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マーカスとのアクセス

「そうだ、マーカス」

 以前マーカスに聞いたことがあった。元々はコスプレ通販の店で、その出張店舗があの店だとか。

 実物よりも縫製などに時間がかからず、在庫を抱える心配もないので安価に流通できるとかで、試験的に運用しているとか言っていた。

「となると、リアルにも店があるはず……」

 『ALF マーカス コスプレ通販』で検索すると、サイトが引っかかった。

 通販サイトのワンコーナーとして、デジタルアイテム販売が行われていた。

 いくつかのゲームに衣装をだしているようだ。特にALFへの出品が多いようだが、他ゲームへのコンバートも請け負っているらしい。

「思った以上にちゃんとした仕事なのか」

 ゲームの中で服を作るのが仕事と言われて、そんなの成り立つのかと思っていた。

「こんなところにメール送って大丈夫かな」

 サイトの問い合わせページから、メールを送ることはできるが、業務外の連絡など通じるのだろうか。

 しかし、俺達だけでは手詰まりだ。ゲーム内の言動はアレだが、社会人の意見も聞いてみたい。

「送るだけ送ってみるか……」


 反応は思った以上に早かった。

 こちらがメールを送って5分もしない間に、メールに記載した無料通話アプリの方に連絡が入った。

『ケイちゃん、久し振りだぉ。ALFに入れないから電話・メール対応させられて暇だったぉ』

 送られてきた一通目がそんな内容で、仕事大丈夫なのかと心配になった。

「お仕事中にすいません。今回のALF閉鎖に関して、情報を集めています。ただゲーム内での知り合いの多くは、リアルだと連絡が取れないので……」

『そうかそうか、お兄さんに任せておくんだぉ。ただ僕も顧客に何人か知り合いがいる程度だから、あまり期待しないで欲しいけど』

「いえ、無理を言ってるのは承知していますので。あと今回流出した映像に関してなんですが」

 あの騒動の時、シリカ探索に出かけていて詳しく話してなかった、耐性ポーションを使用した強姦事件のあらましを伝えた。

『その映像を政治家が使っているのか?』

「いえ、その確証はないですが、ネットにアップされる前に騒ぎ始めていたので、事前に知っていた可能性はあります」

『流石に許せないな。顧客の中には、女性が多い。その記憶に欠落のある子には、予め伝えた方がいいかな……ショックは避けられないだろうけど、原因がはっきりしてる方がマシかも知れないし』

 確かに判断は難しい。記憶を失っていても、動画に撮られていない可能性もある。無理に傷口を教える必要はないかも知れない。かといって動画が流れてから、実はこうだったと教えたら二重のショックにもなりかねない。

『あとは映像の出処を突き止める方法か。多少は詳しい知り合いもいるから聞いてみるよ』

「すいません、お願いします」

『いや、ケイちゃんこそそんな事件に関わってたなんてね。助けになれなくてゴメン』

 いつものオタク口調も無く、真摯に対応してくれている。

『多少は時間がかかるから、新たに何か分かったら連絡するよ』


 その後、掲示板をたどる作業を行っていると、運営への不満を述べるコメントに、反論している固定ハンドルがいた。

 匿名で書き込める掲示板は、何も名前を書かなければ、固定の名前が付くのだが、大半の人はそれで書き込みを行う。

 それに対して、同一人物を示す為に自分で名前(ハンドル)を入れる人を固定ハンドル、コテハンと呼ぶのだ。

 その固定ハンドル名を見ると『頭が頭痛で痛い』とある。

「これって……」

 どう考えても悪魔少女の書き込みだ。その書き込み内容は、シンプルだ。

『ゲームしたければ、海外サーバーに入ればいいじゃない』



 俺はすぐさまALFへとログインを試みる。するとサーバーがメンテナンス状態のため、接続出来ませんと出てログインできない。

「あれ、どうやって海外サーバーにログインできるんだ?」

 キャラクターの座標は、日本サーバーにあるので、そこへのログインができないので、ALFに入れないのだ。


 ヘッドギアを外して、再び掲示板を閲覧。例のコテハンは、その辺の対処法も記してあった。

 コンフィグメニューを呼び出して、登録サーバーのリセットを行うと基本となる米国サーバーでログインできるらしい。

 再びログインを試み、米国サーバーへと降り立った。


 フレンドリストを見ても誰もオンラインにはなっていない。シゲムネには、メールを送っておいたからそのうち来るかも知れないが。

「どこに行けば……」

 まずは書き込みを行った当人を探してみるのがいいだろう。


 海外サーバーも世界の形自体は変わらない。ただユーザーがカスタマイズできる建物や、運営のイベントなどで違いが出ている。

 日本サーバーの原色系のきらびやかな雰囲気はなく、色々なモノが混じり合ったカオスな雰囲気を感じた。

 もちろん文字のほとんどはアルファベットで、たまに他国の言語も混ざっている。日本語も見かけるが、明らかに間違った使い方のモノもある……『便所食堂』とか入りたくないよな。


 俺が思いつく場所は一つしか無い。スラムと住宅街の境にあった廃教会だ。

 しかし、あそこも悪魔崇拝者(サタニスト)クランが建てたユーザーハウスなので、そこには存在しなかった。

 ただ目的の人物は日本サーバーと違って、ハリウッドの豪邸みたいなユーザーハウスの前の通りで本を読んでいた。

 小柄な黒いローブ姿が、塀の上に腰掛けている。


「最初に辿り着いたのはアナタか」

 俺の接近に気づいて本を閉じた少女は、塀の上から飛び降りてきた。

「ひ、久し振り」

 わずかに2回会っただけの少女だが、ALFの中の知人との再会は思った以上に嬉しくなった。

「掲示板を覗いている人間で、私とアクセスしたがる人間が少ないという事か」

「どうなんだろうね」

 悪魔崇拝者で受付をやってた男は、ルカとはあまり会いたく無さそうだった。実際、心を見透かされるような洞察力は、対面するのに勇気がいる。

「まあ、何にせよ私に会いに来たアナタは、何か話したいことがあるんだろう?」


 俺は自分の知っている事を彼女に伝えた。

 出回り始めた動画と、そこに映っている内容。どうやって撮ったか、犯人はほとんど捕まっていない事実。

 民心党が暴力表現規制法案に乗り出した時期、テレビでALFを取り上げだした時期、動画が出回りだした時期の並び方。

 少女はそれらを聞いた後、何かを呟いてから黙った。

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