻勢

 3つ目の戦場では、まだしっかりと戦線が維持されていて、前衛の壁が敵を食い止め、後衛の火力で倒していた。

 ただ守りに重きを置いていたので、殲滅速度は遅めなようだ。

 そこへ援軍として俺達が加わると、火力が補填されてより安定して倒せるようになった。

 戦線ができているなら、弾き飛ばしは邪魔になるので上位精霊を呼び直して火力として参戦。

 順調にドレイク狩りを進めていると、その声が響いた。


「すまん、弱点侵攻組。壊滅する……」

 『無名の勇者』クランマスターのアッバスの声が、戦場に響いた。

「やっぱり無理だったか……」

 そう漏らしたのは『無名の勇者』からの助っ人組だった。

 どうやらクランの中でも主力側のタンクを、俺達の助っ人として派遣してくれていたらしい。

「そんな、私達の為に?」

「格好いいトコ見せて、チェリーブロッサムと仲良くなってこいって下心だからなぁ。それで主攻が失敗してたら意味ないぜ」

「いや、そうでもないぞ。おかげで俺達は早めに自由戦力になれて、フォローに回れている。本来なら主攻だけで弱点を攻めるところだけど、ドレイク側の戦力をそっちに回せそうだ」


 シゲムネにより、今後の方針が変更される。

 この戦場を制圧次第、弱点ポイントへと向かうことになった。先ほど助けた戦場のグループにも他の戦場の助っ人に回ってもらっているが、そちらにも伝令を飛ばして共同して弱点を攻めることにする。

「さあ、まずはここを片付けるぞ!」

 シゲムネの檄に、チェリーブロッサムの面々から気炎があがる。特に熟練のタンクがターゲットを固定してくれる事で、全力を出せるソニアさんのラッシュが恐ろしいかった。



「さて弱点攻略についてだが……」

 最初に助けた一団と、その一団が助けた一団。今ここにいた一団を合わせて百人ほどの集団になっていた。

 弱点攻略に向かったのは『無名の勇者』の熟練30人、それが壊滅状態になっている。

「本来なら弱点に攻撃を開始するとドレイクが集まってくるところが、今回は既にドレイクが集まってる中に飛び込まないといけない」

 アースドラゴン討伐の基本は迎撃戦なのだが、今回は襲撃する側。かなり強行突破になるだろう。

「まずはドレイクを押しのけて、弱点ポイントに到達する。上位精霊が6体、連携して道を作ってもらう」

 シゲムネが俺にうなずきかけてくる。事前に打ち合わせていたことだ。

「左右に押しのけ、タンクで道を確保して、攻撃部隊を弱点まで送り届ける」

 弱点を守る甲羅は、物理攻撃が効かないので、魔法を当てていくしかない。攻撃部隊は魔術師で揃える必要があった。

「魔法部隊を中心にタンクで囲って守り抜く」

 作戦としてはシンプルで固まった。


タンク23人

ヒーラー12人

近接要員19人

弓兵12人

魔術師16人


 これに重力操作で生み出した風の上位精霊が6体。

 対するドレイクは……。


「こんなにいるのか」

 茶色の海になっていた。

 数えるのも嫌になる数のトカゲが重なるようにして広がっている。ぱっと見ただけで30匹は軽く超えるだろう。

「更に時間で増えてくるからな。一応、アッバス達を回復できそうなら蘇生していくが、ペナ状態で全力は出せない。弱点を破壊するのが早いか、こちらがやられるのが早いかの勝負だ」


 重力操作から生み出した風の上位精霊が並び、その後ろに術者とタンクが構える。

「ケイちゃんは守りますからっ」

 側にいたホノカちゃんに声を掛けられた。その瞳はやる気に満ちていた。

「うん、お願いね。絶対甲羅壊すから」

 拳を合わせようとして、接触障壁に弾かれた。少し興が覚めるが、気合を入れ直し前を向く。

「作戦開始!」


 上位精霊の風魔法で、ドレイクが宙を舞い、折り重なった巨体をどけながら付き進む。

 召喚術士は二人縦隊で、その左右をタンクが押し広げながら保持。倒すよりも進むことを優先に、左右から攻撃してきそうなドレイクは、タンクの盾や近接のノックバックで押し込みつつ、ヒーラー達が間を進んでいく。

 魔術師は弱点攻略用の魔法を撃つために精神力を温存。ひたすら前を目指して進む。

 皆で協力しながら30mほどを進んで、黒い六角の甲羅へと到達した。

 鈍く光る甲羅はいかにも硬そうだ。


「魔法攻撃を始めます!」

 尻尾を駆け上る時に先導してくれた魔導師が声を張り上げた。召喚術士6人は、防衛拠点を作るためのスペースを確保すべく、ドレイクを弾き飛ばしていく。

 黒い甲羅周辺に、タンクの人垣で壁を作り、内側から後衛職がサポートする形を整えた。

「明らかにドレイクの数がキャパを超えてる。長くは保たないぞ」

「わかった」

 シゲムネに防衛指揮を任せて、俺達も弱点攻略へと取り掛かる。


 黒い甲羅は十人を超える魔術師の攻撃を一斉に浴びていたが、変化は見られなかった。

 上位精霊にも攻撃を指示しつつ、自分も炎魔法を撃ち込んでいく。

 できうる最小の間隔で、魔法を撃ち込んでいくが、全く変化が見られない。その事に焦りを覚えるが、周囲の魔術師もひたすらに魔法をぶつけている。

 精神力を回復するポーションをがぶ飲みしながら、魔法を撃ち込んでいるとようやくピシリと何ががひび割れる音が聞こえた。

「割れた!?」

「ああ、第一段階突破だ。あと五段階だな」

 隣の魔術師が冷静に答えてくれた。あと五倍……俺の精神力は既に2回底をついて、ポーションで誤魔化している状態。残りポーションは5個で明らかに数が足りてない。

 もちろん、上級の魔術師ならもっと精神力も高く魔法も連射できるが、本当に足りるのか……。

「交代で瞑想しながら攻撃を維持するんだ」

 魔術師の初期アクションとして登録されている瞑想は、戦闘状態を解除して座り込む事で、精神力の回復速度を上げることができる。

 回避も行えなくなるので、基本的には戦闘後に行うものだが、それを駆使しないと精神力が足りないのだ。


 ペタンとその場に座り込み、精神力の回復を開始。その間はどうしても周囲の状況を見てしまう。

 一人のタンクが二、三匹のドレイクを受け持ち、戦線を維持している。

 『無名の勇者』の熟練タンクでも二匹が限度だったのを、三匹引き受けている状況は長く保たないだろう。

 攻撃部隊も倒す事よりも、動きを止める攻撃を繰り出すことで、タンクの生存を延ばしているらしい。

 ヒーラーは絶えず回復魔法を唱え、弓兵も矢継ぎ早に射掛けていく。

 焦れる思いで精神力ゲージが溜まるのを待ち、一定量回復したら交代する。


「第三段階突破!」

 その報告が辺りに響く。

 ようやく半分。

 戦線は徐々に下がり、タンクにも欠員が出始めていた。その分、一人に掛かる負担は増えて、戦線の崩壊も見えてくる。

「やっぱり無茶だったかな」

 隣の魔術師はショートカットメニューから、魔法を発動させつつも呟いた。

 そもそもが最初の主攻が失敗した時点で、成功の可能性が減っている。

 無駄に消耗品を使わせた責任は、継戦を訴えたシゲムネに掛かってくるだろうか。その責は俺も一緒に被らないとな。

 ジリ貧の現状にどうしても思考はネガティブになっていった。

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