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偏向放送

 選挙が近づきテレビでは政党ごとの放映時間を均等にしなければならないとかで、かえってテレビでの露出が減っている。

 その代わりに別のニュースにスポットが当てられるのだが、今回はその中に『ゲームが人間に与える影響』『殺人犯の所持していた暴力ゲーム』『戦争ゲームでの兵士育成』などがあった。

 自分が興味があるから目に止まるのだろうが、こうした報道を見ているとゲームに対する風当たりが強くなってる気がしてしまう。


「でもこれって民心党の追い風になる放送じゃないのか」

「放送局って与党が不利になる事をしたがるみたいだからね」

 自分達が世界を動かせると豪語して、○○内閣は俺が解散させたと吹聴するアナウンサーがいたりする。

 実際、連日繰り返し放送されることで、意識してなくても刷り込まれる事はありそうだ。

「実際、ニュースサイトではゲームの規制に関する記事も増えてるしな」

 ネット上の声は、表現の自由を守るべきという擁護派と、凶悪犯罪者を生み出すという反対派が、同じようなやり取りを繰り返している。


「実際のところ、ゲームの年齢制限も守られてない事が多くて、違反したとしても罰則はないからな」

「でもALFなんかのVRゲームは、脳波計測で年齢制限されてるだろ?」

「それも確実ではないみたいだしな。性別を偽れるなら、年齢も偽れる」

「うっ」

 紹司の説明が身につまされる。確かに年齢制限ブロックを解除するツールは出回ってるし、性別をごまかすよりも安価だ。

「民間組織が審査してて、結構ザルな判定らしいし、売る方も特に確認してないみたいだし、形骸化しているのが現状だな」

「そうか……このまま規制強化されるのかな」

「さあな、昔から何度も持ち上がって消えてる話だが、逆に何度も問題視されてるって事でもあるからなぁ」

「でも俺としては、あの動画がバラ撒かれたのが気になるな。内容ばかりが取り上げられて、犯人は探す気もないみたいだし」


『ゲームは犯罪の温床へ』

 報道特番と銘打ってゲームの犯罪への影響を検証する番組が放送された。

 まずは今のゲームがどのように進化しているか。リアルな世界を武器や魔法で戦い、冒険する様子が語られた。

 その上でコメンテーターの解説が付け加える。

『これだけリアルな世界を冒険できる。これはもう現実と大きな違いがないわけです』

 女子アナがそれに凄いですねと相槌をうつ。

『しかし現実と違うのは、戦うことが当たり前の世界。人殺しや強盗、強姦が許される世界なんです』

 そんな訳はない。そうした行為には様々なペナルティが課される。人を殺すと、街中のNPCとは取引できなくなるし、他のプレイヤーからも狙われる。強盗も気づかれると、攻撃されて倒されると自分がアイテムを落とす。強姦に至っては、アカウントから停止させられるのだ。

『本来なら必要のないこれらの事柄がシステムとして用意されてこの動画のような行為が行われています』

 例の強姦を匂わせるシーンがほぼぼかしの入った状態で映される。

『これらの行為に、法的な規制が何もないのが現状です』

『こんなリアルな世界でですか』

『はい、さらには感覚も再現されている。人を殺す感触や、女性を襲う感覚。それらを繰り返して、理性のタガが外れないはずがありません』

 まさに一方的な物言いだ。ゲームでそれらの行いは、やれるのかもしれないがリスクが高すぎる。

 それらの事実は伏せられたままだ。


『こちらに重犯罪を犯したリストがあります』

 十件ほどの殺人や強盗事件のリストが示される。

『これらの事件を起こした犯人の家には、こうした暴力を題材にしたゲームがあったのです』

 正にそれが犯行を促したとでも言いたげな口調だ。しかし、ALFだけでも日本に何万人ものプレイヤーがいる。その中で数人の犯罪者が、全てだとでも印象付けようとしていた。


「何だこの放送」

『こうしたゲームが野放しにされて、犯罪予備軍を育成する状況には危機感を抱きます。早急に法整備が必要でしょう』

『暴力表現規制法案が検討されていますが』

『それらが決定されれば大きな前進になるでしょう。悪しき犯罪者を野放しにすべきではありません』

 最終的にはゲームプレイヤーを犯罪者と呼んで、その放送は終わった。



「酷すぎるだろ……」

 ワンサイドの決めつけられた放送内容に愕然とする。

 何も知らない第三者が見たら、正にゲームが世の犯罪を促進してると映るのではないかと思ってしまう。

 このような放送が認められるのか……放送倫理って何なのだろうか。

 ネットでもゲーム系掲示板では、早速スレッドが立って酷評する流れができている。しかしそれはあくまで『身内』の、ゲームを知っている者の意見に過ぎないのだ。

 知らない第三者、テレビしか見ない世代の印象はそのままだ。

 未だにテレビで放送されることは真実だと思う人も多い。この流れには嫌なモノを感じざるをえなかった。

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