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ALFの閉鎖

「なんだこれ……」

 ゲーム内で繰り広げられる無法行為。モラルハザード。乱れた性風紀。

 翌朝のテレビのテロップにデカデカとそんな文字が踊っていた。もちろん直接的な映像は無いが、VRMMOの中で人殺しや強姦行為といったものが無法で行われていると、民心党の議員が声高に叫んでいた。

「このような行為は、ゲームだからと許しておくことは出来ません。即刻に法整備を行って取り締まるべきです!」

 国内で運営される様々なゲームの映像が流れ、その中にはALFも含まれていた。

 公式のホームページには、「事件性の有無も含め精査を行い発表を行います。それまではゲームの運用を休止させて頂きます」というメッセージが出ていた。


「やられたな。あそこまで踏み込んで規制にかけようとしてくるとは」

 大学で紹司が悔しそうに呟いた。

「でも過去にも似たような規制をかけようとした事はあったけど、問題なく終わったんだろう?」

「いやテレビでここまで取り上げられるとかはなかったよ。大抵はネット上で終わってた。しかも……」

 紹司が情報端末で呼び出したのは動画だった。それは色々とぼかし加工されているが、女性が男に襲われているシーンのようだ。

 その身に付けているのは、現実ではコスプレでも見かけないファンタジーな装備だ。

「この装備見覚えがある……」

「まあ、ALFでも汎用的な装備で着てる人が多いからな」

 そうだ、この映像はALFのもの。

「でもこんなの、ハラスメントで一発退場だろ」

「本来ならそうだが、映像でジャッジを受けた形跡はない。同意の上で撮影したか、それとも……」

「あの耐性ポーションの時の!?」

 そういえば俺が襲われそうになった時も、奴らは撮影しようとしていた。自分達で見るためかと思っていたが、ネットに上げられているとは。


「これってあの議員達が?」

「いや流石にそれはないが、匿名で幾つかの動画が上がってる。これはニュースサイトなんかにリンクされてるから、一気に拡散するぞ」

 紹司が軽く検索をかけただけでも、いくつもの情報掲示板がヒットするようになっていた。

 『ALFはエロゲ』『おれも今から犯ってくる』『VRMMO終わったな』などという無責任なスレッドが立ち並んでいる。

 ニュースサイトでも大きく取り上げられ、特に動画の出処がALFと分かったらしく、一斉に批難が行われていた。


 大きくなった流れは、治まる気配がない。過去の事例では一週間ほどですっかり下火になっていたが、今回は野党の民心党が、参議院選挙で目玉の一つに使おうとしている。

 ネット上では毎日のように新たな動画が公開されていた。

「やっぱりかなりの被害があったのか」

「これ……ホノカちゃん!?」

 石井さんがその動画を見つけていた。胸や股間には、ぼかし加工が施されているが、顔に関してはあまり気を使われていない。

 大人にとっては、ゲームで作成したキャラの顔など軽いものと考えられているようだ。しかし、当のプレイヤー達にとっては、自分自身にほかならない。

 被害者は記憶を消されていて、自覚がなかった。それだけにネット動画で自分の姿を見つけ、されたことを知ってしまったら、その衝撃波計り知れない。


 更に今はサーバーが止められ、ログインできなくなっている。本人達を慰める事もできなくなっていた。

 運営にも映像の出処は通報したが、直接の反応は帰ってこない。それを精査する為にも、サーバーを止めて、犯人の痕跡を探っているらしい。

 膨大な情報量を持つALFのサーバーで、特定の犯罪者を見つけられるかは疑問だ。しかしサーバーを稼働させると、その痕跡が上書きされる可能性も出てくる。

 運営会社も慎重な対応を迫られていた。


 直接連絡を取れるのはソニアさんくらいだが、彼女も他のメンバーとリアルでの連絡先は知らないそうだ。

 掲示板ではサーバー停止に対する不満が書き綴られている。

 耐性ポーションを使用した強姦事件があった事を伝えるスレッドを立ててみても、あっさりと流されて消えてしまう。

 運営が悪いという風潮で埋め尽くされていく。



「くそっ、何か変な流れだな」

 紹司はネットの知り合いにも連絡して、今回の件に関して調べていっているが、日にちが過ぎるほどにALFを始めとしたVRMMOを排斥する動きが強まっている。

「どっかがステマに回ってるんじゃないかってのが、俺達の意見なんだが……」

 ステルスマーケティング。メーカー側が直接宣伝するのではなく、タレントなどの第三者が商品などをほめたり、逆にけなして回ったりする手法だ。

 匿名掲示板で陣営に分かれて意見を言い合うところに、火種をばらまく行為なんかも、ステマとされている。

「ステマって……」

「最近は政治家もネットの風潮を操作しようとしてくるみたいだからな。民心党がそうした工作に回ってる可能性はある……が、それを暴くには掲示板の管理者に解析してもらうしか。それも海外サーバーを経由したり、ネカフェ使ったりで足取りを消す手法はあるし、そうなると警察クラスでないとお手上げだな」

 匿名掲示板であるだけに、それを特定するのは難しい。昔はIPアドレスを特定したりして、追跡できるような状況もあったが、情報端末が普及して同じアクセスポイントから書き込みがあったり、移動して別のアクセスポイントになると変わったりするので、現在ではアテにならない。

「じゃあどうすればいいんだ?」

「矛盾や誘導を見つけて、そこをテコにネットの意見をひっくり返すとか……でも、無関係な奴らは面白い方に食いつくからな……」

 紹司も頭を抱える。


 動画のアップ元も調べるにはある程度の権限が必要だ。管理者に情報を開示してもらうには、捜査令状などで正式に依頼が発行されないといけない。

 ネットでサーバーにアクセスして、何でも情報を引き出してしまう都市伝説のようなクラッカーは存在しないのだ。

 犯人側のアカウントは、運営で特定できたかも知れないが、かなり適当な内容でもアカウントは作れてしまう。住所や電話番号から個人を特定させるような奴は少ないだろう。

 犯人のネットワークがゲーム内で組織されていたら、それをリアル側から追跡するのは困難だ。


「くそっ」

 色々と方策を考えてみるか、どれも机上の空論止まり。実現性は見えてこない。

「まだまだALFでやりたいことは多いのに……」

 新たに知った魔法による思考加速。こういう時こそ、その恩恵を受けたいところだが、ゲームは閉鎖されている。

「ルカなら何か思いつくのか? でも連絡手段もないしな」

 ゲームの一プレイヤーでは、やれることなど無いに等しい。

「こんなの選挙の若者と同じだよ。人口が少ないから、投票にいっても意見は通らない」

 石井さんがぼそりと呟く。少数の意見は、黙殺されるのが民主主義か。

 ALFを遊んでいるプレイヤーは、ネットで論議している人数に比べれば、極少数だろう。VRMMO全体に枠を広げても、それはあまり変わらない。

 まともな意見は、一部の思考操作、議論誘導であっさりと封殺されてしまう。

「どうしたらいいんだ……」

さてここからはゲームから離れた話が続きます。

フィクションとして楽しい展開にはできないような……。

漠然とした見えざる力による世論誘導。

そんなものにどうやったら立ち向かえるんでしょうねぇ。

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